ニュース第59号 00年8月号より

これからがスタート〜鹿児島より 

      鹿児島県森林インストラクター連絡協議会  重信 誠

 

 7月16日に下刈りボランティアを計画しました。例の森林整備活動支援事業(国土緑化推進機構)に応募したのです。第一の動機は山仕事の道具がそろう、これです。道具がなきゃ具体的な活動なんてできませんから。

 わたしたちの会で森づくり活動を主催するのは何と今年が初めて。結成5年めにしてようやく腰をあげた次第です。

 

◇鹿児島県森林インストラクターというのは

 県が独自に養成したインストラクターというものがありますよね。わたしたちの場合は、財団法人かごしまみどりの基金という団体によって養成され、98人が修了しました。そのうち活動をする気のある者で組織しており、昨年度のメンバー(会員)は63人でした。

 会には3つの部会があり、森づくり部会もあるんです。30人ほどが所属しているのですが、昨年夏に内輪の下刈り研修を2回行っただけ(それぞれひと桁の参加者)。人気がないですね。自然観察や登山といった労働色の薄い活動が主流になってます。

 それにはそれなりの理由もあるんですが……。当初、メンバーの一部には、林業=自然破壊という図式を丸飲みしている人もいましたし。最近はさすがにそういう声は聞こえません。63人いますが、仕事や家庭の都合でやる気はあっても動けない人が半数くらいでしょうか。よく活動される人も、地域やほかのグループの活動と重なり、なかなかなのです。

◇そもそも、森づくりに足を踏み入れたのは

 会の事務局としてですと、やや肩ひじ張るところもありますのでこれからは個人的に。

 東京に93年まで居りました。ノイローゼで帰郷、転地療養のつもりで霧島連山の麓の町に行き、森林組合の作業班に入れてもらいました。そういうわたしですから、浜田久美子さんの『森をつくる人びと』を読んだときは、不覚にもポロポロ、ヒクヒクしました。

 趣味で山釣りをやってまして、わたしも奥多摩には足繁く通っていました。山頂を目指す登山とは逆で、谷に降りるために山へ森へと。オフィスではまったく使い物にならなくなっていましたが、山の中ではもちろん、山へ向かう車中から気分が高揚してくる自分にハタと気付きました。そんなこんなであっさり決心したわけです。幸い独り者でして。

 造林班には足掛け5年お世話になりました。ここでのお話は長〜くなりますのでカットしますが、擦り傷のみでした。いろいろ大怪我をした方もいたんですが。別の仕事をしながらでしたので、5年いた割には技術的に大きな進歩はなかったものの、ノーローゼって何だったの?というくらいタフになって目出たし目出たし。これも山の恵みです。

◇が、じわじわと、悩みだす

 造林班にいた間に、青年林業士やらインストラクターやらになってしまいました。

 研修マニアというか、森林・林業ということばに過敏に反応した結果、自業自得です。それでいろんな所に出ていったり声がかかったりで、とどのつまりが事務局です。

 インストラクターをつくった県や基金からは、どんどん協力要請が来ます。学校からも。昨年はその対応に四苦八苦、今年は更にエスカレートしてきました。そし主催事業も。来年秋には鹿児島で全国育樹祭があります。それを睨んでの「森づくりイベント」は、これから県内各地で目白押しでしょう。でも、その育樹祭が終わってからが、鹿児島での市民による森づくりのスタートだと思っています。

 昨年秋には県が行った「森林ボランティア育成指導者研修」にも参加し、ワークショップなどを受け持ちました。そこではたしかに、森づくりへの市民の期待と自ら参加したいという熱意を感じました。あとはその輪を広げることです。

 いまの悩みは、インストラクターへの要請をこなすのにあたふたして、森づくりに専念できないこと。事務局もひとりではきつい。ストレスたまり始めてます。で、どうすればよいかと一晩考えた結果、森づくり部会とはまったく別個にグループをつくっちゃえ、そしてそこで動いてしまえという、まことに単純かつ乱暴なものでした。いま、ひそかにメンバー獲得作戦を敢行しているところなのです。脱・事務局だ〜。

◇大見得切ったからには

 2年前、約1000人の県内の林業関係者をまえにして、わずか20分でしたがしゃべる機会をもらいました。そのとき、強調したのは「林業のプロ」を市民活動にどんどん引っ張り込むぞ、という今までこの地では誰も口にしなかったことでした。

 短い期間でしたが、作業班ではプロの技術、その無駄のない動きに驚嘆し、また休憩時間のおしゃべりの中で前ぶれもなく炸裂、発光する珠玉の言葉の数々にしびれ、「やっぱり現場だよ〜」と得心したわたしです。

 

 ようやくスタートラインに立ちました。人前で語ってくださるプロもやっと2名様リクルートしました。森づくりフォーラムをはじめ様々な先駆的グループの後を走るので、轍をたどっていけばと考えると少しは気楽ですが、鹿児島にはまた別の轍をつくる必要もありそうです。

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