内閣総理大臣  小 泉 純一郎 様
経済産業省大臣 中 川 昭 一 様

日本キリスト教協議会(NCC)

チェルノブイリ災害問題プロジェクト委員会

                              委員長 坂内 義子

日本の原子力行政についての要望書

 

 日頃より多岐にわたる国政へのご尽力に対して尊敬と感謝を申しあげます。

さて、今夏は東京電力の相次ぐ不祥事・事故隠しによって、一時すべての原発をストップする事態を生じましたが、冷夏であったことと、企業・民間人の節電、他からの電力供給援助を仰ぐ事によって、無事に乗り切る事ができ、総理および関係大臣としても安堵されたことと存じます。しかし、今回問題となった「隠されたトラブルの諸原因」について、完全な点検・修理が為されたわけではなく,責任の所在さえはっきりなされぬまま、なし崩し的に運転が再開されたことを、大変遺憾に思います。又、耐用年数を過ぎた原発をだましだまし稼動させているという事実に対して非常な危惧を覚えざるを得ません。

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、私どもは、今なおその被害に苦しむ人々の援助活動を10数年に亘って関わり続けています。

 いのち・自然環境を大切にするという視点で、わが国の原子力政策についてぜひご一考くださることを私どもは希望致します。以下の4点についてぜひご検討頂けると幸いです。

 

  1. 電力・太陽熱・波力などの代替エネルギーによる電力システムを推進してください。
    • 原子力発電は、「クリーンなエネルギー」であると喧伝されてきましたが、そういった地球温暖化に関する議論には、原子力発電所から出る放射能汚染を考慮にいれていません。チェルノブイリの大災害を挙げるまでもなく、原子力発電は、国内に大小の核災害を次々と生じさせており、放射能による人体への被曝と環境汚染は、深刻です。
    •  又、原子力発電所から生ずる核のゴミは、半永久的に地上に残り、核のゴミ問題が解決できていないまま、原子力エネルギーに依存する今の日本は危険です。
  2. プルサーマル計画も中止の方向で検討してください。
    • 普通の原子力発電所さへ危険であるのに、プルトニウムの濃度の高いプルサーマル原発では、プルトニウムが分裂して出す中性子の出す速さはウランの250倍にもなり、安定性をたもつのが難しく大事故になる可能性がより高くなります。安全性、経済性、核不拡散の面からプルサーマル計画を中止し、核燃料サイクル計画を撤退してください。
  3. 原子力施設撤退後の施策を研究し、予算化を進めて下さい。
    • 「チェルノブイリ4号炉」ひとつを廃炉とするだけでも多くの国からの資金援助を必要としました。わが国の52基もの原子力発電所、及び関連施設もいずれは無くしていかねばならず、政府は今から莫大な経費と年月を要する事を考慮に入れてください。
  4. 情報公開を保障する独立機関を機能させてください。
    • 原子力規制の体制は、事故隠しに加担した原子力安全・保安員の人数を増やすことでは問題解決になりません。いのち・環境をまもることが、経済発展・企業の収益などより遥かに大切であると考える人材を監視役として登用してください。
2003年10月23日

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