「保健婦助産婦看護婦法」改正質疑
153回国会 参議院 厚生労働委員会
2001年11月29日(大脇質問部分 未定稿)
○大脇雅子君 それでは、発議者の方にまず最初に確認的にお伺いしていきたいと思います。
今回、議員立法によりまして、保健婦助産婦看護婦法の改正によってそれぞれの名称が保健師、助産師、看護師と改められるということでありますが、その意義をどのように考えておられるのか、確認をさせていただきたいと思います。
○沢たまき君 大脇先生にお答えいたします。
同一の専門資格であるにもかかわらず女性と男性とで名称が異なるのは、法律上は保健婦助産婦看護婦法が定める保健婦と保健士、看護婦と看護士、准看護婦と准看護士だけとなっております。このような状況を改めて、その名称を統一するとともに、助産婦も含めその名称を専門資格をあらわすのに適当なものに改めますことは男女共同参画の趣旨にも沿うものでありまして、大きな意味を持つものと考えております。
また、この改正については、ほとんど御異論はなく、それぞれの看護職種からも強い要望をいただいておるところでございます。
○大脇雅子君 その中で、助産師につきましては、現行法第三条の「業とする女子」の文言のままということで女性のみの資格要件が残されましたが、この理由について改めて確認させてください。
○委員以外の議員(清水嘉与子君) 御承知のように、昨年の国会におきまして保助看法の改正を提案いたしました。その中には、助産婦に男性を導入すること、そして名称を改正する、この二点を出したわけでございますけれども、その後、さまざまな男性の助産師導入に関しまして慎重な御意見が幾つかございました。そのことを配慮いたしまして、このたびは、そのことはもう避けてといいましょうか、その部分は、つまり助産師については改正をしない、女子のままというふうに残して、そして名称の改正だけを行いたいと、こういう改正をお願いしているところでございます。
○大脇雅子君 今回の改正法案に対する多くの陳情や要請の中で、助産婦を助産師とすることが男性助産師への道をつけるための改正であるから反対という意見がございますが、この見解については発議者はどのように受けとめておられますか。
○委員以外の議員(清水嘉与子君) これは、繰り返し御説明申し上げておりますように、男性に助産婦の道を開くということに関しましてはいろんな御意見、慎重論もございまして、このたびはこの法律の中に入れていないわけでございます。したがいまして、男性助産師への道をつけるための一つの方法であるということはないわけでございまして、全然そういうことは考えていないわけでございます。
もし仮にそういうことになりますれば、また改めて国会の御審議をちょうだいすることになるわけでございまして、このたびは男性助産師につきましては導入することはない、女子のままでいくということでございますので、御了解いただきたいと思います。
○大脇雅子君 改正法案の第三条で「業とする女子」という文言が改正されなかったのでありますが、女子という文言は女性とすべきではなかったかと思うのですが、いかがでしょうか。
○沢たまき君 確かに、労働基準法とか男女雇用機会均等法においては、平成九年の改正で女子が女性に改められております。女性という文言に改めるべきであるというお考えも一つの御見識であるとは思います。
しかし、今回の改正はその内容を資格の名称の統一、変更という点に絞っております。特に、助産師の定義について、女子の部分に変更を加えるといいますのは、これまでの経緯にかんがみますと思わぬ議論を呼ぶことにもなりかねませんので、そのようなことから必要最小限の改正にとどめることといたしたわけでございます。
○大脇雅子君 そうしますと、今回は名称だけの改正ということであります。しかし、保健、助産、看護を業とする人たちの権利とか労働条件の改善、向上がなければ、単に名称変更したということでは意味が軽いといいますか少ないのではないかと思いますが、今回の改正によって具体的にどのような効果を発議者は期待されておるのでしょうか。
○委員以外の議員(入澤肇君) 名称が変わることによって一層専門家としての自覚が高まると思うんです。
ただ、私は、看護婦さんや助産婦さんの労働現場におきまして、お医者さんと一緒になって相当過重な労働をしている現場を見ております。したがいまして、診療報酬の改定の都度、やはりその処遇の改善等については相当なことが配慮されなくちゃいけないというふうに思っています。
幸いなことに、看護協会、助産婦協会、それぞれ国会議員を出しているわけでありますから、この先生方にもっと頑張ってもらって、常に恒常的に継続的に労働条件の改定についていろんな努力がなされることを期待しているところでございます。
○大脇雅子君 私は、この問題は単なる男女平等から男性、女性の名称を師に変えるというだけの発想であってはならないと思います。職域分離というのは、これは職場における男女差別の大きな原因であるということで、私どもは性差別の是正に取り組み、真正な職業資格といいまして、性において特定される職業の資格というものはできるだけ少ない領域にしていくというのが今までの男女平等運動であったと思います。
この件に関しましても、私はリプロダクティブヘルス・ライツのいわば本質的な部分として適用除外とすべき問題なのか、あるいは今の女性に担われているこの助産という仕事を組みかえていって、専門職の能力と適性という分野にすべきことなのかという本質的な私は論議を含むものだというふうに今考えております。
そういう中で、病院に今お産は管理されている。妊産婦のニーズあるいはパートナーのニーズというもの、そして出産のトータルケアということを考えますと、あるいはこれが医師という男性によって営まれる出産というものの効果かもしれないと実は私も考えることもございます。
しかし、今、出産と分娩は非常に多様化いたしまして、水中の出産をこの間私の友人がいたしましたけれども、連れ合いとともに水の中に入って夫がへその緒を切るということで、非常に感動的な出産をしたという話も聞きました。在宅分娩あるいは無痛分娩等、そうした多様な分娩に対応するシステムというものは、やはり日本にはないというふうに皆さんいろいろな質問の中で言われますし、私もそのように実態を把握しております。
今度は政府の方にお尋ねをいたしたいのですが、保健、助産、看護を業とする労働者の権利や労働条件について、厚生労働省としてどのように実態を把握しどのような施策をこれから遂行されていくのか、改めてお訪ねしたいと思います。
○政府参考人(篠崎英夫君) ただいまの先生の御質問で、保健、助産、看護等のことについての労働の状況等の御質問というふうに承らせていただいて御答弁をさせていただきますと、看護職員、現在、平成十年度末で約百九万人ほどおりまして、女性が九六・四%、男性が約三・六%という状況でございます。
また、その状況等についてでございますが、これは看護協会の調査によりますと、病院の看護部長などの責任者というポストを占めておられる方は、この数の問題も関係しておると思いますが、平成十一年で約九七・三%というような状況でございます。また、賃金につきましても、平成十二年の賃金構造基本調査によりますれば、これは勤続年数が男性の方が長いのでございますが、男性の方が勤続年数七・九年で約二十九万一千円の給与、それから女性の方は勤続年数が平均六・七年ということでございますが、二十八万四千円というようなことでございまして、また国立病院等の医療職俸給表等におきましては男女による格差はないということでございます。
保健、助産、看護等の業をしておる方たちにつきまして男女差のないように、私どもも努力をこれからもしていきたいというふうに考えております。
○大脇雅子君 それでは時間もございませんので、最後に二点お願いをいたしたいと思います。
男性が保健、看護に従事しているという場合で、専門職としての高い人権や倫理観というものの確立が必要だという声を聞きます。そのような点と、助産師の養成システム及び養成機関の拡充強化に向けた積極的な施策をお約束いただけるかどうか。それからもう一点は、円議員も言われましたように、男性が参入することの是非、あるいは出産のあり方や家族のあり方等について広く国民の意識、意見、とりわけ女性の意見を厚生労働省として調査をするということをお約束していただけるかどうか、この二点について大臣にお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) 最初の男性助産師を今後どうするか、認めるかどうかということにつきましては、現在のところは考えておりませんが、今後これはまた議論になるときがあるいはあるのかもしれません。そのときには、いずれにいたしましても当事者であります女性の御意見というものを十分に拝聴して、そしてその女性の意思を尊重する中でこれは決定をすべきものというふうに考えている次第でございます。
それから、厚生労働省としてもう少しこの実態をよく把握しなければならないではないかという御意見につきましては、それは御指摘のとおりでございますので、引き続きまして関係団体の皆さん方とよくお話し合いをこれからさせていただきたいというふうに思いますし、情報につきましても十分にこれは収集していかなければならないと考えているところでございます。
養成所の問題につきましては、今までもこの施設の整備でございますとか、あるいはまた運営費につきましての助成等を財政的にもしてきたところでございますが、そうした面も重要ではございますけれども、やはり助産婦の皆さん方、今度助産師になりますけれども、皆さん方が仕事に張りを持ってやっていただけるような仕事環境というものをつくり上げていかなければならないというふうに思います。
そのためには、やはりこの助産婦あるいは助産師でなければできないお仕事の内容というものをより明確にしていかなければなりませんし、そしてそこは、例えば今まで病院におきまして病院の先生のお手伝いをするというのではなくて、助産婦あるいは助産師の皆さん方固有のと申しますか、固有にひとつおやりをいただけるそういう分野を私は確立していくべきだというふうに思っている次第でございます。
|