内閣総理大臣
小泉純一郎様
靖国神社参拝に抗議する声明
4月21日、小泉首相が春の例大祭中の靖国神社に参拝したことにつき、私たち、平和を求めるキリスト者は、この参拝が平和主義に反し政教分離原則を侵したことで強く抗議し、再びこのような参拝をしないよう要望します。
靖国神社は、かつての侵略戦争の過程で、天皇のために死ねば靖国に祀ると言われて死んでいった人々と共に、戦争遂行責任者である戦争犯罪人をも神として祀るものです。敗戦後の日本は、国家神道と軍国主義の結合の下に侵略戦争が行われたことを深く反省し、再び同じ過ちを繰り返さないという決意の下に、戦争放棄と政教分離の原則を憲法に規定しました。首相の靖国神社参拝は、過去の戦争を肯定し軍国主義を進める役割を果たし、政教分離の原則を犯したという点で、二重に憲法に違反する行為です。
小泉内閣は、アフガニスタンでのアメリカの「報復」戦争に自衛隊を派遣し、さらに今国会では戦争法と言われる有事立法を上程し、その急速な軍事化は、平和を求める私たちの願いを踏み躙るものです。過去に日本の戦争によって莫大な被害を受け、再び日本が軍事大国化することを恐れている近隣諸国が懸念するのは当然です。首相の靖国神社参拝は、そのような懸念を裏打ちするものであり、近隣諸国の反発を招き、国際関係が悪化することは避けられません。「いつ」参拝するかという問題ではありません。
世界各地で続く紛争やテロの連鎖は、軍事力によっては決して平和を達成できないことを明らかに示しています。今、世界で求められているのは、国籍や民族など全ての違いを超えて、一人ひとりの命をかけがえのないものとして大事にする、平和と公正だと考えます。日本が国際社会で名誉ある地位を占めるためには、過去の戦争の過ちを心から謝罪し、憲法9条の精神に立ち、外交努力や経済支援を通して、平和で公正な社会を築いていくことが肝要です。
首相が、軍国主義のシンボルである靖国神社に参拝したことを、国民と近隣諸国に対して詫び、憲法の精神に立って、世界の和解と平和のために働くよう要望します。
2002年4月23日
日本キリスト教協議会 議 長 鈴木伶子
総幹事 大津健一