内閣総理大臣 小泉純一郎様
外務大臣 田中 真紀子様
米国大統領 ジョージ・ブッシュ様
駐日米国大使 ハワード・ベイカー様 

沖縄への駐留米軍兵士によるレイプ事件に抗議し、米軍の撤退を要求する!

629日、北谷町でおきた、米軍兵士による沖縄の女性強かん事件に対し、底知れない怒りと、悲しみとをもって、私たちは、強く抗議する。女性の人格と尊厳は、幾度このような形で、侵害されなければならないのか。

被害者の女性のショックと悲しみは、本人以外の人の想像を絶するものであろう。繰り返されるこのような犯罪は、これまでの被害者にも、計り知れない痛みを与えるものである。この事件の翌日、小泉首相は、ブッシュ大統領との会見が成功したと自画自賛しているが、「遺憾の意」を表したブッシュ大統領に対して、小泉首相はどんな言葉を語ったのか。首相は戦前戦後と踏みつけられ続け、返還後も、日本への駐留米軍の75%を押付けられてきた沖縄の、どんな声を代弁したというのか。一言でも、沖縄の怒りを、悲しみを、自分の思いと共に伝えたのか。 

 レイプ事件については、すでに95年に、米軍は「綱紀粛正」をすると言っているが、稲峯知事も認めるとおり、何ら実効性がない。今こそ、この有効性のなさとその理由を直視すべきである。

なぜ、「綱紀粛正」が有効でないか? 二律背反の道理を説いても、米軍兵士の心には届かないのではないか。

軍隊の目的は、敵を打ち破ること、倒すこと、破壊すること、殺すことであり、この目的の遂行のためには「敵」を人格的な相手と認めるのではなく、破る対象と規定するのが常であろう。軍隊の戦闘行為が、相手の人間性を否定するところで成り立つとすれば、いくら、「綱紀粛正」しても、駐留地の市民に人格的に接するという、軍隊の目的とは矛盾する課題を達成することは困難であろう。

「綱紀粛正」や「兵士の教育」という言葉だけの空手形を、私たちはもう信用することはできない。むなしい言葉で、被害者が癒されることはない。6歳で強かんされ、悲惨な死をとげた由美子ちゃん、

三人の兵士に強かんされ、勇気を振り絞って彼らを訴えた小学生の女性、数知れない沈黙のレイプ被害者の苦しみの日常を、「日米安保条約」と「地位協定」に守られた米兵は、決して理解しないだろう。

 米軍も、アメリカ政府も、沖縄への駐留という異常な形態事態が、米軍兵士の心をゆがめているということを、認めるべきである。 沖縄駐留の若い米兵たちへの「教育」を可能にするためには、まず兵士の人間性を取り戻さなければならない。沖縄という外国の地で、殺すための訓練を受け続けている若い米兵の心のゆがみを、直視すべきである。

被害者女性の平和な日常は、このレイプによって、破壊されてしまった。

レイプした犯人である米兵は、すべての責任を負うべきである。同時に、歪んだ犯罪者を作ってしまった米軍と米政府は、その責任の重大さを反省すべきである。これがはじめてのケースではない、これまでも、多くの別々の米兵が、別々の犯罪を、沖縄で起こしてきているのだ。兵士個人と、米軍、米政府の責任である。決して、「残念だ」というような次元の問題ではない。

よって、私たちは、米軍の沖縄からの撤退を、憤りと悲しみをもって、強く要求する。

「安全保障」という、強者の力の論理を振りかざし、軍事力の名のもとに、兵士と、その被害者となる人々を破壊することをやめよ。

 これは、アメリカの良心の課題である。

また、日本が、この上さらに民衆の犠牲が増えることを問題とせず、協定と条約の抜本的な改定をしようとせず、軍事力に頼り、米軍への追従を続けるとすれば、民衆は、自国政府に見捨てられた民として、もはや政府への希望も信頼ももち得ないであろう。「軍隊は民衆を守らない」といわれるが、

いまや、「日本政府は民衆を守らない」と、言われても仕方のない時点にまできていることを、日本政府は自覚すべきである。私たちは要求する、政府は、真実をもって、沖縄の民衆と被害者の声を聞き、米軍の、沖縄から、日本からの撤退を、米政府に対して申し入れるべきである。

           200174日 

日本キリスト教協議会

        総幹事 大津 健一

      同平和・核問題委員会

                         委員長 小笠原公子 


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