ムミアが投獄されているペンシルベニア州立グリーン刑務所から、車でおよそ20分ほど離れたモーガンタウンというところに住む安倍と申します。ジャーナリスト、今井恭平氏には、今年の春、ミリオンズ・フォー・ムミアが開かれたフィラデルフィアで、そしてムミアとの面会のために訪れられた当地でお会いしました。集会にお越しの皆様に、私が観てきた範囲ですが、身近で行われているムミア支援活動を簡単に報告させていただきたいと思います。
 ムミアに対して死刑執行命令が出された翌日、ピッツバーグでは緊急支援集会が開かれました。ピッツバーグはペンシルベニア州の西側に位置し、ムミアを支援する大変活動的なグループがあります。緊急であるにもかかわらず、集まった人々は軽く200人を超えました。路上を行く車から応援のクラクションが鳴り響き、しかもそれが20台30台どころではないのです。車の窓からこぶしを力強く突き出して声援を送る人も数多くあって、集会もデモ行進も大いに盛り上がりをみせました。大きな反響を呼んだ集会であったため、ピッツバーグのローカルテレビ局もこれを無視するわけにはいかず、かなり好意的な報道をしました。  この集会に参加しながら、無実を訴え続けてきた運動の意味の大きさを実感するとともに、これまで運動を遠くから眺めていただけの人々の中にも、裁判を正当にやり直すべきだと考える人は案外思った以上に多いのかもしれないと、改めて運動継続の必要性を思い知りました。しかし、何よりも、マイノリテイーに対する警察の暴力、法の下の不平等、刑務所の乱立、死刑制度など、ムミアが社会に向かって問いかけ続けてきた問題が、これまで無関心だった人さえ向き合わざるをえないところまできた事は、ある意味で、権力側に対するムミアの勝利ではないかと思うのです。
 ムミアの死刑執行が延期になったことは、ムミアの精神アドバイザーの所属するブルーダホフというコミュニティーを訪問しているときに知りました。ブルーダホフはキリスト教、アナバプティストの一派で、アメリカの非暴力の市民運動に深く関わってきました。コミュニティー全体でムミアを支援しています。この日の数日前、ブルーダホフの子どもたちはグリーン刑務所前で死刑執行に対する抗議のパフォーマンスを行っています。私も昨年、同じ場所で行われた集会に参加しました。子どもたちは刑務所の入り口で、閉じ込められている全ての人々へ送る大きな花束を看守に届け、歌を歌いました。刑務所が子どもたちの送った花を、囚人と呼ばれる人々ひとりひとりに配ることはおそらくなかったでしょう。しかし権力側が一番恐れるのは、こんな小さな支援の継続的な広がり、そしてムミア釈放を求める行動の中で、不当な構造が世界市民の目にさらされて行くことではないでしょうか。モーガンタウンでも、集会の参加者はこれまでになく増えています。しかし時間はあまり残されていないようです。
 本日集会にお集まりの皆様、ムミアが釈放されるまで、権力による合法的殺人がなくなるまで、刑務所という奴隷制度がなくなる日まで、ともに学び行動を続けましょう。

安倍陽子 ウエスト・バージニア大学、社会学部、大学院生。