2002年4月10日発行169号ピースネットニュースより
【連載】反グローバリゼーションの運動のいま(12)
バルセロナ−モンテレー−ラマラと
「ポルトアレグレ2プロセス」すすむ
ATTAC Japan 事務局 田 中 徹 二
●注目! 14日NHKでATTACが紹介されます
4月より毎月1回(11月まで)日曜日午後9時からのNHKスペシャルで「変革の世紀」という番組が放映されますが、その第1回が4月14日(日)にあります。タイトルは「国家を超える市民パワー
〜国際政治に挑むNGO〜」というもので、内容は「番組では、ヨーロッパを中心に数万人の支持者を抱える国際NGOの活動や、“もうひとつの世界は可能だ”を合い言葉に、世界各国から約6万人の市民が集まったブラジルでのNGOの集会などを取材した」(ウェッブより)というものです。この中でATTAC(フランス)が相当の時間を取って放映されそうです。詳しくは、「変革の世紀」のウェッブ http://www.nhk.or.jp/henkaku/closeup/01/
を開きその中の「国境を超えた市民ネットワーク」をクリックしてください。
ところで、「ブラジルでのNGOの集会」とは、2月上旬ブラジルのポルトアレグレ市で開催された第2回世界社会フォーラム(ポルトアレグレ2)のことですが、確かにこの時NHKが取材に来ていて(ほかに取材は「赤旗」記者だけ)、ATTACの世界総会にも来ていました。実は、この取材チームの責任者だと思いますが、彼からフォーラムに行く前にいろいろ情報を聞きたいという問い合わせがあり事務所(ピースネット)で会う約束をしていたのですが、すっぽかされたという経過がありました。そんな訳もあったのですが、遠いブラジルの地で会ったのですから、「こんにちは」と声をかけたところ、「あんたたちは関係ない」というようなそれはそれは冷たい対応でした。もし「変革の世紀」にあって一方の主役がNGOであるとNHKも認めるのであれば、いくら日本のNGOが弱小であってもがんばっているということを伝えるべきではないでしょうか。このNHK取材班の態度は、日本のことにはまったく無関心で、しっかりしたNGO観を持っていなかったということで、番組の中味が心配になりますが、ともかく見てみたいと思います。
●バルセロナ−モンテレー−ラマラと
「ポルトアレグレ2プロセス」すすむ
3月16日、スペイン・バルセロナにおいてEUのサミットに対するデモが行われましたが、その参加者が主催者側発表で50万人(マスコミは30万人)というきわめて大規模なものであり、昨年7月のジェノバ・サミット対抗デモを超える参加者であったようです。しかも主催者の予想は5万人程度だったといわれ、ヨーロッパ各地のからの集会参加者が相当数国境で止められてしまいましたから(入れたのはフランスからの数百人)、50万人の99%以上がスペインのNGO、労働組合、女性、民族主義者であったようで、この間のデモにつきものの暴力事件もほとんど起きなかったようです(その分マスコミの報道が少なかった?)。
EUサミットの課題は、エネルギー市場の自由化だが、このほかにも貨物輸送における競争促進、労働市場の柔軟化、国連「開発と金融会議」(メキシコ・モンテレーで開催)に対するEUの立場などの問題でした。これに対して、デモ隊は公共サービスの切り捨てや労働条件の引き下げに反対し、社会的権利や環境を尊重し、南の諸国との関係を変えていくことを要求しました。
さて、そのモンテレーで開催された国連「開発と金融会議」(3月18日から22日)ですが、これは今年が92年の地球サミット(国連環境・開発会議)から10年目にあたるということで、この8月に「リオ・プラス・10」が南アフリカ・ヨハネスブルグが開催され、その主要議題である持続可能な開発のための資金をどうするかという会議でした。この結果については、日本のマスコミでも報道されていますが、当初はトービン税や債務帳消のことなども話されていたが、結局のところODA(政府開発援助)の増額などの精神的規定に終わりました。これではほとんど実効性のある資金提供はほぼ絶望といってよいでしょう。こうなるだろうということは、このシリーズの前回で言ったとおりです。
ですが、この会議の開催中にも、メキシコの人々を中心に連日数千人規模のデモがありました。今やかつてのようにNGOなどが自国政府に対してロビーをかけるとか、そういう段階ではないと思います。いかに大衆的な圧力をかけ政治・経済のエリートたち(経済のグローバル化を推進する側)に民衆は黙っていないという怒りの行動をぶつけることが必要です。10年も、20年も前に途上国の貧困は最大の課題とされながら、何の対策も取らずむしろ途上国をいっそう貧困化させてきたのはこれらのエリートたちなのですから。
ここまでバルセロナやモンテレーのことを書いてきたのは、単にこういう行動が世界であったということを述べるためではありません。実は、これらは世界的な民衆の側の統一行動として呼びかけられているものです。世界社会フォーラムにおいて、社会運動グループによる「ポルトアレグレ2:社会運動団体からのよびかけ
―― 新自由主義、戦争、ミリタリズムへの抵抗を:平和と社会的公正のために」という呼びかけが発せられましたが、これらの行動はこの呼びかけにもとづいておこなわれているのです。
http://www.jca.apc.org/attac-jp/japanese/newsletter/wf2/index.html
その呼びかけについての行動をもうひとつ。3月31日パレスチナ・ラマラで、フランス農民連盟のジョゼ・ボベなど欧米の平和活動家50人ほどがイスラエル軍の威嚇射撃を突破してアラファト議長に会見したとマスコミが報道しましたが、その中で活動家が議長に旗を渡す場面がありましたが(テレビや読売新聞)、その旗はブラジルの土地なき農民労働者(MST)の旗でした。ということは、欧米の活動家だけではなくブラジルからも参加しているということです。これは世界社会フォーラムでの「社会運動グループの呼びかけ」の中で重要課題としてのパレスチナ民衆との連帯があり、これにこたえた行動だったのです。
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