ニュース第62号 00年11月号より

     「たかが・・・されど・・・」      

林野庁広報官 森 英樹

 

*「体育会系です」

 学生時代から始めたラグビーを飽きもせず30年近く楽しんでいる。若さにまかせてバリバリやっていた20歳代。足を動かすより口で後輩を動かして、楽しんでゲームするようになった30歳代。現在は、不惑と呼ばれるチームで、昔とった杵柄とばかり張り切って、ゲーム後のビールと飲み会の話題づくり(失敗プレーが酒の肴となり、盛り上がる)のために、未だに楕円球から離れられないでいる。

 ラグビーはスポーツの中では、最も多い1チーム15名、双方で30名が、ひとつのボールを運んで陣取り合戦するゲームである。戦略性に富んでおり、二度と同じ場面に出会うことのない遭遇性の高いスポーツだと思っている。この魅力にとりつかれたならば、大きな怪我をしないかぎり、一生の付き合いになることを覚悟しなければならない。

 60歳代になると赤色のパンツをはいて頑張るのだが、白くなったり、少々さみしくなった頭から密集に飛び込んでいく様は、滑稽でもあり、逞しくもあり、何となく暖かい思いにさせられるものである。″もういい加減にしたら″とも言わなくなった、妻のあきらめ顔を気にしつつも″男はかくあるべし″と腹筋運動に精出すこの頃である。

*「現状は」

  さて、このラグビーもオールジャパンレベルにおいては、世界の強豪国とは、少々差がついてしまっている。何とか国際的なレベルになるようハード・ソフト両面で強化を図っているところであるが、発祥国イギリスやニュージーランドなどとは、競技そのものの歴史はもとより、体格や子供の頃からのトレーニング(なじみが薄い?)、グランド環境などの理由により差が一向に縮まらない。

 日本人の体格、特徴を生かした作戦や手法をあみだしても歯が立たない状況が続いており、モチベーションの低下が現在のところ一番の問題であると感じている。我が国の総理大臣もこのスポーツの経験者らしく、先般、平尾ジャパン監督と対談をしておられましたが、あまりマスコミの話題とならなかった…。

*「体験より」

 その昔、地方で少しの間、高校生の指導の手伝いをした経験があるのですが、ガンバレ!ガンバレ!という根性論で解決しようとする指導者に出会ったことがあります。根性がないからタックルできないのだという類の指導ぶりには、当時の高校生ですらソッポを向いたのですから、今の若者ならなおさらでありましょう。

  最近、ラグビー部に入部する高校生の数が急激に減り始めているらしい。サッカーに子供たちが向いていることも原因でしょうが、競技そのものが、3Kスポーツと言われて評判が悪いらしい。母親達にとってみれば、可愛い息子が危険・汚い・きついスポーツにうつつを抜かされては困るということもあるのでしょう。たくさんの子供たちがファンになってくれなければ、新しい感性や創造力に満ちたチームの出現など願うべくもないのであります。

*「考察」

 このような中で、体力や技術を身に付けるという基本的なことは別として、どのような方向性を持てばいいのか、心構えと指導のあり方について考えてみたい。

 15人もいれば、それぞれに自分らしさ、持ち味があるが、自分は足が遅いとか筋力がないとかいう、足りない点も当然ある。チームメイトの誰かにそれを補ってもらい、自分も誰かのそれを補ってやる。そして、15人もの集団の中で、自分のプレーをどう活かすか。トライをとるために周りのプレヤーをどう活かし、チーム全員が周りのために自分を活かそうとする姿勢。このことが徹底的にできれば、チームは勝利に向かって自動的に動くし、秩序は保たれていくと思う。

  また、選手それぞれのいわゆるセンスの磨き方をどのように指導するのか。どの競技でもそうであるがゲームは、情報のるつぼである。普段からその情報にどう対処していくかを訓練しておくこと。つまり、情報を瞬時にたくさん集められる能力やその瞬時にいいものを拾い上げられる能力を磨いておくことが必要で、ゲームでの素晴らしいパスやタックルにつながると思う。

 こういったところを指導する立場の者がよく整理して教えていくと、選手はプレーが大変楽しく、面白くなってくる。そうすると無理矢理でなければ、動かなかった選手達が自主的かつ主体的に動いていくようになると思う。

*「共通点」

 こう考えてくると、私の仕事分野である森林・林業・木材産業との共通点が何となく浮き彫りになって解りやすくなってくる。

 国産材も長い間、国際的に通用しなくなっているし、森林・林業についても、関心が高くなりつつあるものの、自ら行動しようとする人はまだまだ少数であり、また、これらの情報に価値を見いだせないでもいる。

 奥の深い楕円球のころがり具合を見極めるためには、地道な練習の繰り返しと適切な指導が必要なことはもちろんであるが、チーム全体が自主的・主体的に動くような仕組み作りが、今、求められていると感じるシーズンインであります。

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