2001年6月10日発行159号ピースネットニュースより
【連載】反(経済の)グローバル化の運動のいま(3)
日本でもATTACのような運動を!
ATTAC議長ベルナール・カッサン氏の呼びかけ
元市民フォーラム2001 田中徹二
現在、反グローバリゼーション運動の国際的な結集に大きな役割を果たしてきているATTAC(アタック=市民のために金融取引に課税を求める連合)議長のベルナール・カッサン氏が、5月10日に東京日仏学院の招きで来日し、氏の講演と鎌田慧氏、松井やより氏、喜納昌吉氏を交えた討論会が行われた。
ベルナール・カッサン氏はフランスのクオリティー・ペーパー「ル・モンド」の関連会社が編集する国際月刊紙「ルモンド・ディプロマティーク」(読者120万人)の編集長でもある。カッサン氏は、日本でもATTACのような運動を結成して、来年1月のブラジルのポルト・アレグレで開催される「世界社会フォーラム」に参加してもらいたいと呼びかけた。
カッサン氏の講演と鎌田慧氏の報告をリポートする。(文責:田中)
ベルナール・カッサン氏の講演:「企業の進めるグローバル化の拒否」
アタックは、企業の進めるグローバル化に対する拒否の運動である。現在は特に多国籍企業の進めるグローバル化に対して、多くの階層が困難を受けており従属状態に陥っている。
現在のグローバル化を進めている主たる原動力は金融資本の保険、証券、銀行、そして多国籍企業といったものである。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれる国際的な機関――IMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTO(世界貿易機関)、OECD(経済協力開発会議)、欧州委員会、G7(先進国主要会議)、G8(G7プラスロシア)――にそれが現れている。
80年代にネオリベラリズムが始まり、レーガンやサッチャーがグローバル化を推し進めた。グローバル化の障害になるものを廃棄する措置を次々と取ったが、それがアメリカの利益でもあった。グローバル化は全員の幸福や幸運をもたらすと言われているけれども実際はそうではなく、民営化により政治的権力の後退がおきている。
グローバル化は決して良い結果をもたらしていない。世銀、IMF、WTOにより不平等が、格差が拡大している。IMFなどの資金は公共インフラのためというより資本の再生産のために使われている。UNCTAD(国連貿易開発会議)のレポートによれば世界の投資的金融資本の4分の3は10カ国に集中しているという。
第1段階について、フランスでは95年12月の公共サービスのストには人気があった。地下鉄のストには人々の支持が集まった。アングロ・サクソンの金融・マスコミはグローバル化へのストと言い、経済誌からの情報によると悲観的であったが、ドイツではデモの参加者がフランス国旗を掲げて連帯を示した。
第2段階では1997年のタイの金融危機にはじまりアジアの金融危機へと拡大した。また、ロシア危機もあり失業者が大量に出た。フランスでもグローバル化への反対が叫ばれ、ビビアンヌ・フォレステールの小説『経済的な恐怖』が40万部も売れベストセラーになった。
第3段階は1999年のシアトルに見られるような攻撃的な時期だった。一つの転換点で、抗議行動は習慣となり、ワシントン、プラハ、ニース、ダボス、ケベックと続いた。来月に行われる予定の世銀の会議がマドリッドに拒否されバルセロナで行われる事になった。7月にはG8の会議がジェノバで行われるが、ここでも何十万人ものデモが行われるだろう。
多国間機関は大きな圧力を感じている。シアトルでの抗議行動にはAFL−CIO(アメリカ総同盟=産別会議)、環境活動グループ、フェミニズム、債務帳消し運動、タックスヘイブン(租税避難地)を非難するグループなどいろいろなグループが集まった。このような各グループの相互化および国際化が非常に大事だ。
第4段階はオルタナティブの段階だ。ポルト・アレグレの「社会フォーラム」(注)のような逆の会議を開くべきだ。ポルトアレグレはブラジルの南の州都で参加型の民主主義の実験が行われている意義深い町である。2002年の1月にもここで第2回目の会議を開く予定だ。
政府の大臣もダメなのでアタックは市民への教育的活動を行い、経済、金融を人々に奉仕させようと運動している。現在フランスでは約3万人がメンバーになっている。欧州全体にも自発的にネットワークとしてのアタックの運動が広がり、ラテンアメリカにも、アフリカにも広がっている。
日本でもATTACのような運動を結成して、ぜひ来年1月のブラジルのポルト・アレグレで開催される「世界社会フォーラム」に参加してもらいたい。
鎌田 慧氏の報告:「グローバル化が進んでいる日本の労働現場」
日本の中でのグローバル化が進んでいる労働現場の状況について報告する。問題点の1つはフリーターとホームレスがあふれている事だ。フリーターは150万人と言われ、5年前の1.5倍だ。パートタイムは労働人口の20%になっている。
もう1つは自殺が増えている事だ。2年連続して約3.2万人にのぼり対前年比7,000人の増加だ。国家的リストラすなわち構造改革が行われようとしている。その象徴的人物がフランスから来た日産のカルロス・ゴ―ン社長と小泉首相だ。
ゴ―ン社長は国際再編成の流れの中で、つまり再編成という国際工場化の中で日本のみならず海外では2万人の解雇を行っている。また、NTTの民営化は国家財産の私的盗みであり、労組潰しであり、資本のビジネスチャンスの拡大でもある。これはJRの合理化に習っている。JRの民営化はいったん潰して再雇用という偽装倒産である。アタックのような対抗的ネットワークが解散されていき、農民と労働者が切り離される市場主義、弱肉強食の現状に対して、環境問題からのアプローチなどによって国際的な連帯を築く必要がある。そう言う意味での国際化、総合化が重要だ。
(注)ポルト・アレグレ――ブラジルの最南端のリオグランデ・ドスル州の州都、州政権は左翼の労働党で「参加民主主義のモデル」と言われているほど徹底したコミュニティー・市民参加の市政を行っており、いわば経済のグローバル化へのオルタナティブを実践している。今年の1月、世界経済フォーラム年次総会(通称、ダボス会議)に対抗して「世界社会フォーラム」を開催。ATTACがフォーラムの呼びかけを行った。
※注は田中がつけた。
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