【資料】
2005年世界社会フォーラム・ポルトアレグレ・NO-VOXネットワーク宣言
訳:稲葉奈々子(茨城大学)
NO-VOXネットワークにより5大陸から集結した「持たざる者」の運動は、ポルトアレグレで開催された第5回世界社会フォーラムに参加した。この私たちの運動は、MNLM(ブラジルの住宅への権利運動)のホームレス家族による、連邦州の厚生省が所有し5年にわたって空き家となっているポルトアレグレ市中心部のボルヘス・デ・メデイロス通りの建物の占拠を支持した。NO-VOXネットワークは、この建物を占拠している者たちがそこに留まり続けることができるようにし、この建物に真に社会的な機能を担わせ、不動産投機の目的に資することがないよう、ブラジル政府に切に要請する。
NO-VOXネットワークは、今後は新しい運動、とくにNCDHR(ダリット人権全国キャンペーン)を加えて充実し、今回の世界社会フォーラムでは、多くの人が参加できるようにしようという、社会的な包摂の意志が明確に現れたことを確認したが、そうした取り組みがさらに強化されねばならないことも確認された。たとえば、部屋や通訳機材を使用できるように支援を集めること、また「持たざる者」の運動が、気まぐれな資金提供者(フォード財団ような世界社会フォーラムの支援者)に左右されることなく、そのような資金提供者の目論見や意図どおりにならないように、資金提供者を逆にこちらの目的のために使うことができるようにすることが必要である。
世界規模での「持たざる者」の運動が出現するためには、現場での闘いからなる運動を水平に結びつける共闘組織が必要である。これはオルタナティブを形成し、もうひとつの世界を構築するために欠かすことができない。
NO-VOXネットワークは、数年以内に「持たざる者」の世界行進を行なうことを呼びかけ、「もうひとつの世界主義」の運動に参加するすべての人によってこの試みが支持されることを呼びかける。
NO-VOXネットワークは2006年の3つの地域開催フォーラムが、この目的を優先的に扱うこと、そしてこのプロジェクトを実現可能にすることを希望する。そのために2005年のうちに、ネットワークに参加するさまざまな運動とその支援者が出会うはじめの一歩となるような会合を持ちたい。
NO-VOXの紹介
NO-VOXネットワークは2003年1月にポルトアレグレで「持たざる者」の運動、つまり、世界中の新自由主義モデルの犠牲者、その主要な被害者によって、つくられた。(経済戦争、内戦、新植民地主義的戦争、自然災害、産業が引き起こした災害、生産と利潤のために引き起こされた異常気象、伝染病、基金、支配的な国家による資源の略奪、貧しい人々の食糧の自給自足や経済の破壊、カースト制、あらゆる形態の人種主義、差別…)
貧しい者に対する、隠蔽されているが確実に死をもたらす世界戦争を私たちは糾弾する。私たちは、イラク戦争、パレスチナ、チェチェン、チベットに対する戦争、経済戦争などあらゆる戦争を糾弾する。
私たちは社会フォーラムが、私たちの運動が、闘いの実践、勝ち取ったもの、失ったものについて交流し、私たちの抵抗、フォーラムに参加している運動についての私たちの見解を広く知らしめ、持たざる者の声が聞かれるように、直接的で具体的な行動を行なう場となることを希望する。
私たちはそのようにして、もうひとつの世界を求める運動のさまざまな構成員に支持された「持たざる者」の世界規模での運動を構築し、共有できるアイデンティティを形成することに貢献したい。というのは私たちは同じ苦役船に乗船しており、世界中で抑圧されている者たちが立ち上がることなくして、もうひとつの世界は可能にはならないからである。
私たちを野垂れ死にさせる者たち、それが戦争を始める者たちであり、私たちを搾取する者たちであり、私たちの貧しさの上で腹を肥やしている者であるが、これらの人々にとっては、私たちはていのいい同情の対象であり、潜在的危険でもあり、さらには飽くことのない彼らの欲望をかなえる上でのじゃまものである。彼らはあらゆる生きとし生けるものを商品化し、遺伝子や生命の根幹を操作し、さらに金を稼ごうとしている。彼らはあらゆる文化や人間の知的創造を管理しようとする。彼らは水、児湯行く、健康、発電といった人間の生活に欠かせない財を商業化し、福祉予算を貧しいものにし、貧困国に借金を負わせ、NAFTAやEUのような市場を創設し、社会保障システムを切り崩し、労働者の権利を守るための規制を緩和し、大量消費、競争原理、個人主義に私たちを服従させようとし、差別を増幅し、カースト制を保護している。
食べるために、住宅のために、耕す土地のために、仕事を得るために、尊厳をもって生きることができるような収入を得るために、教育のために、飲み水のために、きれいな空気のために、医療サービスのために、健康のために、再生可能なエネルギーのために、私たちの文化と信条を守るために、創造し、抵抗するために、権利の平等のために、女性、先住民、黒人、ダリット、子ども、若者、文化的・性的・宗教的マイノリティを抑圧するような複合的で複数の差別に反対するために、尊厳をもって、正義と平和がある社会で生きる権利のために、私たちは日々闘い続ける。
この闘いは、日々の闘いであるが、私たちは世界全体でこの運動を組織することを決意し、とくに社会フォーラムの場で、もうひとつの世界を求める抵抗運動と革新派のミドルクラスの運動と手を結んで、取り組むこととした。しかし、持たざる者、つまり貧困、社会的に不安定な地位、抑圧のなかで生きている地球の半分の人々の参加なくしては、「もうひとつの世界は可能」ではない。
NO-VOXは、2002年と2003年にポルトアレグレでホームレスによって行なわれた、放置された用地と建物の占拠の延長線上、2004年のムンバイでの世界社会フォーラムにおけるNCDHR(ダリット人権全国キャンペーン)の行進の続き、同様に大陸別社会フォーラム、とりわけパリのサンドニで開催されたヨーロッパ社会フォーラム、シアトル、ジェノヴァ、ラルザック、ソウル、カンクンにおける新自由主義的な抑圧に反対するデモの連続線上に位置づけられる。
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【以下、宣言に添付された手紙】
仲間たちへ、
時間がたってしまいましたが、NCDHR、NO-VOX Japan、MNLM、MOHHBの仲間たちに、NO-VOXネットワーク宣言(案)と行動への呼びかけを送ります。訂正があればご指摘ください。この宣言はインターネットで広める予定です。
ポルトアレグレで私たち(No Voxネットワーク)は、2005年のうちに行動を起こすことを計画しました。(世界行進、次の社会フォーラム、ネットワークの拡大、コミュニケーションの手段)
フランスのNo Voxネットワーク内での議論ののちに、3〜4日の集会を開催することが可能であるという結論に達しました。場所をみつけて、宿泊場所を確保し、通訳機器を調達が可能です。私たちは7月1日から4日、あるいは9月を考えていますが、ご提案はありますか?
資金について。一方、私たちだけでは必要な旅費の資金調達をすることができません。代表を送るためには自分たちで資金を調達し、場合によっては他の運動に手を差し伸べることも必要です。
できるだけはやくご意見お待ちしています。
戦いの成功のために
ジャン・バティスト・エロー