平和資料協同組合
『印パ速報』 ピースデポ・印パプロジェクトチーム
 第5号(1998年7月22日)
もどる

南アジアの平和、核軍縮に関わるNGOコンタクト先

 第4号に引き続き平和、核軍縮に関わるNGOコンタクト先を掲載する。今後も適宜紹介する予定。
 草の根のネットワークを作って行きたい。(これらのNGOと連絡を取り始めている方がいましたら、是非情報 をお寄せ下さい)

Indian Institute for Peace,Disarmament and Environmental Protection,
       537 Sakkadara Rd.,Nagpur 440009,
       India;tel 91.712.745806;fax 91.712.722337 
Indian Lawyers Against Nuclear Arms,
       c/o Jitendra Sharma,17 Lawyers Chambers,Supreme Court,New Delhi
       110001,India;tel 91.11.382271;fax 91.11.469.4393
Institute for Total Revolution,
       Vedchhi,Dist Surat 394641,Gujarat,India;tel 91.2625.22074;
       e-mail admin@anumukti.ilbom.ernet.in
Pakistan Doctors for Peace and Development(affiliate of IPPNW),
       PMA House,Garden  Rd.Karachi 74400,
       Pakistan;tel 92.21.721.4632;fax 92.21.722.6433
Pakistan-India People's Forum for Peace and Democracy,
       c/o The Other Media,K-14(F.F.),Green Park Extn.,
       New Delhi 110016,India;tel 91.11.616.3830;fax 91.11.619.8042; admin@tom.unv.ernet.in
SAMAR(South Asian Magazine for Action and Reflection),
       P.O.Box1349,Ansonia Station,New York,NY 10023,
       USA;tel 1.212.877.0048;http://www.drik.org/samar
South Asia Solidarity Group-http://www.angelfire.com/in/SASG/

ページの先頭に戻る
 

核実験禁止に関するパキスタンの提案をインドが拒否
  7月14日、パキスタンはこれ以上の核爆発実験について印パ両国により宣言されたモラトリアムを正式なものとするため、インドに核実験禁止条約の提案を行った。イスラマバードは7月29日からスリランカで始まる南アジア地域協力連合(SAARC:South  Asian  Asoociation  for 
Regional Cooperation)での印パ首脳会談でこの問題を協議したいとしている。カシミールおよび平和と安全保障に関する問題もパキスタンとしては議題にする予定。パキスタンは、CTBTに関して、インドの決定とは無関係に、署名を含むあらゆる選択肢を残しておきたい意向をもつ。イスラマバードはまた、印パの核実験後にシャリフ首相が行った相互不可侵条約の提案へのインドの回答を待っている。(以上、7月15付ドーン紙)
 7月15日、インドはパキスタンが前日に提案した二国間核実験禁止条約を拒否した。インドのラージ国務相は国会での答弁で「核兵器は本来広範囲の影響を及ぼし、核軍縮と核不拡散に関する問題は恣意的に限定された小地域に限られるものではなく、インドの安全保障への関心は小地域を越えてより広範囲に及ぶ」とし、インドの国家安全保障への脅威はパキスタンだけに限られないと述べた。同相はまた、インドはすでに核実験の自発的なモラトリアムを宣言しており、二国間条約は余分であると述べた。インドはパキスタンに加えて、中国を国家安全保障への潜在的な脅威と捉えている。ラージ国務相は、インドはパキスタンと「継続的で建設的な対話」をもち、すでに核兵器の第一不使用などの具体的な提案を行っていると指摘した。インドとパキスタンはCTBT(包括的核実験禁止条約)に調印していない。インド政府高官によれば、CTBT署名に対して国内に強い反対がある。しかし、米国がインドへの汎用技術(dual-use technologies )の移転を認めるなら、こうした反対は弱まると見られている。(以上、ニューデリー発 7.16付NIP)

  印パ間のこうした論争は今月末に予定されている首脳会談の前哨戦と見ることができよう。

ページの先頭に戻る
 

CTBT調印をめぐる駆け引き始まる
  7月14日、パキスタンのカーン外相は、ラホール商工会議所での会見で「インドが先行して調印してもパキスタンは必ずしもCTBTに調印するとは限らない。調印するかしないかの決定にパキスタンはきわめて注意深くなければならない」と述べた。同外相はまた「核実験に続く経済制裁に対してパキスタンは戦わなければならない」とし、さらに「パキスタンとインドはいまや対等の資格に立っている。パキスタンは隣国との紛争解決を望んでいる」と述べた。(ドーン紙 7.15付)
 タルボット米国務副長官との会談を控え、シャリフ首相は7月16日、防衛閣議を召集した。召集に関して政府高官は「われわれはCTBTへの署名を真剣に考えている。しかし批准は考えていない。核兵器保有5カ国に加えてインド、パキスタン、イスラエルの3カ国が批准したときはじめて条約は効力をもつからだ」と指摘し、「閣議はCTBTをめぐる様々な選択肢とそれが国家安全保障に与える影響を考量する。CTBTは核実験後の最も重要な争点であり、それに署名するか否かに関しては合意がなければならない」と述べた。(7.16The News InternationalPakistan)
  タルボット米国務副長官は7月19日インド入りし、20日ニューデリーでジャスワント・シン計画委員会副委員長と会談した。21日空路パキスタンの首都イスラマバード入りし、アフマド外務次官と会談、22日シャリフ首相と会談する。 
 CTBTの調印をめぐる印パ間および印パ・米間の駆け引きが始まった。

ページの先頭に戻る
 

米中共同声明に対する印パの対照的な反応 
 第1号で米中首脳会談とこれへのインド政府の反応を見た。今号ではそれへのパキスタンの反応を紹介する。なお、1998年6月27日に発表された南アジア情勢に関する米中共同声明の全文を掲載する(資料1)。 
 6月29日にラジオ放送されたパキスタン政府声明:「パキスタンは中国と米国が南アジアにおける平和と安全を維持し、ジャンム・カシミールを含む緊張の原因と取り組む誓約をしたことを歓迎する」。声明はさらに「パキスタンがこれまで密接に協力してきた米国および中国が世界的な平和と繁栄を強化するのに支援を惜しまない」と述べた。
  インドの否定的な反応に対しパキスタンは米中両国の関係強化を歓迎している。ジャンム・カシミール問題をあくまで2国間で処理したいインドに対して、国連ないし第3者の介入を求めるパキスタンの立場の違いがここにも明白だ。

ページの先頭に戻る
 

資料1 南アジア情勢に関する米中共同声明
はじめに
 われわれは、インドとパキスタンが最近核実験を実施し、その結果両国間で緊張が高まっていることを、今後とも深く憂慮する。われわれが共同で非難した両国の核実験によって、南アジアの平和と安定および強力な国際的核不拡散体制という、われわれ共通の利益は危機に瀕している。われわれは南アジアの核軍拡競争を阻止し、国際的な核不拡散への取り組みを強化し、インドとパキスタン両国の和解と対立の平和的解決を促進するために、常任理事国5カ国間や安全保障理事会、その他の枠組みの中で、引き続き緊密に協力することで合意した。

南アジアの核軍拡競争の阻止
 常任理事国による6月4日の共同声明は、国連安保理決議第1172号によっても支持されたが、南アジアの核およびミサイルの軍拡競争の脅威に対応するための、明確で包括的な目的と行動計画を明らかにしている。われわれは共同声明に記されている方策の全面的支援を約束するとともに、再びインドとパキスタンに対し、今後いっさいの核実験を中止して包括的核実験禁止条約(CTBT)に即時、無条件で署名すること、核兵器化または核兵器の配備、および核兵器を運搬可能なミサイルの実験と配備を行わないこと、そして核兵器化または核兵器とそれを運搬可能なミサイルの配備を行わないことを固く誓約することを要求する。

国際的核不拡散のための協力強化
 米中は核不拡散条約(NPT)を根拠に、核不拡散に関する強力で効果的な国際協力を強く支援する。国際的な核不拡散への取り組みを引き続き推進し、インドとパキスタンを含むすべての国が、無修正で現行のNPTに加盟することがわれわれの目標であるという点を繰り返す。NPTに加盟しない国家は、NPT加盟国に与えられている便益と国際的地位を受けることを期待できない。インドとパキスタンは、最近の核実験実施にもかかわらず、NPTに規定されている核保有国の地位をもたない。
 われわれはNPT第6条に明記されている、核軍縮に関する誓約を実現する決意を改めて表明する。この目的のために、米中両国は包括的核実験禁止条約に調印したのであり、核実験を再開する意思を持たない。
 われわれは、1995年に合意した指令に基づき、核兵器や核爆発装置に使用される核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の多国間交渉を、ジュネーブ軍縮会議において早期に開始および妥結することを要求する。早期合意に達するために、インドとパキスタンが積極的に、軍縮会議での他国との交渉に参加することを要求する。
 われわれはIAEAが現在実施している強化された保障措置システム
(Strengthened Safeguard System)を積極的に支援し、また米中国内で施行するために即座に措置を取る。

インド・パキスタン間の緊張緩和と対立の平和的解決の促進
 われわれは、インドとパキスタンがカシミール問題を含む、両国間の困難で長期にわたる対立を平和的に解決するために、可能な限り支援する。われわれは二国間の対話の再開を歓迎し、その継続を促す。また、二国間における信頼醸成措置の実施を支援する用意があり、さらにこのような措置を検討することを促す。

米中の責任
 米中は長い間、インドとパキスタンとの友好関係を模索してきた。われわれはこの目標を再確認し、平和で繁栄し安全な南アジアを実現するために単独または共同で貢献するとの願いを新たにする。常任理事国として、また南アジアの国々と重要な関係を持つ国家として、われわれはこの地域の平和と安定、安全保障の維持のために積極的に貢献し、緊張の原因を取り除くために可能な限りの方策を取る責任を有することを認識する。
 米中それぞれが、インドとパキスタンにおける核兵器および核兵器を運搬可能な弾道ミサイルの開発計画を、いかなる形でも進める備品や物質、技術の輸出を防止し、この目的のために、国内の輸出管理システムを強化することを再確認する。

次のステップ
 米中間の緊密な協調は、インドとパキスタンの核実験に対応して表明したわれわれの目標の基盤となる、強力な国際的支援を構築する上で不可欠である。われわれはこの問題に引き続き強い関心を持ち、他の常任理事国や非常任理事国、アジア太平洋諸国、より広範囲の国際社会とともに、南アジア情勢の一層の緊張を食い止め、インド・パキスタン間の対立を平和的かつ両国ともに受け入れ可能な方法で解決し、国際的核不拡散体制を強化することに協力する。
             (訳:東海明子)

ページの先頭に戻る
 

印パ核実験をめぐる各国の動き(1998年7月13日−7月17日)

  • 13日:国際刑事裁判所(ICC)の設置のためローマで開かれていた外交会議で、条約上の「戦争犯罪」の定義に、核兵器と対人地雷の使用を含めないことが決まった。「本質的に無差別な兵器」に核兵器や対人地雷を含めることに米国や多くの国が反対したため。「締約国会議で今後、定義の範囲を広げることができる」とする追加条項を入れることで問題が先送りされた。米英は核兵器使用が将来、戦争犯罪とされる可能性についても牽制している。なお、条約の最終草案は7月17日に公表された。
  • ブラジルのカルドーゾ大統領は、CTBTの批准文書と、NPTへの加入文書に署名した。ブラジルは80年代まで、NPTが差別的であるとして加盟を拒み、軍事政権下で核兵器の開発を続けてきたが、仮想敵国だったアルゼンチンと信頼関係を築いたことで方針を転換した。アルゼンチンも3年前にNPTに加盟している。
  • 南アジアの核拡散への対応策として、クリントン米大統領が先月の米中首脳会談で、中国の江沢民主席に安全保障の懸念や脅威感についてインドとの直接対話の必要性を呼びかけていたことが明らかになった。これに対し中国側は、安全保障問題でインドと対話を進める意向があると伝えた。
  • 14日:米会計検査院は発表した報告書の中で、北朝鮮がIAEAの度重なる要請にもかかわらず、過去の核開発に関する情報提供や証拠保存に協力していないと指摘し、北朝鮮の核兵器計画の真相を解明できないままに終わる可能性に懸念を表明した。
  • 北朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が資金不足になっている問題で、デミング米国務次官補代理は、上院外交委員会東アジア太平洋小委員会で証言し、重油供給の米国の当初の見積もりが「楽観的過ぎた」として、議会に拠出額の増額を求めた。米政府関係者によると、北朝鮮政府高官が米政府宛に文書を送り、94年の米朝枠組み合意に基づく重油供給の遅れが続くなら核燃料の再処理施設の凍結を解除すると警告してきた。北朝鮮が凍結解除の期限を明示したのは今回が初めて。危機感を強めた米政府が議会の説得に本格的に乗り出した。
  • 15日:米国の核問題に関するシンクタンクであるエネルギー環境研究所は、米仏が建設中のレーザー核融合実験施設は、核物質を使わない新タイプの水爆開発につながり、CTBT違反の恐れがあるとして、即時中止を求めるリポートを発表。
  • キルギスの首都ビシケクで中央アジア諸国と核保有五カ国の専門家会議が開催された。中国紙・法制日報などは同会議を「非核地帯構想を大きく前進させる会議」だと前向きに報じた。中国は印パ核実験後、アジア太平洋地域の「責任大国」を自認する一方、西部国境で隣接する中央アジア5カ国の非核兵器地帯構想への支持を一段と明確にしている。東南アジア非核地帯については、南シナ海の領土問題もからみ消極姿勢を残しているものの、インド・パキスタンの核実験を機に、中国は対米関係改善もにらみ、核不拡散に積極的に関与する方針に転じた。今後、朝鮮半島や日本を含んで構想されている「北東アジア非核地帯」に中国がどのような姿勢でのぞむか注目される。
  • 米上院本会議は、印パ両国に科している経済制裁を一定期間、猶予できる裁量を大統領に与える修正案と、大半の国に対する経済制裁から食糧分野を外す修正案を、審議中の農業歳出法案に盛り込むことで合意。米国の制裁制度については見直し論議が盛んになり、印パ両国への制裁をめぐっては、上下両院がすでに、米国産農産物の輸出に伴う農務省の信用供与を例外扱いとする法案を可決し、クリントン大統領が署名した。
  • 16日:インド外務省は、米国がインドの核開発の最高責任者で原子力委員長のチダムバラム博士ほか、複数の原子力発電所の科学者に対するビザ(査証)発給を拒否したことを明らかにした。またインディラ・ガンジー原子力研究センターの所長ら三人も英国によってビザ発給を断られた。
  • 17日:中国との核管理交渉を担当する米政府高官は、先の米中首脳会談でクリントン大統領と江沢民国家主席が互いの核ミサイルの照準を外すと発表したことに関連し、日本の米軍基地を射程に収める中国の中距離弾道ミサイルDF21(東風21)は、照準外しの対象に含まれていない、との見方を示した。


ページの先頭に戻る


    ●発行:平和資料協同組合(ピースデポ)
    ●ピースデポ・印パプロジェクトチーム:
     藤田明史(専任スタッフ)、中野克彦、吉田ゆき、萩原重夫、川崎哲、笠本丘生、梅林宏道(チーム代表)
    ●この「速報」の内容についての問い合わせ先:
      藤田明史  Fax 0798-66-9128   E-mail  gr261953@kic.ritsumei.ac.jp
    ●この「速報」の予約申し込みなど事務的な問い合わせ先:
      平和資料協同組合(ピースデポ)
      Tel:045-563-5101  Fax:045-563-9907  E-mail:peacedepot@y.email.ne.jp
      〒223-0051 神奈川県横浜市港北区箕輪町  3-3-1 日吉グリューネ 102
  ●この「速報」はインド・パキスタンの核実験をめぐる一次情報と分析を発信するレポートです。
   第1期として、7月1日から31日までの間に10回ほど発行します。
  ●ピースデポ・印パプロジェクトを支えるカンパをお願いします。一口10,000円以上。
   郵便振替:00280-0-38075
   加入者名:「平和資料協同組合」(通信欄に「印パ・プロジェクト」と明記してください)
    ● 宛名を明記せずに一斉にファックスと電子メールでお送りします。ご注意下さい。


ページの先頭に戻る



トップページ E-mail: peacedepot@y.email.ne.jp