文部科学大臣 遠山敦子様
日本キリスト教協議会(NCC)
「障害者」と教会問題委員会
委員長 中村雄介
文部科学省による学校教育施行令等の改悪に反対する
日本のプロテスタント各派代表から構成される、NCC「『障害者』と教会問題委員会」のメンバーである私たちは、今、非常なおどろきと憤りの思いを持っています。
文部科学省が、今年一月に出された「21世紀の特殊教育の在り方についての『調査研究協力者会議』の最終報告」を受け、現在、学校教育法施行令22条の3及びそれに関する政令等の「改正」をすすめているという情報を入手しておりますが、本当なのでしょうか。
それは一部「障害児」の普通学校への入学基準をゆるやかにしており、一見共鳴できるようにみえます。しかし、実際にはいわゆる「手の掛からない」「障害児」を取り込むことで、貴省が「寛容な姿勢」を見せかけようとしているに過ぎないのではと思わされています。その後に「重複障害児」や「医療的ケアの必要な子」「対人関係に問題がある子」などについては普通学校に入ることはあってはならないと続けていることがはっきりと物語っています。いわば「手の掛かる」つまり「お金の掛かる」とみられる「障害児」は、経済効率上排除していきたいとする意図が窺えます。もし、この法改訂が通るならば、地方自治体で対応するべき就学指導のあり方に国が介入することになり、地方分権にも反します。さらにこれから就学する子どもはもちろん、現在、普通学校に通っている「障害児」さえも、現在の学校から他の学校へ転校を求められる可能性があると思います。今回、問題とされている「重複障害児」や「医療的ケアの必要な子」「対人関係に問題がある子」の保護者たちの多くは、こうした子どもたちのより健全な人格成長を望んで、統合教育の実現をめざし普通学校への入学を希望しています。私たちはまた、いわゆる「健常児」が、人間として十全な成長を遂げるためにも、とりわけ「重度の障害児」たちと共に生き・共に育つことは必要不可欠と考えております。それは、私たち人間が生きている社会は、性格的にも能力的にも違いがある者同士が互いに認め合い、補い合って生きることが最もすばらしいという理念を子どもの頃から理解し、知っていて欲しいという希望からです。それにも関わらず、一般的に統合教育のプラス面を評価している世界の教育界の動きに逆行して、私たちの国では知育偏重実力第一主義による弱い者を囲い込み、排除する社会を一層強化しようとしているのでしょうか。
私たちは、私たちの国の将来への希望と期待をつなぐために、「障害」がある者もない者も共に生き合える社会になることを切に願い望んでおります。
このような考えに立ち、現在の文部科学省の政令「改正」の動きに対して、私たちは断固反対の意志を表明し、再考を求めるものであります。
2001年12月11日