BWRのシュラウドや再循環系配管のあちこちに亀裂が見つかっており、それに続くかのようにPWRでも加圧器や余熱除去系の配管に貫通亀裂が見つかっている。政府と電力会社は、「維持基準」の導入によって、技術的には止めることの不可能な亀裂を正当化し、ひびだらけのポンコツ原発を運転し続けようとしている。 配管の破断事故、すなわち冷却水喪失事故の潜在的危険性が高まっているのは火を見るよりも明らかであるが、電力会社も政府も「ECCSがあるから深刻な事態にならない」と絶えず答えてきており、実際にそう信じ込んでいるようである。しかし、これは嘘、あるいは極めて疑わしいことが、「維持基準」の先進国アメリカ合衆国で大問題になっている。 関西電力であれば、美浜2号機の蒸気発生器細管破断事故の時にはECCSがちゃんと働いた、と胸を張って答えるかも知れないが、今問題になっているのは、格納容器内での破断事故である。この場合には、破断口から溢れ出る冷却水を補うようためにECCSから補充水が原子炉炉心を冷やす1次冷却系に供給されるのであるが、その破断口から漏れ出た水は、格納容器の底にある流し(格納容器サンプ)に集められ、再びECCSのポンプで1次冷却系に送り込まれるシステムになっている。水は再利用されなければならないのである。異物の混入を防ぐために、格納容器の底の流しには網がかけられているが、実際の冷却水喪失事故時にはそこがゴミによって塞がれてしまい、炉心を冷やす水を送り込めなくなる危険性がある。このことが「憂慮する科学者同盟」によって指摘され、今や大問題になっているのである。 関西電力の社員ならば、格納容器内はきれいに掃除しているのでゴミなどない、と答えるかも知れない。しかし本当にその掃除が完璧でゴミがないとしても、配管の塗料、配管を取り巻く断熱材が事故時の高温水の激しい流れによって引きはがされ、粉々にされ、そのようなゴミになってしまうのである(分厚い断熱材をはがして初めて亀裂が見つかっていることを思い起こそう)。 「憂慮する科学者同盟」はこの問題の解決を2007年まで先送りしようとするNRCを批判し、全米68基のPWRの周辺に住む人達に注意を呼びかけている。その呼びかけは我々に対するものでもある。我々の近くのPWRは本当に大丈夫なのか?これを政府と電力会社にはっきりさせなければならない。 |