<非暴力平和隊実現可能性の研究>

第4章 非暴力平和隊の職員

マライケ・ユンゲ、ティム・ウォリス

4.3 新人募集

4.3.1 資格と技能
紛争地域での仕事に必要とされる資格と技能は、4つの主要な種類に分けることができる。すなわち、個人的特質、個人的価値観、経験、および技能である。最後の技能は、一般的な技能と派遣団に特有の技能に細分される。

ほとんどの組織では、技能と経験の項目で必要とされる輪郭は、派遣スタッフが実行するよう要求される特定の課題に非常に大きく依拠しているのに対して、個人的特質と個人的価値観の項目に関してはまったく同様な要求をしている。異なった役割は異なった技能を必要としており、インタビューした組織の大部分は、ある特定の地位が必要であることを反映した詳細な職務記述書に従って、彼らの派遣スタッフを選んでいる。

ここで調査されたすべての組織において、補充を指令するのは現地の要求であって、他のやり方ではないことを、心に留めておくことは重要である。人々が、空席になっている地位に対する明細書に従って選択され、補充されるためには、ある種の技能と経験を持っている必要がある。 したがって、NPの新人に対して要求される技能に関する一般的な想定をすることは難しい。しかしながら、大多数の組織に共通の最低限の必要条件はいくつかある。

技能に関する必要条件は一般化できない、何故ならば、その必要条件は仕事の明細や国の明細とはあまりにもかけ離れているから、という事実には誰でも同意するけれども、いくつかの組織は、それらの地域のそれぞれに対する一般的な 必要条件を定義するために、異なる「従事領域」を分類しようと試みた。この分類の中でOSCEのREACT計画はたぶん最も詳細なものであろう、そして彼らの「スタッフ配置のマトリックス」は、平和活動職員の新人募集とトレーニングを容易にするため、国際的な組織によってますます採用されている。このシステムは、平和活動よりはむしろ「民主化と人権」活動に強く焦点を当てており、彼らの専門的なキャリヤの開始点では、トレーニングされていないボランティアを除外しており、専門的でうまく構成された新人募集の枠組みの良いモデルを提供している。

OSCEの「スタッフ配置のマトリックス」は、専門的技術の12の分野と4段階の職掌上の責務(下級専門員から上級管理者までの)を定義している。ある地位に対する個人的な専門的必要条件は、その地位に指定され得るカテゴリによって異なり、以下のように分けられる。
以下は、OSCEに対するいくつかの実質的な機能のための必要条件である。

総務スタッフ/監視機能
OSCEの総務スタッフ/監視機能は、スタッフ/個人の助力者の地位にあり、状況/見張りの仕事に割当てられた者によって行われる仕事と同様に、選挙や警察のような他の専門的技術の分野によってカバーされるものとは別の監視活動を含んでいる。おこなわれる監視は、活動的ではない観察(たとえば、国境での動向について)と、重要な発展についての報告、あるいは、もっと先を見越して行動する取り組み(たとえば、国際的合意事項と義務の実行の監視で、その合意事項や義務が無視されたり、違反があった場合には、介入の命令をともなっている)にかかわるかもしれない。しかしながら、監視する地位、見守る地位あるいはスタッフ助力者の地位のいずれにしろ、この専門分野で活動している人々は概して、いくつかの中核的技能を持っている。それは以下のものを含んでいる。

政治面の事柄
政治面の事柄は概して、招致国内でのOSCE の派遣命令に関連している問題、特に早期警告、紛争防止、危機管理と紛争後の復興の分野に関する問題についての分析と報告を伴う。また、招致国の当局側のすべてのレベルに対し、OSCEの 政策的立場を代表してのアドバイスと同様に、派遣団長および他の派遣スタッフにアドバイスすることを伴うかもしれない。

選挙
選挙管理の活動は一般的に、選挙関連事項の全範囲を組織化し、実行し、監督することにかかわる。その事項には、法律制定と選挙規則の起草、有権者の識別と登録、政党と候補者の登録、 政党の発達と選挙運動と資金規則、有権者教育、国内の観察者のトレーニング、メディアの監視、投票所の設立、投票と開票の監督と監視、および選挙後の活動を含むこともあり得る。また、もしそのように命令されるならば、選挙結果の実現にかかわるかこともあるかも 知れない。

民主化
民主化の活動には、市民社会の強化、政党の発展、ならび良好な統治の促進を含むかもしれない。

市民社会を強化することは、以下の事柄にかかわるかもしれない。
政党の発展は、以下の事柄にかかわるかもしれない。
良好な統治の促進は、以下の事柄を目的とする。
国のレベルおよび地方のレベルにおいて、透明性と説明責任を増進させるのに加えて、公務員および民主的政治の原則とやり方で選ばれた候補者の技能を進展させ、理解を改善すること。また、それは、人権あるいは国民和解を促進するための国家的委員会あるいは機関の発展を含むかもしれない。

法の支配
法の支配にかかわる活動は通常、警察や看守と同様に、裁判官と検察官および弁護士のトレーニングにより、司法 の執行および inter alia (訳者注:意味不明)を高めることを目的とする。それは、派遣された地域において必要かつ適切な、法システムおよび司法システムへの体系的変換を促進することにより、そして国内法を、OSCEの委任と他の認知された国際的標準に一致させるための法律の改訂と立法上の見直しプロジェクトを企画することにより、法的システムの機能を監視すること、および司法の執行面における改善を促進すること、に関わっている。


人権
人権の活動は通常、人権状況に関して監視し、調査し、報告すること、関連法と慣行を分析すること、人権侵害に注意を喚起し、関連する人権基準と国内法の遵守を確かめるために、国家当局とともに介入すること、に関わっている。また全体として、少数民族問題、難民/国内流民(Internal Displaced Persons: IDPs)問題ならびに移動の自由問題にかかわる状況と同じように、裁判を含めて、司法システムを監視することを伴うことがある。さらに、人権の 活動は、人権に関する民衆の認識、および人権教育を促進することを伴うことがある。
必要条件:
望ましい条件:
NPの職員に対して要求されるさらに専門化された資格は、明らかに、その職員が実行することになっている具体的な機能と職務によって決まるだろう。 PBIのような小規模のNGOは、与えられたプロジェクトのすべての空席に対して、一通の職務記載書と1組の基準だけで、新人募集へのすべての取り組みに対応する一つの型を持つという傾向がある。もっと大きな組織は、より大きな枠組みの中で、適切な技能を持つ適切な人を適切な地位に迎えるために、はるかに幅広い特殊化と専門化の等級を持っている。もちろんこの戦略がいつも効果的だというわけではない、たぶん国連は、ピーターの原理という最も悪名高い例であろう。国連では、人々は最終的に彼らが管理できる範囲を越えた地位に昇進している。その結果、国連全体の組織はがらくたを積み上げた最高に無駄な官僚主義になっている。

OSCEには、事実上、4段階の異なる関与のレベルがある。上述した詳細は、OSCE現地スタッフの実質的な機能のいくつかについて説明している。これに加えて、派遣団長、派遣団次長、地域センター長、および現地事務所長などのような管理職がある。また、通信、安全、輸送、補給、調達、予算・財務、人的資源、建設、およびトレーニングを担当している管理スタッフや支援スタッフがいる。そして、実は上述の総務スタッフが、他に記載してある実質的な機能よりは、それほど専門化されていない、より一般的な配備の種類であると主張することができるだろう。

NPは、そのモデルを用いて、たとえば、特定の専門的技能はなにも持たず、期待される一般的な資格を持つ人々を、総務スタッフとして採用することができるだろう。より専門化された技能は、支援スタッフに期待されている技能とはまったく違う、より伝統的な技能を持った現地スタッフの実質的ないろいろな機能に割当てられる職員に対して期待されるだろう。 一方、管理スタッフは、プロジェクトの状況と派遣団を運営するための、もっと一般化されたかなり高いレベルの技能を必要とするだろう。

監視や仲介のために必要とされるような特定の平和技能を持った現地スタッフと、教師、人権問題の弁護士、トラウマ・カウンセラー、若年活動家、コミュニティのオルグなどのような平和活動に適用できるかも知れない、より伝統的な専門的技能を持った人々との間でさらに一層の分化がなされるであろう。

4.3.2 新人募集戦略
インタビューした諸組織が用いている新人募集の戦略は、2つの主な種類に分けることができる:
  1. 登録簿に追加する新人募集
  2. 特定の活動のための新人募集
4.3.2.1 登録簿のための新人募集
本章の最初の節で言及したように、いくつかの組織(OSCE、国連、赤十字、MSF、NORDEM、NORSTAFF、VSO、UNV)は、どちらの種類にも入れることができる。これらの組織は、事前選別された個人の登録簿を保持しており、その後の特定の活動に対する必要条件に合致している人がおれば呼び出す。この登録簿の管理項目には多くの違いがある。赤十字とMSFは国際的によく知られている組織なので、潜在的な人物でデータベースを満たしておくのに十分なだけの願書を受け取っている。彼らは、新しい雇用者を新規採用はせずに、非常に特殊な高いレベルの仕事と、あるプロジェクトから別のプロジェクトへと頻繁に移動するスタッフを公募するだけである。

ごく最近OSCEは、OSCE の任務に対して、短時間の事前通告で求めに応じられる専門家のプールを増強させるためのREACT(迅速な専門的支援・協力チーム)というプログラムを発足させた。OSCEは、この新しいサービスを大々的に宣伝し、そのウェブサイトに独立したREACT新人募集部を立ち上げた。 OSCEの登録に接続するためには、候補者はオンラインで提出することが可能な願書に書き込まなければならない。登録簿への登録と詳細な選別に先立っての面接はなく、ある候補者が、一つのOSCE任務の空席に対する条件に合致していると認定された時に、選別がおこなわれる。このシステムでは、何人かの登録者は、どのような任務にも派遣されないことになる。

Canadem(カナダ)、NordemとNorstaff(両方ともノルウェー)は、すでに数年間にわたって活動しているが、国連、OSCE、および他の国際的な派遣団へのsecondmentに対して、それぞれの自国内だけでスタッフを募集しており、新人募集のための大がかりな宣伝はしていない。この3組織はすべて、OSCEや国連派遣団にスタッフを提供することにかかわっている。迅速に職員を求めるOSCEや国連の要求に応じることができるように、登録簿のすべての候補者はあらかじめ慎重に選別されている。各個人は、国連-願書P11(付録II参照)に基づく願書を作成して、面接を受けている。 さらに、推薦状も事前にチェックされることがしばしばである(Canademは、身元保証人に対して書面による質問表への回答を求めさえする)。 非常に時間のかかる手順は、単なる願書による評価だけでは難しい人物の信頼性をチェックするために重要である。これらの「新人募集機関」により加えられる主な価値は、最終的に「配備組織」に推薦されるそれらの候補者が、できる限り慎重に事前選別されており、またある地位に対して適切な候補者としての十分な能力を備えている、ということである。しかしながら、登録簿に登録された候補者の多くは、どのような任務にも派遣されることはないであろう。

現在、Canademは2000人、Nordemは 220人、Norstaffはおよそ400人の登録者を持っている。3組織はすべて、将来的に彼らの登録簿を増強させることを目ざしており、Canademは、国連やOSCEと他の国際的な平和派遣団を支援するために、事前選別された候補者の民間人登録簿を確立するこのシステムを採用するようさらに多くの国々に提唱している。新人募集のこの仕掛け、ならびに他の組織によって運営されていたプロジェクトに人々が派遣されるという事実は、その組織が帰国した派遣スタッフと接触を保ち、PBIの帰国ボランティアの中に見られるような家族的雰囲気を作り出すことをかなり難しくする。登録者についての詳細は、本人から削除要求があった場合、あるいは記録更新の要請に対して更新されない場合には削除される。

このモデルは、VSOの取り組み方とはかなり違っている。VSO は、いったんボランティアとして受け入れた有望な応募者それぞれのために、適切な部署を見つけだそうとしている。また、VSOには、第一段階に合格した人々に対して、長い願書とそれに続く個人面接で構成されるかなり長く慎重な選別手順がある。合格者は、適当なプロジェクトに配備されるまでに通常4カ月から1年の間待機する。帰国したボランティアは、データベース上に残されるが、公開行事の講演者として呼び出されたり、トレーニング・ワークショップを開いたり、情報を伝えたりするために週末に呼び出されるが、新しい任務に呼び出されることはない。したがって、VSOのデータベースを本当の登録簿と呼ぶことは適切ではない。 それはむしろ派遣のために選ばれた候補者の補欠名簿である。

UNVは、この中間に当たるシステムを用いている。 関心がある個人は、願書を作成するように求められ、その願書に基づいてUNVのデータベースに追加されたり、されなかったりする。空席ができた時はかならず、その仕事が必要とする特定の特性をそのデータベースで検索する。それから選別された候補者は、その国のUNV事務所あるいはその国の代表者によって開かれる面接のために呼びだされ、必要と考えられるならば、推薦状がチェックされる。

4.3.2.2 個々の活動のための新人募集
「ドイツ市民平和活動」や開発機関あるいは、より小さなすべての組織のように、潜在的候補者の登録簿を管理していない組織は、それぞれ個々の活動のために募集しなければならない。一般に、彼らは古典的な新人募集システムを用いている。
いくつかの組織は、この標準システムに加えて、数日間続く特別な「新人募集セミナー」を開いている。ロール・プレイやグループ面接および類似の訓練が、コミュニケーションと個人間の技能、聴き取りの技能、チームワークの能力、競争心、一般的な態度などを評価するために用いられる。 いくつかの場合には、この査定が最初の一般的なトレーニング・コースの一部となる(「バルカン市民平和活動」、PBI、Norstaffの場合)。

4.3.3 申込みと雇用の過程
この節に対して関連している情報の大部分は、すでにこれまでの節で扱われている。 したがって私たちは、付加的情報を与えてくれるいくつかの側面を強調するだけにとどめ、登録簿に追加されている人々ではなく、特定の活動に対する願書についての私たちの意見は取り下げることにする。

前述の通り、関心を持ったそれぞれの個人に対する願書の過程は、願書 (あるいはドイツの場合には、表書きと履歴書で構成される書面による願書)の記載完了から始まる。 Canadem、Nordem、およびNorstaffは、国連に関連するかもしれないすべての情報が候補者ファイルの中に確実に収納されるようにするため、公式の国連-願書(P11)を適用して来た。

これらの願書は、むしろ標準的であり、家族状況(結婚歴、扶養家族の数)、身体状況、国籍、居住資格、身元保証人、そして有用性についてばかりでなく、教育、専門的経験、OSCE/国連派遣団の経験、平和維持や平和構築あるいはその関連活動の特定の経験、語学力と、関連する実用的技能、海外経験、ボランティア活動、についての情報に焦点を合わせている。

願書による事前選別に続いて、個人面接と推薦状のチェックがおこなわれる。これらの3 段階を首尾よく通ると、候補者は、申し出を受けて、研修あるいは、新人募集過程の最終段階であるトレーニング・セミナーに参加するよう勧められる。いくつかの評価訓練に首尾よく合格した後でのみ、(採用)申込みがなされる。

4.3.4 適切なスタッフを見つけることの評価と経験
現場には、最善の評価様式は、模擬的状況あるいは実生活の中で人物を観察することである、という一般的な了解がある。英国では、国定職業資格(National Vocational Qualification: NVQ)というシステムによって、シュミレートされた状況あるいは実生活の状況における実用的な仕事に関連する技能を評価するための手順が確立されている。英国内の地方の仲介と人権の監視プロジェクトでは既にその分野で、訓練し、評価し、能力を認証するためにこのシステムを利用している。同じような領域で活動している他の組織は、新人募集についての要求を満たすため、RedRのような国際的な新人採用機関のように、このシステムを自分たち専用に修正した改訂版を開発している。この領域で活動しているいくつかの組織の中には、この分野での活動の質と、さらに確立した専門的技術の分野に関連して持っている地位の両方を高めるかもしれない認識可能な一組の規格を規定するために、このNVQの考え方を発展させ、拡張しようとする関心が高い。

システムが人々に機会を提供するNVQシステムの利点の1つは、人々が既に持っている技能を提示する機会を提供することであり、彼ら自身の技能についての自覚をもたせることである。また、それは、もの事の結果として固定した資格を受け入れるよりはむしろ、人々が絶えず自分たちの技能を発展させ、改善するのを支援する、モジュール式で無限に拡張可能なシステムである。

このようなシステムにも明らかに欠点はある。標準は何かを誰かが決めなければならないし、誰かが他の誰かの評価をおこなわなければならない。どちらの場合にも、人間的な過失と不公正の余地が大いにある。 このシステムは、その国全体にわたって相対的に均一性をもって機能させるため必然的に、まったく頑強に公式化される。 それが全世界を通して適用するように適応されるならば、この公式化が何度も積み重ねられるのは避けがたいのであろう。

それにもかかわらず、NVQシステムは、技能の評価と認定の問題全体を考察するための良好な出発点を提供している。 私たちは、まだほとんど明確にされておらず、しかも比較的に供給不足な技能の1組を取り扱っているのだから、私たちはどこかを調べ始める必要がある。

他方、専門的経験、学歴、語学力、国についての知識などはすべて、身元保証人、証明書、個人面接または筆記試験の助けによって評価することのできる特性である。 個人的な態度と価値観は評価するのが難しいのだが、これらは平和活動のための重要な前提条件である。

したがって、PBIのようないくつかの組織は、選別過程のもっとも重要な要素として、何回かの数日間続くトレーニング集会を考えている。ロール・プレイ、グループ面接、ゲーム、そして他の共同活動を通して、対人関係の技能、チーム技能、当局側に対する態度、および全般的なふるまいを観察し、評価することができる。

ビジネスの部門では、これらの「評価センター」は、新人募集の過程で広く一般的に用いられている。しかしながら、そのような「評価センター」をおくことはかなりの費用を要する(特にわずかな「有能な」候補者を必要としているだけなのに、何人もの候補者がそのような試験に参加するような場合には)。 また、そのような「評価センター」は、組織し運営するために多くのスタッフ能力を必要とする。 この理由により、ボランティア的組織の大部分は、このシステムを用いず、その代わりに身元保証人、個人面接、筆記試験、および多くの常識を用いた古典的な方法に頼っている。

ある技能を評価することについてのこれらの困難さにもかかわらず、インタビューした相手は、適切なスタッフを見つけることに関する問題に関して不満は述べなかった。これとは反対に、特定の評価センターを運用するため、資金を得ようとしていることを全般的に認めているにもかかわらず、彼らは彼らの確立した新人募集と査定手順に関して自信と誇りを表明した。

4.3.5 準備され、必要とされるトレーニング
民間職員についての登録簿のいずれかに参加するには、トレーニングは要求されない。 しかしながら、基本的な派遣前のトレーニングは、特定の任務のためにスタッフを雇用するすべての組織にとって、必要であり、準備されている。すでに概説したように、 それは、一般的な新人募集または評価過程の部分か、あるいは特定の活動のために人を雇用するに当たって準備されたものの、いずれかである。

派遣前トレーニングは一般に、週末1回から2週間の間(「ドイツ市民平和活動」では2週間から4カ月の間)続けられ、その組織の目的と使命、意志決定機構、および紛争転換、人権などさまざまな問題に関する序論について熟知させることを目的としている。 いくつかの組織では、この基礎訓練に続けて、配備される国における派遣団特有のトレーニングや状況説明がおこなわれる。

たとえば、「ドイツ市民平和活動」に参加するいくつかの開発サービスの場合のように、1人だけが特定の任務に派遣される場合、トレーニングは雇用された人に対する特定の必要条件に合わせた別誂えになるかもしれない。 トレーニングに関するさらなる状況については他の章で取り扱われる。

4.3.6 チームのメンバーと家族のための支援
この問題に関する情報を入手するのは容易ではなかった。 平和関連の活動のための業務記述書に概説される状況の大部分は、カウンセリングと再定住計画の有効性について言及しているのだが、面接した人々は実際の状況について十分な知識を持っていなかった。何人かの帰国したボランティアは、アドバイスやカウンセリングを求める可能性があることに言及はしたが、これらのサービスを一度も利用していなかった。

大部分の組織が、同じような経験をした人々の話と考えを交換し、体験や感じおよび考え方について話し合うことを目的とした、帰国したボランティアの集会ミーティングによって、再定住 の支援を提供している。

派遣スタッフの家族に対する支援に関しては、さらに少ない情報しか得られなかった。 しかしながら、国連は、派遣スタッフが扶養家族を任地に帯同することは思いとどまらせていることを強調し、家族に対する設備は何も設けないし、どんな保険や諸手当にも家族を含めていない、と言明している。UNVは国連とは違っており、現地に職員を配備している機関の中で、扶養家族のために良好な設備をしているごくわずかな機関の1つである。

VSOは、ボランティアとその家族に対して気遣いと支援の取り組みをする良いモデルを提供する。VSOは、すべてのボランティアに対して現地への出発の前に転地コースへの準備を用意し、派遣地にいる間は通例の状況説明とトレーニング・コースを提供し、帰国した時には帰国ボランティア・サービスを運営している。それは、再定住パック、職業相談、帰国したボランティアのための週末の集まり、帰国後の報告を聞く集会、および地元グループの支援ネットワークを含んでいる。配偶者と扶養家族も、環境の変化にうまく対応するための支援とトレーニングを受けられるし、障害を持つボランティアのための良好な設備も得られる。計画職員は、定期的に現地ですべてのボランティアに会い、彼らがどのようにしているかをチェックし、影にいる家族への状況報告サービスを提供している。

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