社会主義インターナショナル
アジア太平洋委員会東京会議
参議院議員  大脇 雅子

日本における民主主義

〜憲法をめぐる議論を中心に〜

 

はじめに

 わたくしは、今回のシンポジウムに参加されていますSIの皆様を心から歓迎しますとともに、このセッションで報告できる機会を得ましたことを喜んでいます。  「民主主義のための共同行動」について報告申し上げたいテーマは、現在の日本における憲法をめぐる状況であります。1999年7月の国会法の改正によって、衆議院・参議院に憲法調査会が設置され、2000年1月から、調査会が開催されています。そこでは、現行の日本国憲法をめぐるさまざまな論議が行われています。しかし、議論の内容と方向性は、憲法が保障している日本の民主主義を歪める状況を明確に示しており、重大な危機に立たされています。  以下、日本国憲法の制定過程と憲法調査会の現状、今後の課題について申し上げます。

1 日本国憲法の制定とその後

 現在の日本では、国際的政治状況の変化などを理由に、この第9条の改正を求める意見がこれまで以上に強く出されるようになってきています。憲法の改正には、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国民に提案し、国民の過半数の賛成が必要です。  憲法調査会でこれまでに取り上げられた論点は、日本国憲法の制定過程、日本がいかにあるべきかという「国のかたち」です。そして、参考人からのヒアリングを行い、委員相互のフリートーキングを行いました。さらに、各国視察として、衆議院はドイツ・スイス・イタリア・フランス・フィンランドを、参議院はアメリカを歴訪しました。  論議で、もっとも特徴的なのは、憲法調査会の目的が「広範かつ総合的に調査」することと規定されているにもかかわらず、まるで現行憲法の「改正」のために、調査会の運営がなされていることです。これは、改憲を主張する人たちが、「国民運動」として取り組み、その一環として、現行憲法を第2次大戦後、日本を占領統治したGHQに「押しつけられた」ものとして、日本民族の伝統や文化をことさら強調し、日本の戦争行為を美化する歴史観に基づいた教育を若い世代に行うために、中学校の歴史教科書を作成していることと一体化しています。この教科書を作成する中心人物が憲法調査会の参考人となって、フェミニズムと人権尊重に強い嫌悪感を示していたことは、憲法改正の方向と内容を非常に雄弁に語っています。  これらの動きについて、わたくしは、先にオーストリアでハイダー氏が率いている、民族の伝統と文化を強調し、排外主義を鼓舞する極右政党が連立政権に参加し、ヨーロッパ近隣諸国やSIの強い批判を受けたことを想起します。

2 憲法調査会の議論  

 現在の日本では、国際的政治状況の変化などを理由に、この第9条の改正を求める意見がこれまで以上に強く出されるようになってきています。憲法の改正には、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国民に提案し、国民の過半数の賛成が必要です。  憲法調査会でこれまでに取り上げられた論点は、日本国憲法の制定過程、日本がいかにあるべきかという「国のかたち」です。そして、参考人からのヒアリングを行い、委員相互のフリートーキングを行いました。さらに、各国視察として、衆議院はドイツ・スイス・イタリア・フランス・フィンランドを、参議院はアメリカを歴訪しました。  論議で、もっとも特徴的なのは、憲法調査会の目的が「広範かつ総合的に調査」することと規定されているにもかかわらず、まるで現行憲法の「改正」のために、調査会の運営がなされていることです。これは、改憲を主張する人たちが、「国民運動」として取り組み、その一環として、現行憲法を第2次大戦後、日本を占領統治したGHQに「押しつけられた」ものとして、日本民族の伝統や文化をことさら強調し、日本の戦争行為を美化する歴史観に基づいた教育を若い世代に行うために、中学校の歴史教科書を作成していることと一体化しています。この教科書を作成する中心人物が憲法調査会の参考人となって、フェミニズムと人権尊重に強い嫌悪感を示していたことは、憲法改正の方向と内容を非常に雄弁に語っています。  これらの動きについて、わたくしは、先にオーストリアでハイダー氏が率いている、民族の伝統と文化を強調し、排外主義を鼓舞する極右政党が連立政権に参加し、ヨーロッパ近隣諸国やSIの強い批判を受けたことを想起します。

3 私たちの課題  

 わたくしは、21世紀を「平和の世紀」として人類とりわけ若い世代に引き継ぐために、日本国憲法の先駆的役割と意義を再確認すべきだと考えています。日本が、この平和憲法の下で50年間、国際協調外交を展開しながら平和を維持してきた意義はたいへん大きいと思うのです。  民主主義を論じるときには、わたくしは、日本国憲法の掲げる平和的生存権は、21世紀に普遍化されるべき人権として発信されるべきと考えています。1999年5月、ハーグ平和アピール市民会議のアジェンダ「公正な世界秩序のための10の基本原則」は、第1に、「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争することを禁止する決議を採択するべきである。」と表明しています。憲法改正を主張する人たちは、「血と汗を流す」国際貢献を強調します。しかし、わたくしは「血を流す」ことには絶対に反対です。「汗を流す」非軍事の国際貢献、対話の平和外交と信頼醸成こそ、定着させる必要があります。日本国憲法が理想として高く掲げた先駆的意義を21世に受け継ぐものと確信しています。  平和のための創造的政策を通じて、世界の軍縮の推進と核兵器の廃絶に向けた取り組みとりわけアジアにおける中心的議題にすえられなければなりません。わたくしは、社会民主党土井たか子党首の提唱にかかる「東アジア非核地帯構想」をまず具体化すべきとと思います。さらにこの構想を世界規模に拡大することによって、世界における「人間の安全保障」を実現することができるであろうと考えています。

おわりに  

 社会民主党は、一貫して「憲法を生活に具体的に活かす」、「生活の中に生きる憲法」を掲げて、平和憲法の意義を国民に訴え続けてきました。「憲法が危ない」今こそ、過去の歴史に学びつつ、わたしたちは考え抜いた思想とそれに裏打ちされた役割を果たさなければなりません。ありがとうございました。