東京都は,新宿西口の 4 号街路 (新宿駅から都庁に向かう 2 本の地下通路) に今年度中にも「動く歩道」を設置する計画だと言います.私たちは,以下に 述べる論点から東京都に対し,工事計画の凍結と見直しを求めます.
(1)「動く歩道」は本来,世界都市博覧会で使用したものを都市博終了後,新宿に 移設する予定であったと言います.そこには新宿に「動く歩道」が必要かとい う視点よりも,「一度作ったのだから新宿に持ってこよう」という安易な発想 が見受けられますが,都市博が中止になった以上,「動く歩道」もいったん計 画を凍結して,改めてその必要性を討議する必要があると考えられます.都市 博中止の背景には,バブル経済時代の社会の浪費思考を考え直そうという世論 がありましたが,約 12 億円の予算が必要とされる「動く歩道」設置計画もそ の見直しの対象からはずされるべきではありません.
(2)工事区域の 4 号街路には,少なくとも百人以上の人々が路上での生活を送っ ています.私たちはこの工事に伴い,これらいわゆる「ダンボールハウス」の 住民たちが一方的に居住地からの立ち退きを迫られることを非常に憂慮してい ます.国連人権委員会は 1993 年の「強制立ち退きに関する決議」(1993/77号) で,強制立ち退き行為がホームレス状態を悪化させることを指摘し,「強制立 ち退き行為は人権なかんずく適切な住宅への権利に対する重大な違反である」 ことを明言しています.都が住民との話し合いを拒否して一方的に工事を進め るならば,それは国連人権委員会の決議ばかりでなく,来年の「国際居住年」 の理念にも反することになるでしょう.その意味でも拙速な工事強行は避ける べきであると私たちは考えます.
(3)都は「福祉のまちづくり」を推進していますが,「動く歩道」が果たして高齢 者,障害者の役に立つのかという点については議論が分かれるところです. また現在,新宿駅から都庁に向けては都営バスが運行しているほか,地下鉄 12 号線の開通に伴って都庁近くに新駅ができる予定もあり,「動く歩道」の 必要性はこうした点も考慮に入れ,総合的に討議されなければならないでしょ う.しかし現状では,これらの点についての議論は都民の間では全く熟してお らず,都庁内で議論が行なわれているとしても,それは都民に公開されていま せん.
以上の観点から私たちは都に対し,以下のことを求めます.
以上.