盗聴法を直ちに廃止することを強く訴える(声明)
2000年7月28日
ネットワーク反監視プロジェクト(NaST)
担当 小倉利丸
ogr@nsknet.or.jp
私たちは、盗聴法制定過程から一貫して盗聴法に反対し、また法制定後も、廃止を強く主張してきた。本日、盗聴法に反対する野党各党が、盗聴法廃止法案を提出することになったが、私たちは、この廃止法案を支持するものである。政府与党は、本法案を速やかに審議にかけ、可決するよう強く要請するものである。
盗聴法制定後の経緯を含めて、私たちは下記の点から、盗聴法を絶対に認めることができない。
- 盗聴捜査は、必然的に、犯罪とは無関係の膨大な通信を違法、不当に盗聴せざるを得ないものであり、明らかに憲法の通信の秘密条項に抵触する。
- どの国においても、一端盗聴捜査が法認されると、その範囲が拡大され、条件はますま緩められ、結果として甚大なプライバシー侵害が生じており、日本の場合もこうした傾向を持つであろうことは明白である。
- 盗聴捜査の犯罪摘発効果には大きな疑問が持たれている。他方で、警察は莫大な予算は、甚大なプライバシー侵害を伴う盗聴捜査に浪費されることになる。
- 立法後も特にあらたに盗聴捜査を必要とするような犯罪状況は見いだせない。
- 盗聴捜査は、立法の趣旨とは別に、人権団体や市民運動団体などに対する監視の手段として用いられる可能性がある。
- 「施行規則」や「最高裁規則」などその後制定された諸規則も含めて、捜査当局の違法捜査の歯止めが不十分である。盗聴法制定後に明るみに出された警察官の違法な捜査が、繰り返し厳しく批判されてきたにもかかわらす、盗聴法および、諸規則は、違法捜査に対して、組織内部の懲戒処分等の明確な罰則規定も設けておらず、法的な強制力の実効性を欠く欠陥だらけの法律である。
- 盗聴装置の技術的な仕様についても、違法捜査を支えるような技術が組み込まれる可能性を否定できないし、捜査当局のもつ違法なプライバシー侵害技術を阻止できるような法的な歯止めがない。
- 立会人制度は形骸化され、裁判所、議会ともに、捜査機関の違法な捜査を速やかにチェックできる法的な強制力がない。
- 盗聴記録はデジタル化され、データベース化や改竄、盗聴操作が認められていない他の捜査への流用などが容易であり、警察による個人情報の違法・不当な使用を助長することになる。
以上のように、盗聴法は、いかなる観点からみても、百害あって一利なし、の悪法である。政府、与党は速やかに盗聴法の廃止の方針を持って本臨時国会に臨み、法施行前に、盗聴法の廃止にむけて審議を進めることを重ねて要求するものである。