申し入れ書


新宿区福祉事務所長殿

2 月 7 日早朝,新宿駅西口地下広場で火災が発生し,結果的に 4 名の尊い生命が奪わ れた.我々は火災発生直後から行政に対し被災者への緊急支援策を求めたが,貴福祉 事務所及び東京都福祉局はこの事態に即応し,2 月 7 日から 10 日に被災者 98 人の越冬施設「なぎさ寮」への緊急入寮,13 日,14 日には街頭相談の実 施と西口地下広場居住者 74 人の同寮への緊急入寮など,迅速かつ人道的見地 からの対応を行なった.

「なぎさ寮」への緊急入寮は短期の宿泊で終わるものではなく,4 月以降に開設さ れる自立支援センターへの入所へとつながっていくものであり,我々は今回の措置を 現行の「路上生活者対策」では考えられる最良のものであると評価している.今回の 火災に伴う緊急措置をこのような当事者の利益にかなった方向での施策にしていただ いた貴所及び都福祉局の努力に対し,我々は西口地下広場で居住していた者を代表し て,まず感謝の意を述べたい.

しかしながら自立支援センターの区内複数箇所の設置に関しては,まだまだ紆余曲 折が予想され,「なぎさ寮」入寮者は設置予定地の地元の動きを伝える新聞報道に一 喜一憂せざるをえない状況にある.貴所におかれてはセンターの早期設置に向けた努 力をすでにされていることと思うが,今後とも関係諸機関との連携を密にしていただ き,今回の緊急措置で入寮した者のうち希望者全員がセンターへそろって入所できる よう,より一層の努力をお願いしたい.一刻も早くセンター開設のめどが立ち,入寮 者の不安が晴れる日を我々は切に待ち望んでいる.

また我々は今回の被災者対策・西口対策がその対象となるすべての野宿者をカ バーすることを望んでいる.貴所は 7 日の火災以前に「なぎさ寮」に通常の 短期宿泊の枠で入寮していた者に対し 2 週間の期間延長の手続きを取ったが, これらの人の中には西口地下広場に居住していて,帰る場所がなくなった者も 多数含まれている.また今回の措置は緊急であったがゆえに,野宿者の間に若 干の情報の混乱があった.2 月 9 日と 13 日には通常の短期宿泊の枠で「な ぎさ寮」に入寮した者も少なからずいたが,この中には火事で被災していた者, 西口地下広場に居住していた者も含まれていたことがすでに判明している.施 策の整合性から言えば,「なぎさ寮」入寮の入口が通常の短期宿泊の枠であっ ても,今回の被災者対策・西口対策の対象となるべき者であるのであれば,希 望者は自立支援センターへ入所できるようにするのが筋であろう.貴所におか れてはこの問題に関して,都福祉局など関係諸機関との協議を早急に行なって いただきたい.処遇の確定に時間がかかるようであれば,それまでの間,当面, 「なぎさ寮」での宿泊の再延長/延長で対応していただくよう強く要望する.

火災という不幸な出来事が契機になったとは言え,新宿区と東京都が足並みをそろ えて自立支援センター設置に向けて動き出したことを我々は歓迎したい.そして新宿 駅西口地下広場の居住者を対象として始まった対策がそこだけにとどまらず,区内約 六百人,都内約三千数百人の野宿者の利益にかなうものになっていくことを我々は期 待している.そのためにも自立支援センターの本格的な実施に向けた都と 23 区による 事業推進の枠組みの再建は急務であるし,そのイニシアティブを貴所と都福祉局にと っていただきたい.そして今後の対策が,対策の対象となるべき野宿者・入寮者との 建設的な話し合いに基づいて,現実の当事者の利益にかなう形で発展していくことを 我々は切に望んでいる.今回の緊急事態における迅速かつ人道的な対応が今後の対策 の基本姿勢になっていくのであれば,我々も協力は惜しまないつもりである.

以上
1998 年 2 月 19 日

新宿野宿労働者の生活・就労保障を求める連絡会議
(新宿連絡会)
なぎさ寮入寮者有志