ドイツで5万人の反原発デモ
脱原発政策の維持とゴアレーベン最終処分場計画撤回を求めて
総選挙を前に、メルケル首相の原発推進政策に抗議

     
<写真は、グリーンピース・ドイツのHPより>


 ドイツでは、9月5日、脱原子力政策の維持を求めて5万人の大規模なデモが行われた。グリーンピース・ドイツのHPでは、デモの様子をYouTubeで見ることができる。27日のドイツ総選挙では、原子力政策が選挙の焦点となっている。メルケル首相は、2020年までに全ての原発を段階的に廃止するという脱原発法の見直し(15年間の延長)を画策し、選挙後は原子力支持の自由民主党(FDP)との連立政権誕生の可能性が高いと予想されている。他方では、7月に起きた原発事故や核廃棄物最終処分場の候補地であるゴアレーベンを巡るスキャンダルが暴露される中、首都での5万人規模の抗議行動が行われた。これらドイツの状況について、グリーンピース・ドイツや海外報道(DW-WORLDの記事)から紹介する。

◆5万人の反原発デモ
 9月5日、ドイツの首相官邸周辺は5万人の反原子力のデモンストレーションで埋め尽くされた。チェルノブイリ事故以来、最大規模のデモだった。参加者の要求は、2020年までに原発を段階的に廃止する脱原発法の維持と、ゴアレーベンの最終処分場計画の撤回だ。DW-WORLDの記事はその様子を次のように伝えている「原子力発電に反対する約5万人の抗議者は、ベルリンにある首相アンゲラ・メルケルの官邸の周りをゆっくりとデモ行進して、ドイツの17基の原発を廃止するための法律を撤回しないように首相ら保守派に強く要求した」「土曜日(9月5日)−ドイツの総選挙のちょうど3週間前−の反原子力デモの先頭に立ったのは、400台のトラクターに乗った(ゴアレーベンの)農民たちであった。彼らは、北ドイツの田舎ゴアレーベン地域にある以前の岩塩坑をドイツの放射性廃棄物の長期にわたる貯蔵処分場にする提案に反対している」。
 このデモ行進の主催者の一人でゴアレーベン処分場に反対する活動家ヴォルフガング・エームケは、ゴアレーベンの最終処分場計画について「政府がこのプロジェクトを決して止めなかったこと、そして首相メルケルが新政府になっても続けると宣言したことに、私たちは怒り狂っている。私たちはそれを止めたい」と語っている。フーベルト・ヴェイガー(地球の友インターナショナルのドイツ支部議長)は「原子力エネルギーのルネッサンスはいかなるものでも『狂気』だ」「これらの原発は毎年500トンの核廃棄物を出すが、私たちはその処分の仕方を知らない。核廃棄物を岩塩に貯蔵しようとするドイツの試みは失敗してきた」「どちらが勝つとしても、原子力産業からの選挙圧力は増加するであろうと想定している」「キリスト教民主同盟(CDU)/キリスト教社会同盟(CSU)は分別よく原子力産業の意見を聞くであろう。バイエルン州でも同じであろうが、バイエルン州の住民の大多数は原子力エネルギーに反対している」「彼らは立ち止まって再生可能エネルギーに焦点を当てている。2012−2013年までに、ドイツは原発からの電力総量に匹敵する大量のエネルギーを再生可能エネルギーから得るであろう」と語り、脱原発から再生可能エネルギーへの転換を強く要求している。

◆暴露されたゴアレーベン選考の内幕
 8月上旬にはゴアレーベンを巡るスキャンダルが暴露された。高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地ゴアレーベンの選考にかかわった地質学者が、ゴアレーベンの選考は政治的なものであったことを明らかにした。ゴアレーベンは地質学調査を踏まえて当時の連邦政府が選んだ3つの最終候補地には含まれていなかったが、ニーダーザクセン州の当時の首相が、東ドイツの同様な最終処分場が東西ドイツの国境近くにあったことへの仕返しとして、国境近くのゴアレーベンを選定したことが暴露されたのである。メルケル現政権の連邦環境大臣ジグマール・ガブリエル(社会民主党:SPD)は最近、ゴアレーベン貯蔵処分場は「死んだ」、将来は「再生可能エネルギーに属している」と語っている(DWR−WORD記事)。

◆原発事故等で高まる脱原子力
 7月に起きたクリュメル原発での火災事故(美浜の会ニュースNO.103参照)等によって、世論は脱原子力政策を支持する方向に傾いている。9月5日に公表されたグリーンピース・ドイツのアンケート調査では、59%が原発の運転期限の延長に反対している。特に若者の間でこの傾向が強くなっている。社会民主党(SPD)は2020年までに原発を段階的に廃止すると決めた脱原発の法律を維持することを主張し、メルケル保守派とその連立パートナーになる可能性がある産業界びいきの自由民主党(FDP)を批判している。脱原発法が2001年に採択されたとき当時の連邦政府に加わっていたドイツの緑の党も、脱原子力政策からの後退に反対している。

 DW-WORLDの記事は、ベルリン自由大学の政治科学者ニルス・ディードリッヒの次のような予想を伝えている:「メルケルが9月の選挙後に自由民主党と連立を組むことができれば、原子力問題は激しい論争の的となる」「(メルケル率いる)キリスト教民主同盟と自由民主党が実際に権力を得て原子力の延命を押し通すならば、真の闘いを見ることになるであろう。そのときは大規模なデモンストレーションが起きるであろう」。

[参考]
5万人の人々が原子力に反対してベルリンでデモンストレーション
 50.000 Menschen demonstrieren in Berlin gegen Atomkraft
 9月5日 グリーンピース・ドイツ
反原子力の活動家たちはメルケルに挑戦 Anti-nuclear campaigners challenge Merkel 
 9月6日 DW-WORLD

(09/09/21UP)