フランス・アレバ社の関連施設で相次ぐ放射能漏れ事故
アレバ社の安全管理のずさんさが表面化



 関西電力はフランスのアレバ社とMOX燃料製造契約を結んでいるが、そのアレバ社の子会社が、7月に相次いで重大な事故を起こしている。7月7日深夜、フランス南部ヴォクリューズ県トリカスタン原子力施設にあるソカトリ社の施設で、溶液処理施設タンクからウランを含む溶液があふれ、雨水排水施設を通じて近くのガフィエール川とロゾン川に流れ出た。合計で74sのウランが漏えいしたという。規制当局ASNは、周辺地域での井戸からの取水や釣り、農業用水の利用等の禁止を地元自治体に勧告し自治体がこれを実行した。ソカトリ社からの事故の連絡が遅かったため、人々が危険にさらされた。
 この事故は、35m3と453の廃液が入っている2つの廃棄物タンクから、503入る1つのタンクに廃液を移そうとしたときに、廃液があふれて起こった。その際、従業員は警報が鳴ったにもかかわらず誤報だと無視した。結果、敷地外にまで漏えいが広がったのである。しかも、ASNによれば、ソカトリ社は1週間前にタンクから漏えいがあったにもかかわらず無視していた。ASNは今回の事故をINESレベル1と評価している。また8月6日には、ソカトリ社が年間の放出限界を超えて炭素14を放出していたため、ASNが年末までの運転停止を命じた。ASNはこの件についてもINESレベル1と評価している。
 7月17日には、同じくアレバ社の子会社CERCA社のロマンシュルイゼール研究炉用核燃料製造工場で、地中に埋設された配管の損傷により、50%に濃縮された液体ウラン800グラムの漏えいが発見された。この漏えいは、数年前から続いていたと考えられており、規制当局ASNは過去の漏えいに関するアレバ社の対応を批判している。ASNは、高濃縮ウランの漏えいという、臨界事故をも起こしかねない問題を重要視し、この事故についてもINESレベル1と判断した。
 いずれの事故も、アレバ全体に共通する安全性軽視の姿勢によって引き起こされた事故である。この事故の報道は、サルコジ大統領が原発の輸出拡大を発表した直後であり、フランス国内に強い衝撃を与えた。今回の事故後に実施されたトリカスタン周辺の地下水の汚染調査では、過去からの汚染が問題となっている。今後、過去の安全管理のずさんさがさらに表面化するに違いない。水を使えなかった農民からは、農作物の被害を訴える声が出ている。影響の大きさに、親会社アレバが前面に出て、アレバのロベルジョン社長が記者会見をして農民との補償交渉に入っている。関電はこれまで、アレバ社の他の子会社で事故が起きても、MOX燃料を製造するメロックス社(これもアレバ社の子会社)とは直接関係ないとして、MOX燃料製造契約を締結した。しかしフランスでは、子会社が起こした事故であれ、実際にアレバ社の安全管理・責任問題として取り上げられている。
 事故を受けて、フランスのバルロー環境大臣は、原発周辺の環境影響、とりわけ地下水の汚染について調査を命じた。しかし、データは事業者が発表したもので信頼性が薄く、さらに、原発とは桁違いの放射能を放出する再処理工場が対象に含まれていない。再処理工場周辺での放射能汚染を調査している独立機関ACRO(Association pour le Controle de la Radioactivite de l'Ouest)はこの点を批判し、全ての核施設について、独立した調査を要請する文書を環境大臣に送っている。

(08/08/12UP)