南京大虐殺遇難同胞記念館の朱成山館長の公開抗議書
公開抗議書
日本国愛知県名古屋市長 河村隆之先生:
私は侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館、侵華日軍南京大屠殺史研究会、南京大屠殺幸存者援助協会、南京社会科学院国際和平研究所を代表し、あなたが公職の身でありながら、一度ならずも、二度、三度となく公然と南京大虐殺という歴史事実を否認することに強烈な抗議を表します。
報道によると、あなたは名古屋市長として、自身の父親の戦時体験に関わる伝言を基に、数度にわたって南京大虐殺の歴史を否認しています。これは余りにも荒唐無稽と言わざるを得ません。周知の如く、中国侵略日本軍は中国人民に対し、数々の凄まじい罪行を働いています。特に南京大虐殺における罪状は重大です。
侵略加害者の後代として、かつて父親世代が参加した侵略戦争と、戦後南京人民が示した寛大な処置に対し、それを恩義として心に留め、父親世代を代表し、加害地の民衆に対し真摯な謝罪を行うのが理の当然であるにも関わらず、あなた却ってこのような振る舞いに出ています。開いた口が塞がらないとはこのことでしょう!
長年来、南京市は日本を含めた世界各地で南京大虐殺に関する証言や、物証、歴史文書(文字や映像)といった資料を収集、保存してきました。そして南京大虐殺という歴史事実の存在を明確に、客観的に説明してきました。戦後、極東軍事法廷と同盟国南京審判軍事法廷において、A級、B級及びC級戦犯の審議過程において、ことごとく南京大虐殺の調査と認定を行い、南京大虐殺に対し歴史的定論と認定を行ってきています。既にかなりの時間が経過しているとは言え、今となって否認も抹殺も許されないものです。これから千年が経とうとも、南京大虐殺は継承され続け、歴史書の一ページに記載され続けると、私は固く信じてやみません。
中日両国の南京大虐殺に関する歴史研究は、早くも前世紀の八〇年代から始まっています。日本の歴史学者洞富雄、藤原彰、吉田裕等多くの学者が何度となく南京を訪れ、実地の調査研究を行い、中国側学者と学術交流と研究、討論を行ってきました。加えて何度となく数十名を越える日本の教授、学者が参加する南京大虐殺史国際学術シンポジウムを開催してきました。特に近年来は中日双方の歴史問題の研究において、南京大虐殺史はその中でも中心的課題の一つとなっています。市長先生は何故にこのような実態を無視し、いまだ研究が為されていない等という戯言を垂れ流すのでしょうか?私が強調したいのは、学術討論であれ、合同研究であれ、そこには前提と基礎が必要であると言うことです。それは充分に歴史事実を尊重し、理性的であるべきで、個人の主観や憶測、感情的な好き嫌いによって恣意的な歪曲や否認、抹殺を行うべきではないのです。
南京人民は平和を熱愛しています。それは戦争が血なまぐさい流血と破壊をもたらすことを身をもって知っているからです。南京大虐殺という歴史遺訓は必ずや心に留めなければなりません。しかし、歴史を銘記することは怨恨を引きずることではありません。平和と友好は歴史事実を尊重すること、そして市民同士が心と心を通わせた真摯な交流を基礎にしてうち立てられるものです。ましてや南京市と名古屋市は友好姉妹都市として、両市の長年の努力によって作られた友好協力関係を慈しむべきではないでしょうか。
市長が発表した無責任な発言によって、多くの人々、特に若い世代に人々の正確な歴史認識に影響を及ぼすことになるでしょう。
同時に、歴史事実を尊重せず、今なおご健在の南京大虐殺生存者及び遺族に対し尊重しないというあなたの姿を映しだし、さらにかつて日本の侵略と加害を被った南京市民の目に、あなたの友好を望まないと言う姿勢を映し出すことになったのです。
侵華日軍南京大屠殺遇難同胞?念館館長
侵華日軍南京大屠殺史研究 会長 朱成山研究員
南京社会科学院国際和平研究所所長
2012年2月21日
(参考)22日の南京市の主要新聞(「揚子晩報」「金陵晨報」「現代快報」)全てに名古屋市河村隆之市長の発言とそれに対する抗議書が掲載されています。