東京都知事 石原慎太郎 様
石原慎太郎東京都知事の「韓国併合」発言に抗議いたします。
石原慎太郎東京都知事は、10月28日夜、拉致被害者の集会で「(日本の韓国併合は)武力で侵犯したんじゃない」「どちらかといえば彼らの先祖の責任」「植民地主義といっても、もっとも進んでいて、人間的だった」などと発言しました。また31日定例記者会見では、「(韓国併合を)国際連盟でも誰も誹謗中傷するものはいなかった」と述べ、欧米諸国がアジア植民地で残虐な統治をしたと言い、「これに比べれば日本の植民地支配は、まだ人道的、人間的だったと思う」とも発言しています。
これらの発言は、歴史的事実に反しています。日本の朝鮮半島併合は、当時の軍事的・経済的な力関係の下で強要したものであり、対等な立場で結ばれた条約によるものではありません。また、朝鮮(当時)の土地を奪い、日本語使用を強制し、名前を日本名に変えさせたことは、民族の誇りを奪うものであり、決して人道的、人間的なものとは言えません。石原都知事は過去にも、関東大震災の時の朝鮮人虐殺をめぐり歴史的に誤った発言をし、また「三国人」発言で国連人種差別撤廃委員会から注意をうけるなど、問題発言を繰り返しています。東京都知事という、全国にも影響をもつ大都市の首長の発言は、国内では社会に排外主義と差別意識を引き起こし、国際的には近隣諸国との関係を悪化させています。
かつての植民地支配に際し、朝鮮半島では強い抗日運動が繰り広げられ、多くの人が投獄され、拷問され、殺されました。中でもキリスト者は、植民地支配が正義に反するとして、信仰に立って抗日運動の先頭に立ち、命がけで抵抗しました。なかでも、キリスト教信仰に反する神社参拝強要は、キリスト者の認めることの出来ないものでした。今、私たちが出会う大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国のキリスト者の中には、両親や祖父母が、抗日運動で命を落としたり傷ついたりした人が多くいます。その人たちが、日本人である私たちを許し、共生への道を求めて歩み続けてくれるのは、この数十年の間に日本のキリスト教各教派が植民地支配の罪を認め謝罪する文書を発表し、キリスト者がふたたび同じ罪を繰り返すまいと努力していることを認めているためです。
誤ちを認め、謝罪することは決して恥ずべきことではなく、それによって名誉が傷つくことでもありません。いったん犯した過ちを償うことはできませんが、その過ちを率直に認め謝罪することは、人間に許された品位ある行為であり、そこから許しと和解への新しい道が与えられます。
私たちは、日本が近隣諸国に対し同じ過ちを二度と繰り返さないためにも、また日本と朝鮮半島との平和と和解への第一歩を歩みだすためにも、石原都知事が、歴史の事実を認め、この度の発言を取り消し謝罪することを求めます。
2003年11月19日
日本キリスト教協議会
議 長 鈴木伶子
総幹事 山本俊正