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2001年7月10日発行160号ピースネットニュースより

【連載】反(経済の)グローバル化の運動のいま(4)

ジェノバ・サミット(主要国首脳会議)へ
10万人の行動準備と暴力問題

元市民フォーラム2001 田中徹二

 連載の1で、「ATTAC(Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of Citizens:市民のために金融取引への課税を求める連合)というNGOの主張と活動について紹介していきたい」と述べたが、このたびATTACのニュースレター「SAND IN THE WHEELS」(週刊)の翻訳チームを立ち上げ、5月22日号(通算82号)より日本語版を発行している。これは、ピースネット・ニュースのウェッブサイトでも見られる。

EU(欧州連合)首脳会談での数万人のデモと暴力的衝突
 EU 首脳会談が 6月15〜16日にスウェーデン・イェーテボリで開催された。これへの対抗アクションに2万5千人が参加し、様々なセミナーやデモンストレーションが行われた。6月14日にはEU-米国首脳会談のためにイェーテボリに到着したブッシュは、「ブッシュ・ノット・ウェルカム」のプラカードを掲げた1万人のデモ隊に迎えられた。市民側の運動は盛上がり、とりわけ地元スウェーデンやスカンジナビア諸国のNGO、労働組合、教会、政党が大きな役割を果たした(「サンド・イン・ザ・ホイール」6月20日号)。
 しかし、デモ隊の一部がマクドナルド店を襲撃したり、建物のガラスを割ったり、道路上で火を放ったりするという暴力的行為が行われた。このため、マスコミ報道は例によりこちらの刺激的光景を取り上げるのみで、市民側の主張や行動は取り上げなかったという。実際、日本のテレビでも暴力的シーンを大々的に報じていた。このところ、反グローバル化のデモにはつきものとなった暴力的グループによる行動が、イェーテボリでも再現された。
 このような暴力的行動に対し、ATTAC内部でも深刻な論議がまきおこっている。それは、ATTACは非暴力行動をとるということでは一致しているが、暴力的グループの背後にあるものをどのように評価していくべきか、ということである(「サンド・イン・ザ・ホイール」6月27日号)。とくに、来る7月20〜21日のジョノバ・サミットでは10万人をこえる大規模な行動が予定されているが、この行動を成功させる意味でも、論議が必要であろう。このグループの正体は何か?

警察との闘いを目的化する「ブラックブラック」
 このグループと当日の行動について、日本のNGOで活動し、現在アムステルダムに在住しているK・Sさんがレポートしてくれています(WTOメーリングリスト)。以下、その報告。
「…(イェーテボリでは)ブラックブラックというアナーキスト(無政府主義者)・オートノミスト(自治主義者)の投石などの活動で警察と激しく衝突し、大変な展開となりました。…
 14日(木)の会議終了後、"ブッシュ大統領の来スウェーデンにNO"という共通のテーマで初めて大きなデモンストレーションが行われました。環境グループは主にブッシュ大統領の京都議定書離脱に反対のプラカードや横断幕を掲げました。非常に多様な人たちのデモで左翼系の団体や反アメリカの民族グループなども多く参加していました。中でもATTACの呼びかけで集まったグループは音楽隊とダンスを交えたて楽しげでした。参加人数は1万人。このデモですでにブラックブラック(黒い服で全身をかためている、中心的な人たちは黒い覆面をつけていて見た目は非常に怖い)は登場していて、警察と小さな衝突がありました。
 16、17日の週末はブラックブラックの行動がさらに過激化し、イェーテボリの街は緊張が高まりました。私たちは15日(金)の午後にはイェーテボリを去ったのですが、午前中に街を見物しようと歩いていると、行く先、行く先がどんどん警察に封鎖されてしまいました。というのもブラックブラックが投石、公衆トイレの放火、カフェの机やいすへの放火、店舗の窓ガラスの破壊をはじめたからです。投石というとそこらへんに落ちている小石を投げるとおもいきや、道路に舗装として埋めてある10cm四方の石をあらかじめ用意しておいて投げるので、本当に危険です。この後のことは新聞を通じての情報です。夕方、デモの一部のブラックブラックと警察が衝突し、警察が3人に発砲(一人重症)するという異例の事態がおこりました。これに対して警察の攻撃を批判するデモもデンマークなどで起こりました。別件ですが警察は全く暴力行為がないにもかかわらず活動家の宿泊していた学校の周りを取り囲んで封鎖しました。この学校はカウンターサミットの会場でもありました。この行為についても批判が高まりました。警察への批判とともに、ブラックブラックへの批判も高まりました。

盛上がる反グローバル化運動に対する弾圧の口実に
 ATTACをはじめ欧州ならびにロシアの市民団体、労働組合などは、来るジェノバ・サミットを反グローバル化運動の大きな結節点として位置付け、大規模な行動を準備している。先に来日したベルナール・カッセンATTAC議長は10万人以上が集まると述べていたが、6月27日の読売新聞は、イタリア当局が「経済のグローバル化に反対する市民デモが…10万〜20万人規模と予想」し、警備関係者には「けが人数百人、死者も数十人は出る」との予測もある、と報じている。また、6月21日の英タイムズ紙に掲載されていたジェノバ発の記事「G8 body bags」によれば、「…G8が大規模な抗議行動に脅かされ…当局がベトナム戦争式の遺体袋を200個注文し、遺体置場として病院の部屋を確保している…」と述べられている。
 このように読売新聞やタイムズ紙の記事を読むと、当局の意図が透けて見えてくる。つまり、大規模なデモに乗じた暴力グループ――ブラックブラック――の行動を利用しての、反グローバル化運動全体に対する弾圧という構図が。
 ジョノバ・サミットはもうすぐである。賢明な論議と行動準備がされると信じたい。
 それにしても、日本での反グローバル化運動の遅れは否めないが、次回にはATTAC日本設立に向けての準備について報告できると思う。

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