原子力発電所に近接しているサマセットの町における癌発生率は、平均の6倍に達する高さである。バーンハム・オン・シー(Burnham-on-Sea)は、イギリスの核工場近くで、これまでに発見された中でも、最も際だった「ガンの群発発生」であると今週命名されるだろう。(【訳注】"Burnham-on-Sea":サマセットにある25エーカーのファームパーク)この新事実は、反核運動家達を燃え上がらせるであろう。彼らは、原子力産業は環境を汚染し、すぐ近くで生活している人々に、将来的に死をもたらすものなのだと言う。 ヒンクリー・ポイント原発の5マイル風下に位置するバーンハムの住民は、放射線に関する政府顧問であるクリス・バズビー博士によってまとめられた、公式の統計調査を要求してきた。 その研究は、乳ガンによって死亡したバーンハム住民ジョー・コーフィールドの1周忌である木曜日に、地元住民に公開されるだろう。5年前に乳ガンから生還した、コーフィールドの母親、ジェラルディーン・トライソール(86歳)は昨日、「私たちは何がこれら全てのガンの原因となっているのか正確に知りたい。私たちには知る権利がある」と述べた。 何人かの住民は、その地域からさらに遠くへと引っ越している。18歳になる David Lidgey は3年前に白血病に罹った。David Lidgey の両親は、彼の病気は原発に責任があるのではないかと強く疑っている。Susan Lidgey と Rob Lidgey は、さらなる健康影響を回避するための措置として、バーンハムから1マイル内陸に引っ越ししている最中だと述べた。 運動家達は、ヒンクリー・ポイントから海洋へ[排出される]放射性排出物が、リゾート地での高いガン発生率を説明するだろうと考えている。劣化ウランに関する政府委員会のメンバーでもあるバズビーは、ヒンクリー・ポイントからの危険物質は、原発周囲の潮汐堆積物を汚染していると考えている。(【訳注】潮汐堆積物:潮の満ち引きによってできる堆積物) 彼は、引き潮によってバーンハムの干潟が露出する際、放射性の粒子が風によって運び去られ、住民によって吸入されるのだと考えている。1989年以降、バーンハムでガンと診断された95人の人々のうち半分以上は、ウォータースポーツやあるいは潮干狩りのような、海に根ざした活動に参加していた。5人のガン患者のうち1人だけが喫煙者だった。 リバプール大学の解剖学の上級講師であり、人体組織における毒素の影響についての専門家であるヴィヴィアン・ハワード博士は「1960年代から私たちは、放射性の粒子が陸地へとやって来るメカニズムを知っている。そして私たちは、今後数百年間この問題について悩むことだろう」と述べた。 1998年以降のバーンハムでのガン症例を調査した研究によって、住民が腎臓ガンにかかる可能性が、5.95倍高いことが分かった。これが偶然であるという確率は、ちょうど千分の1である。さらに、白血病の発生率は標準の4倍以上であり、子宮頸ガンの症例は全国平均の5.6倍高いことが分かった。過去6年間の症例によれば、バーンハム出身の女性の乳ガンリスクは2倍を超えており、その数値が偶然である確率は2500分の1である。 核工場の近くで生活している成人と子供の両方が、そのような広い範囲のガンについて診察されたのは初めてのことであり、死亡よりもむしろ、病気の発生率を調査したのも初めての試みであった。 「ヒンクリーからの排出物が、重大な健康問題を引き起こしているという私の恐れを裏付けるような状況があることが分かる。疫学は全てのそのような結論を示している」とバズビーは語った。彼は、環境放射線の医学的側面についての独立諮問委員会のメンバーである。バズビーは、イギリス全土の原発において、同様の調査の実施を推進している。 報告集の中で調査されたガンの範囲はすべて、ヒロシマの被爆生存者に関する研究からの放射線影響と連結 [して考察]された。しかしながら、ヒンクリー・ポイントからのその種の低レベル放射性排出物と、ガンとの間の科学的な関連は確立されていない。 昨年バズビーは、バーンハムの北、オールドベリー発電所近くのセバーン川の岸にあるチェプストウの近くで白血病集団を確認した。シースケールにおける他の研究は、カンブリアにあるセラフィールド再処理工場の近傍で、1950年から1983年の間に、14歳以下の子供達の間での白血病の症例を観察した。 保健省のスポークスマンは「現在の核サイトからの放射性排出物との関係が示されているような健康影響は知られていない」と言った。 ヒンクリーサイトの原子炉のうち1基を廃炉解体中のBNFLは、バズビーの結論をはねつけ、前回の彼の研究は、保健問題の専門家によって「厳しく批判された」のだと付け加えた。 |