全国のこころあるみなさんへ、いま、東京・新宿を中心に起きていることを お伝えするとともに、ご支援を訴えさせてください。
一九九六年一月二四日、新宿駅西口と都庁を結ぶ通りの一部にある地下道 (四号街路) で、東京都はそこに暮らす人々を強制的に追い出して 「動く歩道」建設工事をはじめました。そしてその直前から、新宿を めぐる野宿労働者の運動にこれまでにない弾圧がかけられ、一月だけで すでに八人の仲間を逮捕し、一人以外に、依然勾留を続けています。 この呼びかけは、この東京都による非道な弾圧をかけられた仲間を奪還し、 これに抗してさらに運動を前進させるためのものです。
その地下道には都庁が完成する九一年より前から、何人もの「ホームレス」と 呼ばれる状態にある人たちが段ボールでの仮の家をこさえて寒さや人目を 避け、暮らしと呼ぶにはあまりにも辛い生活を続けていました。 二年前の九四年二月一七日、東京都はそのころ急激に増えた段ボールハウスを 四号街路一帯から一斉撤去し、三〇〇人を越えるといわれた野宿生活の人々は 一挙に生活の拠点を奪われたのでした。しかしそれにもかかわらず新宿駅周辺 では四号街路を中心に野宿する人々は増え続け、昨年には八〇〇人を越える ことさえあったほどです。もとより、野宿生活者には孤立させられた人が 多いなかにあって、新宿では部分的に仲間同士のつながりが生まれたりも していました。そして都による一斉の追い出しののち、この二年のあいだ 新宿で野宿しながら仕事をみつけたり食べ物を探したりしてきた人たちは、 仲間同士のつながりを大きく育み、困ったことを解決したり一緒に考えたり する形をつくってきました。
そうした元からあった野宿の仲間同士のつながり、助けあいを発展させるのに 大きな役割を担ったのが「新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める 連絡会議 (新宿連絡会)」の働きです。新宿の野宿労働者の自主的な集まりである 「新宿仲間の会」を軸としながら、山谷や渋谷・原宿で野宿労働者問題に かかわった人たちが集まってつくられた「新宿連絡会」は、この二年間、 幾多の困難な課題に直面しながらも、新宿に新しいコミュニティーを 形成してきたといえます。その「新宿連絡会」のメンバーばかりを次々と、 闘争の渦中、指名逮捕というあまりにも露骨なやり方で逮捕していったことは、 いま東京都による追い出しだけではない「運動つぶし」が仕組まれたと いうほかありません。
今回、東京都による段ボールハウス強制撤去にむけた一月一三日の「最終通告」 の際、地下通路でスクラムを組みこれを阻止しようとした五〇人以上の中から 三人の仲間。そして二四日の着工時にはやはり腕を組んで段ボールハウス長屋の 一角に座り込んだ二〇〇人の中から三人の仲間。その直後新宿署前に抗議に 向かったデモの先頭にいた一人の仲間、さらには一月二六日朝、西口地下で 抗議の行進をしていた一五〇人の中から一人の仲間、これらをいずれも 「公務執行妨害」「東京都公安条例違反」と称して、引きはがして 連れさっていきました。一三日に逮捕された一人は警察官の暴行により 肋骨二本を折られ、肺に穴があく重症を負ったため釈放されましたが、 その暴行の責任は依然追及されています。
全国のみなさん!どうかこの事態をみなさんなりにとらえ、非情・非道な 東京都に対してともに反撃していく輪に加わってください。捕われた仲間たちを 奪還し、相変らず野宿を強いられ続ける仲間の命を守りながらその団結をさらに 打ち固め、そして社会的にこの闘いを支える基盤を強めていくために、 皆さんからのご支援をお願いします。
一九九六年一月二六日