「うちの理事さん」

     川崎市自然観察の会 新村 誠

2000年6月号掲載

 

「シロウトですが」

 この前、初めての理事会に出席してビックリ!。自分以外はみんな、林業やら森林ボランティア活動なんかに長いこと関わってきた人ばっかり。しかもNPO法人だっていうんで、難しい規約とかの話がズラズラ。そんな中に入って、やや戸惑っている自己紹介です。

●ド・シロウト

 なにせ、森も林業もまるで関係なく、事務系サラリーマンを28年やってただけの男が、「森林インストラクター」っていう響きに、ついフラフラと会社を辞めちまったのが満50才。ま、確かに森や自然が好きではあったけど、チェンソーはおろかノコ、ナタすらまともに使った経験なく、植林地を歩いたことも無いのが、奥多摩の集まりで「坂井さん」に出会ったのが運の尽き!どっぷりと漬かるハメになりました。でもね、今の日本での森づくりって、どれだけ多くのみんなを仲間にして、一緒に考えたり行動したり出来るかが大事なんじやないかな。そのためには、良く分かってないシロウトも巻き込まなくっちゃって、勝手にシロウト代表理事をやることにしました。

で、どんなことをやってるかってえと、

●鎌倉風致保存林

 鎌倉には風致保存会なる財団法人があります。36年ほど前に、都市開発の波が八幡宮にまで押し寄せた時、作家の大仏次郎たちが中心になって周囲の山を守るために作られました。その力で古都保存法もでき、ナショナルトラスト第一号となったのです。

 以来、鎌倉の「里山」や「鎮守の森」のかなりの部分が、昔のままの姿を保っています。メデタシ、メデタシ〜〜のはずだったのですが、そううまくはいきません。「手を付けるなっ」で30年以上ほっぽりっ放し、森も山道もヤブに埋もれてしまいました。

 そこで、森林インストラクターの登場です。保存会と一緒になって市民ボランティアを指導。ヤブを払い、倒木枯損木を処理し、溝を掘り、道を補修し、なんてことを年間15回ほど、40〜120名の参加を得ながらやってます。自然観察、山菜摘み、野外料理、つる細工、ロープワークなども折り込んで楽しく、また、機会あるごとに林業の現状や協力依頼も伝えながら輪を拡げています。

 さらに、森だのボランティアだのに、もっとも縁遠い年代を巻き込むために、この活動への学校行事としての参加を進めています。今年は、8中学校1000名が体験しました。最初は「ダッセー、ウゼー、キッタネー」と騒いでいても、ササ刈りや除伐に汗をかき、大切さや気持ち良さに目覚める生徒も、結構いるのです。この中から次の時代の森づくりを担ってくれる子が出てくると信じています。

●フォレスト21「さがみの森」

 フォーラムニュースでもおなじみの「さがみの森」。森林インストラクターといっても、手を入れることの出来る山を持っている者なんて、そうはいません。そこで神奈川のメンバー有志は、毎月、津久井へ出掛けます。最初から参加したお蔭で、地ごしらえに始まる一連の作業を実際に体験でき、道具の使い方も覚えてきました。ヒノキの植林区と針広混交の天然更新区をそれぞれ責任担当しているので、これからもさらに、いろんな勉強が出来そうです。

 ただ、「国民参加の森づくり」というにはまだまだ参加者の広がりが不足していることが問題点で、これからの課題です。また、区割りで責任担当していたグループのいくつかが脱落してしまい、作業の滞った区域も出てきています。会員の皆さんで参加可能な方は、ぜひ一緒に、実際の森づくりをしませんか。

●自然観察

 自然好きが出発点だったので、自分自身の活動の大きな部分を占めているのが自然観察の指導です。自然観察なんて筒単なことで、いったい、指導の余地があるのかいなって思ったアナタ、そうなんですよね。それぞれが勝手に観察しに行けばいいんです。ところが、これがちょっとした静かなブーム!結構あっちこっちから依頼があるんです。これって「森づくり」にとっても、良いチャンスだと思います。

 冒頭でも言ったように、シロウトをたくさん巻き込まなくっちゃ大きな力にはならないんじやないかな。日本サッカーがここまで強くなったのは、サッカー経験者や上手い連中だけでなく、やったこともないシロウトも含めて、サポーターやファンがうんと増えたからでしょう。層の厚さが全体を押し上げたんですよね。

 森づくりの味方を増やして、サポーターになってもらう手段のひとつに、自然観察を位置づけています。山仕事となるとやりたくないけれど、自然観察ならOKという人は多いのです。観察しながらだと、生態系や水・空気の話もスンナリと理解してもらえます。山の手入れや輪入材なんて関係も、身近に感じてくれるようです。

 今は、いくつかの自然観察会を主宰しているほか、行政、団体、企業、学校なんかの要望に応じて、神奈川、東京を主なフィールドにして動いてます.植物、野鳥、蜘珠、昆虫と、得意なものからそうじやないものまで、幅広くやってます。とにかく、参加者は何でも聞きたがるし、こちらも勉強になりますからやらざるを得ません。森林浴しながら、目につく季節毎の動植物を楽しみ、森や林業の大切さを語り、シロウトにも出来る協カを頼むという自然観察会が、ボディブローのようにじわじわ効いてくるといいなあ。

●森の応援団

 森に関わって7年経ったけれど、山仕事では勝負になりません。でも、従来からの持論の「プロがプロとしてやる気になれる状況づくり」の手伝いなら、やれることは沢山あるはずです。特に、これからますます増えてくる中高年はもちろん、ゆがんだ受験競争以外にはエネルギーを持て余している中・高校生も含めて、できるだけ多くの人による『森の応援団』を作っていきたいものです。

 社会全体に、森を大事に!っていう意識を拡げるための応援団長として、「森づくりフォーラム」が機能できたら良いなあというのがシロウト理事の心境です。

 

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