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パネリストの報告・問題提起高須裕彦氏 |
中島通子氏
男女雇用平等法や育児・介護休業法実現を求めて活動してきたが、現実には民間企業や公務職場で、権利が保障されない非正規雇用労働者が増加、正規雇用との格差が拡大していることが問題となっている。これは、アメリカ型市場原理主義のグローバル化がもたらしたもので、これに対置する型として、ヨーロッパ型とりわけ、現在、コンビネーション・シナリオとして脚光を浴びているオランダ・モデルが参考になる。格差是正のためには、直接差別だけでなく間接差別も禁止されるべきで、とくに公務職場でその必要は大きい。オランダ・モデルにおけるワークシェアリングに学ぶべき点は、フルタイム労働の時短、パート労働(短時間正社員)の拡大、ペイド・ワークとアンペイド・ワークの分かち合いによるフルタイムとパートタイムの均等待遇の確立、有期雇用でないパート労働、高水準の社会保障、労働者自らが時間の長さを選択する働き方などである。
中野麻美氏
アウトソーシングにより、派遣労働者が製造業その他あらゆるサービス産業に働いており、正規雇用労働者の非正規雇用への代替が進み、労働条件、男女の格差も大きくなっている。労働者は職場でセク・ハラやいじめなど、人間関係が破壊されるなかで激しい競争にさらされており、しかも労働条件の格差・差別は改善されない。労働政策については、ILOの問題提起を受け止め、総合規制改革会議が提唱する労働政策に対するオールタナティブを提起すべきだ。すなわち、労働の価値に着目した社会政策原理の確立、ディーセント・ワーク(品格ある仕事)の確立と保障のために、労使の社会的な対話と合意に基づく政策の実現が求められている。そして、ジェンダーの視点で社会や企業の仕組みを変えなければならない。働く価値のある仕事・雇用の創出、雇用対策のための財政投入、均等待遇原則の確立、労使の対話などを実現していくべきであり、日本の社会のあり方そのものが問われている。
大脇雅子
国会は今、平成14年度予算が衆院で審議されているが、野党は、雇用、社会保障、環境、教育関連予算の組み替え要求を出している。とりわけ雇用対策では、OECDに比べ日本では若者の雇用対策費が算入されておらず、若年労働者の雇用促進を、補正予算を審議する予算委員会等で促してきたところだ。また、ワークシェアリングは、政府、労働者、企業が共同してパートと常用雇用者の均等待遇を実現する協定の締結および支援策が必要となる。ワークシェアや雇用促進のなかで差別なく働ける法案を実現したい。
高橋ますみ氏
NPO法人ウィン女性企画は、日本向老学会を立ち上げ、男女共学でNPO活動を進めている。サンフランシスコなどNPO活動の盛んな地域も取材して思うのは、日本のNPOの仕組みは行政に都合の良いように予算を決められていく危険性を孕んでいるということだ。27年間の活動から仕事を創り出すという難しさに直面しているが、もう負けたくない、引きたくないという気持ちだ。今後も工夫を凝らして、男女共同参画社会の実現にむけて活動を続けていきたい。
酒井和子氏
フルタイムとパートタイムの差別賃金について、ILO本部に調査に行った帰途、オランダを訪れ、社会雇用省、労働組合、女性団体、経営者団体などからワークシェアリングについての調査を行った。オランダでは、パートを増やして失業率を下げたといわれているが、これは歪曲した言い方だ。前提に均等待遇と充実した社会保障があり、政労使の社会的合意ができている。シングルマザーの家でもパートで働いてゆとりある暮らしをしていた。日本の場合、均等待遇の実現と社会保障面の財政支出を厚くしなければ、とても追いつくことはできない。
中野麻美氏
小泉首相は施政方針演説で、失業対策のために労働法を変えると言ったが、失業率を改善するために、正社員の雇用を切りやすくしたいという考えが基本にある。総合規制改革会議は、規制緩和をすると直接利益を得る会社社長がメンバーに入り、働き手の代表は全くメンバーに入っていないのは問題で、雇用創出に逆行している。働く価値ある雇用と仕事をどう創り出すか、皆さんにも問題を提起していただきたい。(文責:大脇事務所)
東京、名古屋ともに会場から多数の発言がありましたが、紙面の都合により残念ながら割愛させていただきました。ご発言くださった皆様には深くお詫びいたしますとともに、お忙しい中をご参加くださった皆様に心より感謝申し上げます。