内閣総理大臣 小泉純一郎 様

自衛隊のイラク派遣基本計画撤回を求めます!

 

私たちは、半世紀前のアジア諸国に対する戦争に協力した責任の一端を負うキリスト者として、日本政府に心から訴えます。自衛隊のイラク派遣をやめてください。

「国際貢献」の名の下に、米国によるイラクへのまったく不当な侵略戦争に協力することは、愚かなことです。小泉首相は、「日米同盟と国際協調が日本外交の基本だ」と言われましたが、米国が日米同盟に要求する軍事協力は、国際協調とは対極にあります。米国は、突出した軍事的経済的な力を背景に単独行動主義を推し進め、アフガニスタン、イラクへの軍事侵攻を行ってきました。

イラクへの自衛隊派遣に関する小泉首相の説明がまったく説得力をもたないのは、暴力をふりかざす米国にぴったり服従することを至上命題としているからです。「国際協調」や「復興支援」という言葉をちりばめようとも、米国の無差別攻撃の犠牲者の嘆きを、覆い隠すことはできません。米国がイラクで行っていることは、他国への侵略です。

イラクの復興を、イラクの人々自身が成し遂げることができるように国際社会は、軍隊によらない支援をすべきです。

米国がすべきことは、撤退と、侵略の謝罪及び補償です。

日本は、これまで被爆国でありながら「報復」を語らず、平和憲法を掲げて経済協力を進めてきました。日本は戦争からの復興国として、アジア・中東の人々の信頼を得てきたのです。このことはアジア・中東で地道な協力を続けてきたNGOや民間人の顔の見える関係づくりが大きな役割を果たし、信頼を築いてきたのです。現状の米国に追従することは、すなわち、日本国憲法前文と、憲法9条にうたわれた平和主義と国際協調主義を放棄し、この信頼を裏切ることになります。

今、イラクに自衛隊を派遣することは、日本人を米国と一体化した占領軍として表すことを意味します。イラク全土を、米軍への敵意と軍事的不安が覆っている現在、陸海空のどの部隊であれ、自衛隊を派遣することは、これまで憲法9条に守られてきた自衛隊員の生命を、あえて危険にさらすことに他なりません。米国にほめられるためには自衛隊員の命を犠牲にすることも辞さない、というのが、実は、小泉首相をはじめ、政府の意図なのではないかという印象さえ受けます。自衛隊員一人一人が、日本国憲法に保護された個人であり、国は、この個人の生命を守る責任と義務を負わねばなりません。

また同時に、重火器を傾向した軍隊としての自衛隊を派遣することは、自衛隊員を、イラクの人々を殺す立場に追いやることになります。殺されないためには殺さなければならないという危機的状況が常態としての戦争、ゲリラ的なテロ攻撃が予測される外国の現場に、日本は、武装自衛隊を派遣してはならないのです。

今、小泉政権がイラク派遣基本計画を実施すれば、これまで日本がアジアや中東の人々の中に築いてきた「平和国家」としての信頼を瓦解させ、憎しみを醸成し、報復の連鎖と泥沼に日本をも引きずりこむことになります。

私たちは、今こそ、米国のよい友として、真の国際協調の道を示すべきです。求められているのは、自衛隊派遣ではなく、米国と他国軍隊のイラクからの撤退であり、疲弊した人々の暮らしを立て直すための雇用など経済的な支援です。民間人、NGOが、敵意の中でではなく、友好的な関係の中で働くことができるよう、日本ができることは少なくありません。今すぐに、イラクへの自衛隊派遣基本計画を撤回してください。

私たちキリスト者は、クリスマスを待つこの時期、泊まる場所を得ることもできず、また、生まれたばかりの赤ん坊を抱えて迫害から逃れなければならなかった難民の苦しみを、思います。紛争や暴力の中で、ひとりのちいさな命もないがしろにされてはならないという神の慰めと愛のメッセージに希望を見ています。イラクの子どもたちも、日本の子どもたちも、軍隊の犠牲にされてはなりません。また、ちいさな命を奪う立場に、日本の自衛隊員を、押しやらないでください。

 

2003年12月13日待降節

                日本キリスト教協議会総幹事

                      山本俊正

日本キリスト教協議会平和・核問題委員会

                    委員長 小笠原公子

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