声明


昨年一月二四日,東京都による強制排除の際逮捕され,威力業務妨害罪で起訴されて いた笠井・本田両君に,三月六日,東京地裁が無罪判決を言い渡した. 我々は,この裁判で,野宿を余儀なくされる我々の声を聞かず,「動く歩道」建設を 決定し,我々を強制排除した東京都こそが裁かれるべきであると主張してきた.

判決は,

と述べている.我々はこれを,我々の主張が全面的に認められたものとして評価する ものである.また,一・二四のみならず,九四年二月一七日の強制撤去についても, 東京都の過ちが指摘されたものと考える.

野宿労働者・ダンボールハウスなどに言及せず,東京都の環境整備工時を妨害したと 起訴し,一・二四の行為は強制排除ではなかったなどと主張してきた検察は,地裁の 判決に従い,控訴を断念すべきである.

我々は,労働条件の悪い,時には,暴力支配のまかり通る飯場に入ることや,「しの ぎ」と呼ばれる,一日のメシ代にはなってもアパートを借りることさえできない労働 に就くことを日々余儀なくされている.であるからこそ,東京都の暴挙に抵抗したの である.一・二四は止むに止まれぬ闘いであった.抵抗の声すらあげることができず に死んでいったなかまの無念を胸に,野宿労働者の闘いは確実に前進している.

この冬,新宿では,九人ものなかまが亡くなった.飯場から出てきたなかま,家族・ 地域から排除され,西口地下に逃れてきたなかま,病院や福祉事務所の度重なる杜撰 で差別的対応に絶望していたなかまたちである.渋谷のなかまは,頻繁に若者に襲撃 されている.我々は団結を強めてこれに対応していく.

東京地裁で判決公判が開かれているその最中に,東京都建設局はまたぞろ「西口地下 の全面清掃を行う」との通告を貼り出した.青島都知事は無罪判決を「意外に思った 」と語り,土屋都建設局長は「今後も西口の正常化に努めたい」と強制排除を繰り返 す旨の発言をしている.東京都・建設局のなすべきは,西口地下に来て「撤去なんか いつでもできる」と暴言を吐くことではなく,判決を真摯に受け止め,労働経済・福 祉・衛生局,新宿区などと連携をとり,抜本的対策を立てることであろう.地元住民 の求めているのも,排除ではなく,行政の野宿労働者に対する有効な施策である.東 京都は野宿労働者の生活,就労保障を行うべきである.

未来は,笠井・本田両君を,次々と罪名を変えてまで無理矢理控訴した検察・新宿署 に握られているのではない.それは,困難な状況の中にありながら,メシを分け合い ,互いの生活を支え合う我々の手中にある.

一九九七年三月六日

新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議

(新宿連絡会)