「ムミア・ルール」


 ペンシルヴァニア州政府矯正局は、1996年10月11日付で、公告(Commonwealth of Pennsylvania Department of Corrections BULLETIN)を公示した。これは、11月11日からただちに施行された。内容は、囚人とメディアとの接触を厳しく制限するもので、昨年、同様の規則がカリフォルニア州でも施行された模様。
 この新しい規則は、俗にムミア・ルールと呼ばれている。(その理由は、後述)
 主な内容は、マスメディアと囚人の接触を厳しく制限し、メディアの報道の権利、国民の知る権利、囚人のメディアとの接触を通じた発言の権利を奪うのもので、合州国憲法修正8条の表現の自由の規定に明らかに違反しているという指摘がされている。
 こうした規制の強化、という逆行現象がアメリカでも顕著になっているが、それが官僚の一片の通達で決められてしまうのも、どこかの国と大差ないようだ。これは、囚人の問題であるとともに、メディアの問題でもある。こうした規制に唯々諾々とメディア側が従うとしたら、検閲や「自主規制」の動きにも、歯止めはかからないだろう。

以下、ムミア支援団体からのこの件についてのメールの概要
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【概要】  ペンシルヴァニア州矯正局は新しい規則を制定した。それによると、マスコミによる 囚人へのインタビューに際して、カメラとテープレコーダーの使用が禁じられる。
 また、あらかじめ取材者の名前を囚人の面会リストに登録しておく必要がある。(こ の手続きには、お役所仕事的なめんどうさと時間がかかる)
 電話インタビューを受ける場合は、その分、家族との電話の回数が減らされる。 懲罰処遇を受けている囚人は、実際上あらゆるメディアとの接触を不可能にされる。 こうした処遇を、永続的に受けている囚人もたくさんいる。
 にもかかわらず、このルールは事務的に10月11日に公表され、囚人自身は10月末まで 知らされなかったにもかかわらず、11月11日には施行される。

「報酬」に関する条項を見ると、これがムミア・ルールであることは疑いない。(*注 )このルールは昨年カリフォルニアで施行されたものに類似している。これは、Geron imo ji jaga (Pratt)事件に怒った当局が制定したものである。(この事件について 、僕は知りません。/今井)
全米的に、囚人から憲法の保証する人権を剥奪し、当局がやりたい放題やれるように なってきている。

 報道関係者は、こうしたルールを認めるべきではない。メディアと連絡をとり、囚人 がインタビューを受ける権利を確保しよう。

(*)「報酬」に関する項目には、以下のように記述されています。

Compensation

It is a violation of Department policy (Inmate Handbook-2. General Informati on-Private Business) for any inmate to engage in a business or profession wh ile under our supervision. Therefore, the inmate may not be compensated for participating in a visit or telephone call. Violation of this policy will result in disciplinary action being taken against the inmate, and the offend ing visitor's privileges will be subject to suspension.

当局の監督下にある収容者は、いかなるビジネスにも職業にもたずさわってはならな い。したがって、訪問や電話インタビューによって、メディアから報酬を受け取るこ とは規則違反となる。これに違反した場合、収容者への懲罰、および違反マスコミの 訪問の停止措置がとられることがある。


囚人とメディアの接触が具体的にどのように制限されたのかについて、続報が入ったので、以下に概要を記します。

 従来は、マスメディアが囚人を取材する場合、いろいろな便宜が図られており、刑務所や拘置施設も協力していた。しかし、今回の措置によって、メディアは一般の面会とまったく同じ条件でしか囚人と接触できなくなった。もっとも重要なことは、カメラ、録音機材などの持ち込みが一律に禁止されたことである。
 死刑囚監房および、厳正独居処遇を受けている囚人は、週に一度、2時間だけの面会が許されている。電話は、月に二回、それぞれ10分だけ許される。メディアとの接触も、この範囲内でなければならない。したがって、家族からの訪問を受けるとメディアとの接触はできず、マスコミ取材を受けることは、家族との面会や電話を削られることを意味する。
 囚人一人は、面会できる相手を40人に制限されており、その相手はあらかじめ名簿に名前を記載しておくことが要求される。その名簿の書き換えは月に一度しか申請できない。したがって、ジャーナリストも取材しようとすると、月一回の名簿書き換えのときに囚人に頼んで、自分の名前を登録してもらうことが必要になり、緊急のインタビューなどは不可能となる。
 また、死刑執行期日を指定された死刑囚は、ただちにメディアとの接触が一切不可能になる。直系の親族、弁護人、教戒師以外の人間との接触が禁じられるためである。
 こうした厳しい制限が何を意味しているのかはただちに断言できないが、ムミアとマスコミの接触を当局が極度に恐れていることは間違いなく、執行を準備しつつ彼を沈黙させようとしているのではないかと懸念される。
 ムミア支援者達は、ペンシルヴァニア州矯正当局への抗議を呼びかけている。

抗議先
Commissioner Martin Horn, PA Department of Corrections,
P.O. Box 598, Camp Hill, PA 17001;
phone:717-975-4860, FAX:717-787- 0132