2001年6月1日

 

内閣総理大臣

小泉純一郎様

                          日本キリスト教協議会

                           議 長  鈴木伶子

 

 

 

首相の靖国神社参拝反対の要望

 

 

 小泉首相は、国会の答弁を通して今年の8月15日に戦没者への敬意と感謝を捧げるために靖国神社に参拝すると何度も明言しています。国の政治的機関の長である小泉首相が、靖国神社に参拝することは、たとえ首相が公人と私人の使いわけをされたとしても、またいかなる理由があったとしても、その参拝によって国の内外に与える影響を考えるとき、決して許されるものではありません。

 靖国神社は、明治期天皇家が創設し、天皇のために死んだ人々を「英霊」としてまつり、国家から特別の庇護を受けて、他の宗教とは別格の国家神道として存在し、アジアや太平洋の国々への侵略戦争に天皇の軍隊を送り出す精神的基盤の役割を果たしました。さらに、靖国神社を頂点とする国家神道は、軍国主義や国家主義の政策の下で、日本国民のみならず植民地や占領地の人々にも神社参拝を強要し、信仰・思想・信条の自由を奪いました。

 このような過去の歴史への深い反省から、敗戦後靖国神社などを国家から切り離し、国家が再び同じ誤りを犯さないように、憲法の中で信教の自由を保障し、国家が特定の宗教に庇護を与えたり、宗教に介入しないよう規定したのが、憲法第20条、第89条の信教の自由及び政教分離の原則です。

 国の政治指導者である小泉首相が、誰よりも日本国憲法を遵守する責任と義務を負っていることは言うまでもないことです。

 それゆえ日本キリスト教協議会は、以下の理由によって小泉首相が靖国神社に参拝しないように要望します。 

 小泉首相の靖国神社参拝は、

  1. 憲法20条・89条の信教の自由及び政教分離の原則を踏みにじるものです。
  2. アジア・太平洋戦争中日本軍によって殺された2000万人とも言われる人々の遺族を含むアジア・太平洋の戦争犠牲者に大きな痛みを与えます。 
  3. 近隣諸国との間で積み重ねてきた国や市民レベルによる様々な形での信頼関係を破壊します。

                                     以上 

  この要望書は、5月31日に開催されたNCC第34総会期第3回常任常議員会において採択されたものです。


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