平和資料協同組合
『印パ速報』 ピースデポ・印パプロジェクトチーム
 第4号(1998年7月16日)
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南アジアの平和、核軍縮に関わるNGOコンタクト先 
 第2号でインド核軍縮運動(MIND)の活動を紹介した。今号と次号に分けて南アジアの平和、核軍縮に関わる
NGOのコンタクト先を掲載する。われわれとしても草の根のネットワークを作っていきたいものである。

Movement in India for Nuclear Disarmament(MIND),
      Address for Correspondence:
      *Prabir Purkayastha,
      B-1 2nd Floor,LSC,J Block,Saket,New Delhi 17,India;tel/fax 91.11.686.2716;
      email ctddsf@giasd101.vsnl.net.in ,
      *Praful Bidwai,Jaipur Estate,Nizamuddin East,New Delhi-13,India;
      tel 91.11.469.7278;fax 91.11.464.2886,*Kamal Mitra Chenoy,39 Dakshinapuram,
      JNU Campus,New Delhi 67,India;tel 91.11.617.7492,91.11.616.4330;email chenoy@nda.vsnl.net.in
Committee for a Sane Nuclear Policy,
      M-120  Greater Kailash 1,New Delhi 110048,India;
      tel 91.11.641.5365;fax 91.11.623.4939
Documentation and Dissemination Centre for Disarmament Information,
      21 Railway Parallel Rd.,
      Nehru Nagar,Bangalore 560020,India;tel 91.80.336.4689
Foundation for Research on International Environment,National Development and Security
      (FRIENDS),
      88 Race Course Scheme,Race Course Rd.,Street-3,Rawalpindi,Cantt,Pakistan;
      tel 92.51.518331;e-mail syed%friends@sdnpk.undp.org
The Humanist Movement,
      11Yogniti,18 SV Road,Santacruz West,Mumbai 400054 India;
      email ffh@bitsmart.com
ACTION COMMITTEE AGAINST ARMS RACE(ACAAR),
      Pakistan,Yusuf Mustikhan,Convener,ACAAR,43/3-C,
      Shah Abdul Latif Road,Block-6,PECHS.,Karachi,Pakistan.

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印パ核実験をめぐる世界の論調
 インド・パキスタンの核実験をめぐる関連記事を主要日刊紙から抜粋した。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(6月24日付)は「インドの人々は、グローバリゼーションが何を意味するかを発見するだろう」と題する社説で、「インドの人々や政府高官が理解していないのは、1991年以来インドはその経済を外国からの輸入や投資家に開放し、成長維持のためにはインド経済を部分的に世界資本に依存せざるを得なくさせたということだ」と述べた。代表的な経営格付け会社ムーディーズは、インドの経済を海外投資家にとって安全を意味する「投資グレード」から要注意を意味する「投機グレード」に格下げした。「このことは米国の制裁措置よりはるかに重要である、なぜならインドの会社や政府が海外から資金を借り入れるコストが上昇するから。インドは貯蓄率が低いため、海外資金は経済の成長にとって決定的だからだ」と指摘した。これはインドの今後を考えるのにかなり重要な視点であろう。
 インドの経済紙ザ・エコノミック・タイムス(5月21日付)は、インドのバジパイ首相が核実験場に隣接した村を訪れた際、核実験後から健康の不調を訴える住民の抗議に会ったと伝えた。同紙によると、核実験場から3キロ離れたケトライ村の住民が、核実験の直後から目の痛み、鼻血、呼吸障害などの身体の不調を訴えている。バジパイ首相は実験からの放射能の放出はなかったと主張しているが、住民は首相の言うことが本当かどうかを知るために村に放射線医学の専門家を求めている。1974年の第1回目の核実験の際には同村の18人の住民が癌で死亡し、3人が現在でも病院で治療を受けているという。
 インドの日刊紙ザ・タイムス・オブ・インディア(7月1日付)の社説は、「軍事化された科学」という見出しを掲げ、「インドの公然の核兵器化(nuclearization)に最も執拗にそして強力に圧力をかけているのは軍隊や政治家ではなく、核や防衛産業に関わる科学者達である」と述べた。記事はゴウダ元首相の証言を挙げ、それによれば1995年と97年に科学者たちが二つの政権に核実験の実施を迫った。「私は決定を下すように求められた。私は科学者に時はまだ熟さないと説得した」。記事はまた「われわれは今や軍産複合体の発展に直面している」と述べ、更に「この危険な発展は五つの核兵器保有国で起こったことに匹敵する」とその危険性を指摘する。そしてインドにとって恥ずべきは「アインシュタインやロートブラットは言うまでもなく、オッペンハイマーやフェルミやシラードがいないことだ」とし、「軍産複合体の手の中の破壊的な技術は安全ではありえない。それらは兵器化され使用されることになる。われわれはそれらを開発してはならない」と結論している。ここで指摘されているように、インドにおいて軍産複合体が自己運動を始めたということは、事実認識としてきっちり押さえておく必要がある。

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国連安保理決議に対する印パの反論
 前号では国連安保理決議に対するインドの反論を紹介した。今号ではパキスタンの反論を載せる。
 印パとも現行の差別的なNPT体制の元では核拡散は不可避と考えている。「欠陥のある不拡散体制の失敗のせいで、われわれの核実験は必要となった」とのインドのバジパイ首相の言葉にパキスタンは反対しないに違いない。印パ間の相違は、インドが「核不拡散問題は地域的な問題ではなく、グローバルな文脈において対処しなければならない」とするのに対して、パキスタンは「核不拡散は安全保障のない状況を作り出したりあるいは黙認したりすることでは追求されえない」とし、同国のおかれる地域的な要因を強調する、という点である。ジャンム・カシミール紛争をインドは二国間の問題にとどめたいのに対して、パキスタンは国連の場での解決を考えている。両国首脳の会談が、7月末にスリランカで開催される南アジア地域協力連合(SAARC )首脳会議において実現する見通しであるが、対話の場が二国間と国連のちょうど中間にあることは興味深い。

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資料1 国連安保理決議に対するパキスタン国連大使の声明(1998年6月6日)
  50年間、パキスタンは国連に対しインドによる不法なジャンム・カシミールの占拠について繰り返し注意を促してきた。われわれは安保理自身による解決を求めた。国連決議に記されたカシミールの人々の譲渡しえない自己決定権のインドの粗暴な行動による拒否に対して、われわれは国際社会の注意を向ける努力を行った。
  われわれはパキスタンの繰り返しての警告と要求に安保理が全く何の注意も払わなかったことを遺憾に思う。今日なお、インドとパキスタンの関係を悪化させ、南アジアの全ての紛争と緊張の根源にある中心的な争点が無視されている。
 安保理は南アジアにおける不安定な状況を把握してはいるが、そこでとられているアプローチは残念ながら全く現実的でない。核不拡散は安全保障のない状況(security void)を作り出したりあるいは黙認したりすることでは追求されえない。これがこれまでもそして今も、不拡散という目標を追い求めてきたものすべてにとっての主要な失敗である。
 不拡散は南アジアにおける争点ではもはやなくなった。主要国の激励と黙認のおかげで、南アジア―われわれはそこを核兵器のない地域にしたかった―はいまや核兵器化された。現実に核戦争が起こる危険がある。残念なことに核拡散が起こってしまった。この不幸な進展をどんなお説教も悲嘆も矯正し元に戻すことはできない。
  核不拡散は核軍縮の片側の面である。核軍縮への対応する進展なしには核不拡散は促進されえない。
 五つの核兵器保有国はNPTを二つの目的のために使ってきた。膨大な核兵器備蓄を保有しそれを永続的に保持する権利の正当化、およびこれ以上の核拡散を阻止するための直截的な道具としての目的である。
  決議は五つの核兵器保有国がNPT6条に関与することを「歓迎」するとしている。しかし事実に対するこれ以上の辛辣な嘲笑はないであろう。
 非同盟運動は一貫して、核兵器備蓄の維持または核抑止力政策に基づく国際的な安全保障の概念の正当化はありえないことを主張してきた。
 カルタヘナで行われた非同盟諸国会議は全ての核兵器の廃絶を時間を限って行う行動計画の採択の重要性を確認した。
 もし安保理が今日、不拡散を本当に心配するのであれば、その採択する決議はNPTの参加国も含む非同盟運動の支配的な見解を正当に評価すべきである。
 パキスタンの問題は安全保障であり、地位ではない。
 6番目の核兵器保有国の地位を要求したのはインドである。
  パキスタンは二重に差別されてきた。地域的なレベルでは、作用と反作用、挑発と応答、原因と結果を区別することの安保理による失敗によりわれわれは差別されている。
  世界的なレベルでは核兵器保有五カ国によりわれわれは差別されている。核兵器国は、お互いに対してあるいは非核兵器国に対して、大量破壊兵器を獲得、維持する権利を自ら要求し、こうしてそれ以外の世界を脅かしている。
  5カ国外相会議の声明にあった、インドとパキスタンが和解と協力を促進するのに支援する用意があるとの重要な要素が、安保理の決議から削除されたのは遺憾である。
  インドとパキスタンが自力でこうした問題を解決できていたなら、今日、南アジアは核兵器化されていなかったであろう。
 安保理が今日われわれに要求しているのは、端的に言うと、二つの核兵器保有国に現実の状況の基礎の上に紛争を解決しろというに等しい。
 実際、安保理が今日われわれに求めているのは、破滅的な道に乗り出したままいろということである。核兵器および弾道ミサイルシステムの拡大における新たな敷居を渡れということである。
  パキスタンは失望した。
 しかし、われわれは引き続き国連決議に従ってジャンム・カシミール紛争の解決を追求するであろう。
 パキスタン大統領がすでに言明した通り、パキスタンは、ジャンム・カシミール紛争の公正かつ平等かつ迅速な解決の基礎に立って、相互不可侵条約を含むあらゆる問題をインドと話し合う用意がある。
          (抜粋・訳:藤田明史)

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印パ核実験をめぐる各国の動き(1998年7月7日−7月9日)

  • 7日:イスラマバードからの報道によると、パキスタンは、インド政府が条件付きでCTBTの署名の用意があると示唆したことに大きな関心を見せており、場合によっては国際的な評価を得るためにインドより早くCTBTに署名し、経済制裁の解除を取り付けたいとの考えが浮上している。すでにインドは、経済制裁の解除、汎用核技術移転禁止の緩和、核施設への完全査察の除外などを条件に、CTBTに署名してもいいとの柔軟姿勢を示している。
  • 8日:英国のブレア政権は、核戦力の一方的な削減などを含む防衛計画「戦略的な国防見直し」を発表した。潜水艦発射方式のトライデント・ミサイルに搭載する核弾頭の総数を 200個以下に削減するなどが盛り込まれている。発表内容を見ると、作戦上使用可能な核弾頭を 200以下に減らすこと、トライデント・ミサイル数を現有の58基に限定すること、任務につく潜水艦は1隻とし、搭載核弾頭の上限を従来の96個から48個に半減すること、これら潜水艦の警戒態勢を緩め、ミサイルの照準を外すなどである。これまで英国は核弾頭の総数の上限を 300個に設定していたので、今回の発表によるとその3分の1を削減することになる。兵器用核物質についても、プルトニウム7.6トン、高濃縮ウラン21.9トン、その他のウラン15千トンなど、これまで公表しなかった数字を初めて明らかにし、「可能なかぎり公開性を高める」とした。削減で不要になるプルトニウムなどは国際査察の対象にする。
  • パキスタンのアジズ蔵相は、IMFが核実験を理由に融資凍結などの制裁に踏み切るなら、今後3週間以内に対外債務返済の一時凍結宣言をせざるをえないと語った。ナワズ・シャリフ首相とアジズ蔵相は、IMFの南アジア融資部門のチャブリエル代表と会談し、同国の経済混乱を阻むため約束ずみの融資を停止しないように強く要請した。
  • 9日:G8外相会議で設置した南アジアの核拡散問題に関する作業チームがロンドンで初会合を開いた。G8の各国、中国、豪州、ウクライナ、ブラジルなど計15カ国と欧州連合(EU)が参加、印パ両国の核開発や緊張を緩和する方策について意見を交換した。印パを核不拡散体制に参加させるには、「核兵器を持つ国を含めて、全世界的な軍縮努力が必要」と指摘した。


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    ●発行:平和資料協同組合(ピースデポ)
    ●ピースデポ・印パプロジェクトチーム:
     藤田明史(専任スタッフ)、中野克彦、吉田ゆき、萩原重夫、川崎哲、笠本丘生、梅林宏道(チーム代表)
    ●この「速報」の内容についての問い合わせ先:
      藤田明史  Fax 0798-66-9128   E-mail  gr261953@kic.ritsumei.ac.jp
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  ●この「速報」はインド・パキスタンの核実験をめぐる一次情報と分析を発信するレポートです。
   第1期として、7月1日から31日までの間に10回ほど発行します。
  ●ピースデポ・印パプロジェクトを支えるカンパをお願いします。一口10,000円以上。
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   加入者名:「平和資料協同組合」(通信欄に「印パ・プロジェクト」と明記してください)
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