外国人の医療と福祉に関する質問主意書
2000年4月28日
我が国の外国人登録者総数は、平成10年で150万人を超えている。この他にも在留資格を有しない又は在留期間を経過した外国人が相当数いるといわれており、これらの外国人全てを合わせると、我が国の総人口の実に1パーセント以上を占めるまでになっている。これらの外国人の多くは我が国の社会に溶け込み、善良な隣人として国民とともに生活している。
ところが、納税等の義務を負い、日本国民と何ら変わらない生活を送っているにもかかわらず、外国人は多くの行政サービスの対象外となっている。特に、医療福祉分野においては、外国人の生命、生活に直接かかわるだけに、その改善が早急に必要となっている。
そこで、以下質問する。
1、入院助産について
児童福祉法第22条における入院助産制度は、出産費用が捻出できない等の経済的な理由のある妊産婦について、助産施設に入所させる措置をとるものであるが、緊急に適用する必要が生じた場合、指定助産施設での出産であれば、外国人についても、在留資格及び外国人登録の有無にかかわらず、人道上適用すべきではないか。
2、養育医療について
母子保健法第20条における養育医療は、「未熟児養育事業の実施について(厚生省社会局長通知)」で規定する未熟児を出産したため、指定医療機関において入院治療が必要とされる場合であるが、在留資格がなく、健康保険又は国民健康保険等の資格を得ることができない場合、いかなる要件を具備すれば適用されるのか。
また、適用されるとすれば、患者の自己負担分はどのようにして算出されるのか。
3、育成医療について
児童福祉法第20条における育成医療が適用されるのは、該当する疾病や障害を生じたため、指定医療機関において主治医が主として入院を要する治療が必要と判断した場合であるが、在留資格がなく、健康保険又は国民健康保険等の資格を得ることができない場合、いかなる要件を具備すれば適用されるのか。
また、適用されるとすれば、患者の自己負担分はどのようにして算出されるのか。
4、更生医療について
身体障害者福祉法第19条における更生医療は、身体障害者の更生のために必要な医療を給付するものであるが、在留資格がなく、健康保険又は国民健康保険等の資格を得られていない外国人に対して、更生医療の適用が必要とされる場合、いかなる要件を具備すれば適用されるのか。
また、適用されるとすれば、患者の自己負担分はどのようにして算出されるのか。
5、母子手帳について
母子保健法第15条における妊娠の届出は、在留資格にかかわらず行うべきものであるが、外国人登録がない場合、現に居住する管内の市町村に届出を行うべきものか。
また、外国人登録をしていない者から、妊娠の届出を受けた市町村は、第16条の規定に基づき、母子健康手帳を交付すべきではないか。
6、予防接種について
予防接種法第3条に規定された定期予防接種を市町村が行う場合であって、当該市町村内に確実に居住していると認められる者は、外国人登録の有無にかかわらず、第2条2項に規定された予防接種を受けることは可能か。
また、市町村は、第2条2項に規定された予防接種を行った結果、それに起因する疾病・障害・死亡などの事由が生じた場合には、外国人登録の有無にかかわらず、第11条における給付を行うべきではないか。
右質問する。
外国人の医療と福祉に関する質問に対する答弁書
2000年5月26日
1について
児童福祉法(昭和22年法律第164号)第22条に定める妊産婦の助産施設への入所措置について、都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村は、緊急に入院助産を受けさせる必要があると認められる場合には、当該妊産婦の出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)に定める在留資格及び外国人登録法(昭和27年法律第125号)第4条第1項に定める登録(以下「外国人登録」という。)の有無にかかわらず、当該措置を採り得るものと考えている。
2について
母子保健法(昭和40年法律第141号)第20条に定める未熟児に対する養育医療の給付について、都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、出生時の体重が2000グラム以下である等の状態にあり、医師が入院養育を必要と認めた場合には、当該未熟児の入管法に定める在留資格の有無にかかわらず、当該給付を行い得るものと考えている。
この場合における当該児童の扶養義務者からの費用徴収については、「母子保健衛生費の国庫負担及び国庫補助について」(平成9年9月18日厚生省発児第93号厚生事務次官通知)に掲げる徴収基準額表に基づき、当該児童の属する世帯の所得税額等に応じて算出した額を徴収することを国庫補助の基準としており、これを踏まえて各都道府県等が具体的な徴収基準を定めているところである。
3について
児童福祉法第20条に定める障害児に対する育成医療の給付については、障害児の生活能力の向上等を目的とするものであること、指定育成医療機関において一定期間継続して治療を受けることを前提としていること等から、基本的には入管法に定める在留資格のない不法滞在外国人への適用は想定していないが、緊急に手術等を行わなければ将来重度の障害を残すような場合には、都道府県、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市又は同法第252条の22第1項の中核市(以下「都道府県指定都市等」という。)は、当該給付を行い得るものと考えている。
この場合における当該児童の扶養義務者からの費用徴収についでは、「身体障害児援護費及び結核児童療養費の国庫負担について」(昭和62年7月29日厚生省発児第119号厚生事務次官通知)に掲げる徴収基準額表に基づき、当番児童の属ずる世帯の所得税額等に応じて算出した額を徴収することを国庫補助の基準としており、これを踏まえて各都道府県指定都市等が具体的な徴収基準を定めているところである。
4について
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第19条に定める身体障害者に対する更生医療の給付については、国籍要件はないが、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護するという同法の目的を踏まえれば、入管法に定める在留資格のない不法滞在外国人は身体障害者福祉法の適用を受ける身体障害者としては想定されておらず、不法滞在外国人に対する当該給付も想定されていないものと考えている。
5について
母子保健法第15条に定める妊娠の届出は、同法第16条第1項に基づき母子健康手帳を交付し、妊娠期間中及び出生後に健康診査、保健指導等の行政サービスを適切に提供できるようにすることを主な目的としており、通常、短期的な滞在者であると考えられる外国人登録を受けていない外国人は、当該届出を行う必要はないものと考えている。しかしながら、外国人登録を受けていない外国人が妊娠の届出を行う場合の届出先は、居住地の市町村とすることが適当であり、当該市町村が母子健康手帳を交付することとなる。
6について
予防接種法(昭和23年法律第68号)第3条第1項に定める定期の予防接種については、市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものを対象としており、外国人に係る居住の有無は、当該予防接種の実施者である市町村長が外国人登録等により判断しているところである。
また、同法第3条第1項に定める定期の予防接種を受けた者に係る疾病等が、当該予防接種を受けたことによるものであると認定された場合には、同法第11条第1項に基づき、健康被害の救済に関する給付が行われることとなる。
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