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2001年5月10日発行158号ピースネットニュースより

【連載】反(経済の)グローバル化の運動のいま(2)

米州自由貿易地域(FTAA)に対する盛上がりと
国内でのNGO戦略会議

元市民フォーラム2001 田中徹二

米州サミット(カナダ・ケベック)への抗議デモに9万人参加
 前回、グローバリゼーションに抗する運動でいま盛上がりを見せている国際的な運動の一つとしてATTAC(アタック=市民のために金融投機に課税を求める協会 Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of Citizens.)を簡単に報告した。実は、この原稿を書いている5月10日に、東京日仏学院がフランスからルモンド・ディプロマティーク編集長ベルナール・カッセン氏(ATTACの代表でもある)を招き、「社会的なグローバル化を求める市民の闘い」と題し、彼と鎌田慧氏、松井やより氏、喜納昌吉氏による討論会が行われるが、その内容については次回に報告を行うこととする。日本の運動にとって何かヒントになることがあればと考えている。
 さて、南北アメリカをひとつの自由貿易圏にしようとする米州自由貿易地域(FTAA)を協議する第3回アメリカ首脳会議(米州サミット)が4月20日から22日までカナダ・ケベック市で開かれたが、環境NGOや労働組合員が数万人結集して、米多国籍企業の利益に資する自由貿易地域構想に抗議してデモが行われた。23日付朝日新聞はデモ参加者3万人と報告しているが、労組・環境NGO7万人、直接行動をとったNGO2万人、計9万人参加とも報告されている。(アジア太平洋資料センター・PARCのホームページ http://www.jca.ax.apc.org/parc/の北沢洋子記事・論文集「ケベックFTAAサミットについて」より)カナダ当局は史上空前の治安体制を敷き、逮捕者は250人以上にのぼり、負傷者も多数でた。
 FTAAは、実現すれば人口約8億人、国内総生産(GDP)合計11兆ドル以上という巨大市場になる。首脳会議では2005年創設を決議した。しかし、この地域では2億人以上が貧困にあえいでおり、南米各国には米国主導に対する警戒感も強いとも報道されたが、米国主導とはとりもなおさず米系多国籍企業主導である。実際、FTAAは現在の北米自由貿易協定(NAFTA)を敷衍することになるが、とくにその「投資」の条項で進出した企業・投資家の保護が謳われ(内国民待遇、収用など)、これに違反した場合現地政府に対し損害賠償を求めて訴訟を起こすことができるというものである。このためNAFTA加盟の米、カナダ、メキシコで、環境保全や健康・安全確保に関する国内法や規制に対して、進出した企業による各国政府に対する訴訟が跡を絶たない。今後、FTAAの協議が続く中で、こうした環境や人々の健康・安全より企業・投資家を優位におく内容が明らかになってくるだろう。なお、NAFTAのもつ危険性については、水の民営化(商品化)問題を軸に書かれた『BLUE GOLD――独占される水資源』(モード・バーロウ著、市民フォーラム2001発行、現代企画室発売をご覧ください。

小泉「改革断行」とリストラ
 国内に目を向けてみる。「改革断行」を掲げて首相となった小泉純一郎内閣の支持率が80%前後という過去最高の数字となった。いかに国民の間に社会の閉塞感、将来への喪失感が強かったかの証左である。いわば自民党内の反逆児に国民は幻想を抱いたのである。小泉内閣がこれから行う改革とはグローバリゼーションに勝ちぬくために、国内の非効率な産業の取り潰し、国際競争力を持つ産業の育成というドラスチックなスクラップアンドビルドを進めることである。短期的にはいわゆる不良債権の最終処理に手がつけられるであろう。建設、不動産、流通の3業種を中心に倒産が飛躍的に増えていくことになる。銀行を含めバブルに踊った経営責任、それを許してきた行政責任こそ問われなければならないし、失業への対処は急務である。
 一方、優良企業の中でも強烈なリストラが行われようとしている。NTTは先日"国内通信市場での競争を進めるための自主的取り組みを盛り込んだ「実施計画」"を出したが、その一つがNTT東西会社(社員数11万2000人)の業務の一部を地域ごとに設立する子会社に委託するというもの。ここに社員を数万人規模で転籍・出向させるが、50歳以上の社員はいったん退職させられ、20%〜30%低い賃金でその子会社に再雇用するというもので、人件費の大幅削減を狙っている(5月9日読売、朝日新聞)。年齢差別によるリストラが堂々とまかり通ろうとしている。これを突破口に、どの企業・産業でも中高年の切捨てを行おうとするだろう。決して許されるものではない。

4月14日〜15日、「WTO(世界貿易機関)を問うNGO福岡会議」
 4月14日から15日、九州・福岡市において標記会議が開催され、地元福岡を中心とした九州地域(北九州、熊本、長崎、宮崎)、広島、大阪、京都、名古屋そして東京からNGOや労働組合など120人の参加があった。同会議は、1999年から毎年行われている「WTO・NGO戦略会議」の第3回会議並びにWTO問題を討論するためのシンポジウムとして行われた。ちなみに、戦略会議は99年京都、2000年名古屋というように行われてきたが、これは98年の世界のNGOとともに多国間投資協定(MAI)反対キャンペーンを行った市民フォーラム2001や関西のAMネット(APECモニターNGOネットワーク)などが中心となって開催されてきた。
 1日目は、WTOについての講演が行われ、国際民衆保健協議会(IPHC)日本連絡事務所代表の池住義憲さんは次のように市民・NGOの役割を訴えた。「?地球の60億人の基本的人権、社会的権利を侵害させては行けないこと、?持続的農業、食料安全保障、食文化を守っていくこと、?環境保全や人々の健康と安全を守っていくために、多国籍企業を規制していく声を上げていくこと、これらをできるところから地域から行い、専門用語をやさしい言葉に置き換えて人々に訴えていくこと」を提案した。
 2日目は、一次産業、貧困、労働、環境の分科会が行われ、その後NGO戦略会議が行われた。後者については、京都の学生よりこの3月にジュネーブで行われた世界のNGO戦略会議の報告(11月のカタールでのWTO第3回閣僚会議に向けた取組など)、市民フォーラム2001の佐久間智子さんよりすでにこの2月から交渉が開始されているサービス貿易(GATS)についての報告(ガイドラインが出たが途上国の反発があり意味のあることは書かれていない)、が行われた。最後に、秋に向けてWTO問題のパンフレットを全体で作成することを確認した。

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