政府の報告書によると、国内の原子力発電所でこれからの3年間に深刻な事故が起こる確率は3分の1である。これは明らかであり、そして、いま現在の危険性については公衆を防護する権限が与えられている連邦機関によって実質上無視されたままである。その代わりに、その機関は原子力産業の財務上の成果を向上させるためにその関心を集中している。その危険性というのは加圧水型原子炉の原子力発電所におけるある事故の際に、その格納容器サンプが故障するということである。そのいいかげんな機関というのは原子力規制委員会である。時間は原子力規制委員会が、公衆の健康と安全に対するこのはなはだしい脅威を除去する責任を負う間、その産業のビジネスを脇にやるようにせっついている。 加圧水型原子炉格納容器サンプ問題とは何か? 国内で稼働している103基の原子力発電設備のうち69基は加圧水型原子炉(PWR)である。PWRのその名前の由来は、原子炉容器内の原子炉炉心を通過する水が華氏500度以上に加熱されても沸騰しないように高い圧力(平方インチ当たり約2200ポンド)に保持されているという事実である(訳注:500 ?F = 260 ?C、2200 lb/inch2 = 155 kg/cm2)。格納容器の中では、その高温水は原子炉容器から2基ないしそれ以上の蒸気発生器に流れる。高温水は蒸気発生器内の細い金属管を通して流れる。その管の外側では圧力のより低い水がその管壁を通じて伝わる熱を吸収し、電気を生み出すためにタービン発電器を回転させる蒸気をつくるために沸騰する。蒸気発生器の管から出てきた水は、華氏でおよそ20度くらい低いが、再利用されるために原子炉容器にポンプで戻される。 もしも原子炉容器に穴があいたら、あるいはその容器と蒸気発生器との間の配管が折れたら、またはどこかの安全弁が開いたとすると、その高圧がその開口部から極めて急速に水を押し出す。これは冷却材喪失事故(LOCA)とよばれるが、というのはその水が核燃料によって生み出される熱を除去している、すなわち、それを冷やしているからである。もしもこの熱が除去されないとすれば、核燃料は過熱によって損傷をうけることになる。 プラントの監視装置が、原子炉容器内の圧力の急速な低下によるなどしてLOCAを検知すると、補充水の供給を安全装置が自動的に開始する。例えば、充填ポンプや安全注入ポンプが、燃料取替用水タンク(RWST)からの補充水を自動的に供給するだろう。そのRWSTが無限に大きいとしても、あるいは、そのRWSTへの代替が利用可能であるとしても、いずれかの時点において運転員は、補充水の水源をRWSTから格納容器サンプに切り換えなければならない。その補充水は破断した配管や開いた逃し弁から流れ出る水を補償する必要のあることを想起して欲しい。溢れた水はそのサンプが位置する格納容器の地階に排出される。もしも外部の水だけが用いられるとすると、その格納容器は水で満杯になり、働かなければならない格納容器内の電気機器が水没し、増水する水の純然たる重みによる格納容器の構造健全性が試されることになる。したがって、運転員は、格納容器内部で水がポンプで循環するように、RWSTからの弁を閉じサンプからの弁を開けるのである。 格納容器サンプとは何か? 格納容器サンプというのは単純化した模式図に示しているようなある開口孔であるとしてすむものではない。サンプはゴミがその緊急ポンプを汚染するのを防ぐためにスクリーンによって覆われている。格納容器サンプやその防護スクリーンの設備は原子炉毎に異なるので、その図には典型的な設備が示されている。細かいスクリーンの網目サイズは、彼らがRWSTから水を得るのと止めたときに、格納容器サンプに入ってくる、したがって、安全ポンプに入ってくる最も大きなゴミの粒子を決定することになる。 そのゴミはどこからやってくるのか? 破損配管から抜け出る高圧水は基本的に配管や装置、構造材に近接する断熱材と保護膜(すなわち塗料)とを洗い落とす。ゴミが発生した後に、その水はそれを格納容器サンプに運ぶ。 そのスクリーンを塞ぐにはLOCAの際に発生するゴミのどれだけが格納容器サンプに運ばれなければならないか? NRCの報告書によると、ある小破断LOCA時に生成する繊維状物質の10%以下で19基のPWRにおいては格納容器サンプのスクリーンが詰まってしまう[1]。塗料の破片のような粒子状物質については、更に悪く:ある小破断LOCA時に生成する粒子状物質の10%以下で31基のPWRにおいては格納容器サンプのスクリーンが詰まってしまう[2]。大破断LOCAによって生成する粒子状物質については、それは最悪で:格納容器サンプのスクリーンが詰まるには2%以下のゴミが必要である[3]。 あるLOCAで発生するゴミが格納容器サンプを詰まらせるのはどのくらい確実か? NRCの報告書によると[4]:
事故の際に格納容器サンプが故障すると何が起こるか? 事故時の格納容器サンプの故障は原子炉炉心と格納容器を冷やし続けるのに必要とされる鍵となる安全系の適切な機能を妨害するあるいは非常に悪くする。原子炉炉心が十分に冷却されない時には、それは過熱しその放射性内容物を格納容器内に放出することが出来る。格納容器が十分に冷却されない時には、それは過熱し放射性内容物を環境中にまき散らすことが出来る。 NRCの報告書によると、格納容器サンプが故障する可能性は平均的なPWRについて原子炉炉心損傷の確率をほぼ2桁近く(すなわち、100倍)増加させ、1.462x10-3/炉年とする[5]。別の言い方では、あるひとつのPWRが炉心損傷を経験する確率は684年に1回である。その格納容器サンプの問題を2007年1月までにPWR所有者に片づけさせるというのがNRCの現時点での計画である。 この問題の解決を2007年1月まで待つことのリスクはどういうものか? 1.462x10^(-3)* 68 原子炉[6]*3.46年 = 34%/炉年 [10^(-3) は10の3乗分の1] このように、NRCのデータによれば、68基あるPWRの一つが、現在からその機関が格納容器サンプ問題を解決しようと意図しているその時までの間に炉心損傷を経験するのはおよそ34%であるということになる。 この問題の解決を2007年1月まで待たないことのリスク・利益は何か? 格納容器サンプ問題の解決がNRCのフロントガラスの外ではなくてバックミラーの中にあるとすれば、平均的なPWRについての原子炉炉心損傷の確率は1.66x10-5/炉年に下がるだろう[7]。あるひとつのPWR事故がいずれかの年に起こるリスクは次のようになる: 1.660x10-5 * 68原子炉* 1.0 年 = 0.1 %/炉年 その問題を今年中に解決することによって、NRCはアメリカの公衆にそれらの数字は次の年にはPWRの事故が起こらない確率は99.9%であることを示すことができるのであるが。彼らは正直ににこの声明をなすことが出来ないのである。 PWRの格納容器サンプ問題はたった1年間で処理できるのか? そうだ、それは可能であるし出来たのだ。デービス・ベッセ原子力発電所は格納容器サンプ問題が指摘され処理された合衆国ないでは唯一のPWRである。その発電所の所有者はデービス・ベッセが格納容器サンプ問題を持っていると2002年9月に確定した[8]。1年以内に、その発電所の所有者は改善した格納容器サンプ設備を開発し設置した、それは表面積が25倍になったスクリーンを備えている。そのより大きくなったサンプのスクリーンを詰まらせるにはより大量のゴミが必要となる。それに加えて、その発電所の所有者は格納容器内から潜在的なゴミの多くを取り除き、事故が起こった際にゴミになってしまいそうな格納容器内に残っている物を補強した[9]。 このように、PWRの格納容器サンプ問題は1年以内に処理できるのである。デービス・ベッセがいかなる疑問の余地もなくそれを証明したのだ。 どうしてNRCは1年のうちに処理できるような深刻な安全問題の解決に何年もかけるのだろうか? NRCの優先度は公衆の健康ではなくて、原子力産業の財務上の健康におかれている。NRCはPWRの格納容器サンプ問題の「解決」を1996年9月に開始し、現時点では2007年1月に終わらせると計画している。それは10.3年間だ、もしもNRCが約束通りにするのならば。68基の加圧水型原子炉に影響するたった一つの安全問題を解決するのに10年。このペースの馬鹿さ加減は多くのやり方から明らかであるが、次のようなものがあげられる; ・PWRの格納容器サンプ問題にさいなまされている68基のPWRの内の正確に半数について、NRCが原子炉を建設申請を受けた日から最初に原子を分裂させるまでに10.3年もかかっていない。別の言い方をすると、NRCは彼らがたったひとつの安全問題を解決するよりも早く、これらのPWRに対して建設許可を出しそして運転許可を出すことが出来るのである。 ・NRCは発電所所有者による運転許可訂正の要請(例えば、安全試験と検査の頻度を下げ、原子炉の最大出力を上げる)の全てを2年以内に許可するという目標を持っている。NRCは各年毎にそのようなおよそ1500件のビジネスの要請を受け、従順にそれらのASAP を認めることを期待している[10]。NRCはこの目標を守っている。 ・その格納容器サンプ問題にさいなまされている68基のPWRのうちの12基に対して、NRCは元々40年間だった運転許可を20年延長する許可を与えてきている[11]。NRCはこれらの運転許可の更新申請を審査し許可するのに3年以下しかかけていない。 ・そのPWR格納容器サンプ問題をデービス・ベッセで処理するには1年を要しなかった。 誰が危険にさらされるのか? NRCがその格納容器サンプ問題によって深刻な問題を抱えている原子炉の運転を許容する限り、次にあげるいずれかひとつのPWRの周辺に住む全ての人々が不必要な高いリスクのもとにおかれる:
あなたには何ができるか? もしもあなたがデービス・ベッセ原子力発電所で働いているならば、深刻な安全問題を自発的に処置し合衆国でそれをなし遂げた最初のPWRになったということについてあなたの肩を自分でたたいて激励してください。 もしもあなたがNRC で働いているのならば、更新申請の許可や出力増強の修正要請を、このPWR格納容器サンプ問題がすむまでは脇においてください。 もしもあなたが合衆国議会のメンバーならば、NRCに公衆の安全よりも原子力産業の財務上の安全を優先させるのはどうしてなのか質問してください。 もしもあなたが68基のPWRの近くに住んでいるならば、NRC(opa@nrc.gov)か、あなたの合衆国上院議員か合衆国下院議員あるいはその両方に、あなたがNRCに今年中にPWR格納容器サンプ問題を処理してほしいことを伝えてください。 UCSは何をするか? UCSはNRCがPWR格納容器サンプ問題を後にではなくて速やかに処理するよう努力するように接触する。さらに我々は合衆国議会、マスメディア、不必要に危険な原子炉の周辺に住む人々と接触し、NRCがこの問題を今年中に処理するように努力する。 Prepared by: David Lochbaum ダビッド・ロッシュバウムによる 原子力安全工学者 憂慮する科学者同盟 dlochbaum@ucsusa.org 参考文献 [1] D. V. Rao, B. Letellier, C. Shaffer, S. Ashbaugh, and L. Bartlein, Los Alamos National Laboratory, "GSI-191: Parametric Evaluations for Pressurized Water Reactor Recirculation Sump Performance," Figure 5-10, August 2001. [2] D. V. Rao, B. Letellier, C. Shaffer, S. Ashbaugh, and L. Bartlein, Los Alamos National Laboratory, "GSI-191: Parametric Evaluations for Pressurized Water Reactor Recirculation Sump Performance," Figure 5-11, August 2001. [3] D. V. Rao, B. Letellier, C. Shaffer, S. Ashbaugh, and L. Bartlein, Los Alamos National Laboratory, "GSI-191: Parametric Evaluations for Pressurized Water Reactor Recirculation Sump Performance," Figure 5-12, August 2001. [4] D. V. Rao, B. Letellier, C. Shaffer, S. Ashbaugh, and L. Bartlein, Los Alamos National Laboratory, "GSI-191: Parametric Evaluations for Pressurized Water Reactor Recirculation Sump Performance," Table ES-1, August 2001. [5] J. L. Darby, W. Thomas, D. V. Rao, B. C. Letellier, S. G. Ashbaugh, and M. T. Leonard, Los Alamos National Laboratory, NUREG/CR-6771, "GSI-191: The Impact of Debris Induced Loss of ECCS Recirculation on PWR Core Damage Frequency," page D-6, August 2002. [6] 68 reactors is used here because a single PWR, the Davis-Besse nuclear plant in Ohio, has already fixed this problem. [7] J. L. Darby, W. Thomas, D. V. Rao, B. C. Letellier, S. G. Ashbaugh, and M. T. Leonard, Los Alamos National Laboratory, NUREG/CR-6771, "GSI-191: The Impact of Debris Induced Loss of ECCS Recirculation on PWR Core Damage Frequency," page D-4, August 2002. [8] Letter dated November 4, 2002, from FirstEnergy Nuclear Operating Company to the Nuclear Regulatory Commission, " LER 2002-05 / Davis-Besse Nuclear Power Station, Unit No. 1 / Date of Occurrence - September 4, 2002." [9] Letter dated May 21, 2003, from FirstEnergy Nuclear Operating Company to the Nuclear Regulatory Commission, " LER 2002-05-2 / Davis-Besse Nuclear Power Station, Unit No. 1 / Date of Occurrence - September 4, 2002." [10] Letter dated July 3, 2002, from NRC Chairman Meserve to the US Congress. [11] See http://www.nrc.gov/reactors/operating/licensing/renewal/applications.html |