昭和36年12月7日内閣総理大臣は本審議会に対して「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策」について諮問された。いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって、審議会はこれを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探究に努力した。その間、審議会は問題の重要性にかんがみ存置期限を2度にわたって延長し、同和地区の実情把握のために全国および特定の地区の実態の調査も行なった。その結果は附属報告書のとおり、きわめて憂慮すべき状態にあり、関係地区住民の経済状態、生活環境等がすみやかに改善され、平等なる日本国民としての生活が確保されることの重要性を改めて認識したのである。
したがって、審議もきわめて慎重であり、総会を開くこと42回、部会121回、小委員会21回におよんだ。
しかしながら、現在の段階で対策のすべてにわたって具体的に答申することは困難である。しかし、問題の解決は焦眉の急を要するものであり、いたずらに日を重ねることは許されない状態にあるので、以下の結論をもってその諮問に答えることとした。
時あたかも政府は社会開発の基本方針をうち出し、高度経済成長に伴う社会経済の大きな変動がみられようとしている。これと同時に人間尊重の精神が強調されて、政治、行政の面で新しく施策が推進されようとする状態にある。まさに同和問題を解決すべき絶好の機会というべきである。 政府においては、本答申の報告を尊重し、有効適切な施策を実施して、問題を抜本的に解決し、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに実現されるような万全の処置をとられることを要望し期待するものである。