公正取引委員会の「著作物再販制度の取扱いについて」に関する質問主意書
1998年9月28日
書籍・雑誌、新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CDの再販に関する独禁法適用除外制度(著作物再販制度)の廃止の是非について、公正取引委員会は、本年3月31日、「著作物再販制度の取扱いについて」(以下「取扱い」という。)において、「競争政策の観点から、廃止の方向で検討されるべき」としつつ、「廃止した場合の影響について配慮と検討を行う必要がある」旨の基本的見解を明らかにした。
著作物再販制度は、事業の文化的・公共的使命に鑑み、著作権者保護、著作物の伝播に携わる者の保護のためには不可欠であり、関係団体では、制度を維持すべきであるとの意見が、大勢を占めている。仮に制度が廃止された場合、商品価格等が自由化されることなどにより、一面、消費者利便の向上にはなろうが、創作者、出版社にとっては、より過当な競争を強いられ、結果として作品や情報の質の低下が危惧されることは否めない。
公正取引委員会は、一定の期間経過後に制度自体の存廃について結論を得ることとしているが、性急な決定は避けるべきであるとの立場から、次の点について質問したい。
1、「取扱い」は、いかなる法的性格の文書なのか、即ち何らかの法的強制力、行政処分性を有する文書なのか、この内容を守らないと再販事業者が何らかの不利益を被ることになるのか否かについて明らかにされたい。
2、再販事業者が、当を得ていないとの判断のもとに、「取扱い」が求める著作物再販制度の維持による弊害を是正する措置を実行しない場合は、公正取引委員会が、著作物再販制度を廃止すべきであるとの結論を得るものと理解してよいのか明らかにされたい。
3、著作物再販品目の範囲の限定、明確化は、独禁法の改正等によって実施するのか否か、また、実施する場合、その時期は何時かについて明らかにされたい。
4、アメリカ合衆国政府の日本に対する規制緩和の要求のなかに、著作物再販制度の廃止があったのか否か、また、あった場合、これに対しいかなる対応をされたのか明らかにされたい。
右質問する。
公正取引委員会の「著作物再販制度の取扱いについて」に関する質問に対する答弁書
1998年10月27日
1について
公正取引委員会作成に係る平成10年3月31日付け「著作物再販制度の取扱いについて」と題する文書(以下「取扱いに関する文書」という。)は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)第24条の2第4項に基づき著作物の再販売価格維持行為について独占禁止法の適用を除外する制度(以下「著作物再販制度」という。)等についての公正取引委員会の解釈及び今後の方針を示したものであり、それ自体、法的強制力を持つものでもなければ、行政処分としての性格を有するものでもない。
しかし、公正取引委員会においては、今後、取扱いに関する文書で示した方針により、独占禁止法の運用及び著作物再販制度の見直しを行っていくこととしており、例えば、取扱いに関する文書で示した独占禁止法の解釈によれば独占禁止法第24条の2の規定に該当しないと認められる再販売価格維持行為を行った場合には、独占禁止法第19条等に違反するものとして対処することとなる。
2について
取扱いに関する文書において、公正取引委員会は、これまで我が国における著作物再販制度は、関係業界により硬直的・画一的に用いられてきた傾向があり、結果として消費者ニーズへの対応や利便の向上を損なったりしている面もみられることなどから、消費者利益を確保する観点から、関係業界に対し、現行の著作物再販制度の下において指摘されている各種の流通・取引慣行上の弊害の是正を要請したところであるが、これは、あくまでも現行の著作物再販制度の下での是正を求めるものであり、かかる要請に沿った関係業界による弊害是正措置の実行の有無と著作物再販制度自体の存廃とは直ちに結びつくものではない。
3について
著作物再販制度に関し、公正取引委員会においては、独占禁止法上再販適用除外が認められる著作物の取扱いを明確にするためには、法的安定性の観点から、立法措置によって対応するのが妥当と考えているところであるが、取扱いに関する文書において一定期間経過後に著作物再販制度自体の存廃についての結論を得ることとしていることから、現時点で、法改正の時期等を明らかにすることはできない。
4について
著作物再販制度については、日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組みの下で公表された規制緩和等に関するアメリカ合衆国側要望書(以下「要望書」という。)及びアメリカ合衆国通商代表部作成に係る外国貿易障壁年次報告(以下「年次報告」という。)において、次のとおり言及されている。
1) 平成7年11月22日公表の要望書 再販売価格維持に関するすべての独占禁止法適用除外について、1998年末までに廃止する観点から見直しを行う。
2)平成8年11月15日公表の要望書 独占禁止法及び景品表示法に基づくすべての適用除外について、必ずしも必要ではない適用除外その他類似する措置は廃止するとの観点から、1997年度末までに見直す。特に、独占禁止法第二十四条の二に規定される再販売価格維持に関するすべての適用除外及び景品表示法第十条第五項の廃止に注意が払われるべきである。
3)平成9年11月7日公表の要望書 1998年4月までに、独占禁止法上の適用除外、とりわけ第二十四条の二(再販売価格維持)を見直すとともに、景品表示法の適用除外も見直す。
4)年次報告1998年版(1997年版にも同様の記述がある。) 再販売価格維持―1997年4月、日本政府は、独占禁止法の製品の適用除外をすべて廃止したが、著作物(書籍、雑誌、新聞、CD)のみが顕著な例外となっている。独占禁止法の下で、小売価格の維持が他の慣行と異なる扱いをされるべき理由は全くない。
右のとおり、アメリカ合衆国政府は、公式文書の中で著作物再販制度について言及しているが、我が国としては、平成4年4月以降、公正取引委員会において、著作物再販制度の在り方について検討を続けているところ、これは右アメリカ合衆国政府の要望を受けて開始したものではなく、我が国独自の判断で開始したものである。また、右アメリカ合衆国政府の要望については、他の内外の意見と同様、著作物再販制度の在り方についての検討の際の参考意見として取り扱っているところである。
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