2001.6.29
内閣総理大臣 小泉純一郎様
日本キリスト教協議会
「 障害者」と教会問題委員会
委員長 中村 雄介
〒169-0051 新宿区西早稲田2-3-18-24
電話03-3203-0372
『刑法』改悪・「特定精神病院」設置の動きに対する私たちの考え
6月8日、無防備な小学校に突然刃物を持った男が無言で侵入し、多数の無抵抗な児童を殺傷した事件ほど、私たちの心を憤りと悲しみにつき落としたことはありませんでした。本当に思いがけなくこの事件に遭遇された方々とそのご家族に対しては、心からの同情を抱くとともに、全く理不尽なこの事件の犯罪に対し、当局が厳正な処置をとることを期待し求めるのは、私たち市民の当然な権利であると考えています。
しかし、あの事件以後の政府及び行政当局の言動は、こうした期待や求める思いとは裏腹に、容疑者の捜査当局を故意に混乱させようとした供述に対して過剰に反応し、小泉首相をはじめ行政当局が「精神障害者」をまるで「犯罪者予備軍」かのように短絡的に理解し、そうした発言をたびたびすることはどうしても納得できないことです。実際の多くの精神障害者は、他人に危害を加えることを思うよりも、自分自身の存在の重さに疲れ悩んでいる場合が多く、彼らの思いの中心問題は自分自身に向けられています。
統計的に見ても、「精神障害者及びそのおそれのある者」の犯罪発生率は、一般的な社会人に比べても、かなり低いことが証明されているにも関わらず、ことさらにその危険性を強調し、「刑法」を改悪し、「特定精神病院」を設けて強制的隔離・入院させようとすることは明らかに差別と偏見を助長し、「精神障害者」の人権を抑圧し、無視することです。つい最近、「ハンセン病患者」に対する長年の不当な人権無視の隔離政策による処遇を公式に謝罪した政府当局者が、いままた同じ過ちをくり返そうとしている愚行を決して見逃すことはできません。
私たち日本キリスト教協議会「障害者」と教会問題委員会は、このような考えをもって、次のように訴えます。
刑法を改悪し、特定精神病院を設けて、精神障害者を強制的に隔離・入院させようとする政策の推進に反対します。
「社会の安全」の名をかりた少数者への人権抑圧政策は、個人の思想・信条を軽視する全体主義への始まりになる危険があります。同じ社会的少数者である私たち「障害者」は断じてこれを認めることが出来ません。