事故続きの英国ソープ再処理工場
前処理建屋の複数の配管から高レベル放射能溶液が漏えい


 英国のソープ(THORP)再処理工場が、運転停止に追い込まれている。使用済み核燃料を硝酸溶液で溶解した後、次の工程に移送する配管から高レベル放射能溶液が漏えいする事故が起きた。NII(原子力施設検査局)の調査を受けることになっている。
 昨年度は高レベル廃棄物複合施設の蒸発器の故障で目標の処理量を下回った。今年度も、ガラス固化施設が仕様どおりに稼動できない上に、今回の配管からの漏えいも加わって、目標の処理量を達成できそうにない。
 その上、再処理スケジュールが遅れているために、ドイツの顧客からは費用の支払いを拒否されている。BNFLからソープ再処理工場を引き継いだばかりの原子力廃止措置機関(NDA)にとっては、収入の見通しが危ぶまれる事態が続いている。
 これらを伝えている4月27日付のCOREの記事を紹介する。



ソープ再処理工場─複数配管からの漏洩で操業停止
THORP - leaking pipes shutdown.

COREブリーフィング
2005年4月27日


[CORE:Cumbrians Opposed to a Radioactive Environment 環境の放射能汚染に反対するカンブリア人の会]


ソープ再処理工場が原子力廃止措置機関(NDA)に譲渡された2005年4月5日から、わずか数週間後に、燃料が切り刻まれ硝酸に溶解される前処理部門における複数配管からの漏えいをBNFLは確認した。これによりソープ再処理工場は、「数カ月とはならないまでも、数週間」の操業停止に追い込まれる模様である。

セラフィールド施設の常務取締役であるバリー・スネルソンは、「私は、せん断工程を含む工場の前処理部門の再処理操作を停止するよう命じた。同工場の安全は確保されており、静止状態にある」と述べた。原子力施設検査局(NII)には情報が伝えられており、漏えいに関する独自の調査が実施されることになっている。

事故の詳細についてはいまだ明らかになっていないが、関係している漏えいと配管回りは、ソープ再処理工場のフィード(供給溶液)清澄槽の周辺に位置しており、酸化物燃料を溶解してつくられる高い放射能レベルの供給溶液は、そこを通じて同工場の化学分離区画に供給される。1998年に同工場の同じ区画で配管からの漏えいが発生し、その結果、5ヵ月の運転停止につながった(COREブリーフィング1998年第11号参照)。

今年度とこの先数年度にわたって、完全操業可能なソープ再処理工場を「資産」としてセラフィールドのクリーンアップ(洗浄除染)費にあてがおうとしていたNDAにとって、現時点でのソープ再処理工場の閉鎖はよいニュースにはならない。BNFLとNDAはソープ再処理工場の単独の収入額の公表を拒み続けているが、セラフィールドにおける全ての商業運転に見込まれる総収入は約8億ポンドであるとされている。BNFLが顧客の燃料を予定通り再処理できていないことを理由にして、あるドイツ顧客が料金の支払いを拒否しているために、未確定のままになっている2005/06年のソープ再処理工場の収入は、すでに危うい状態になっている(COREブリーフィング2005年第5号参照)。

現在、ソープ再処理工場は操業12年目であり、これまでに総量5644トンの酸化物燃料を再処理してきているが、7000トンという最初の10年間における目標(ベースロード)からでも少なくとも2年は遅れている。昨年、主として高レベル廃棄物複合施設における蒸発器の故障が長引いたために、BNFLのセラフィールド「短期事業計画」に示されていた目標725トンを、ソープ再処理工場の処理量は125トンも下回った。事業計画によると2005/06年にはソープ再処理工場が772トンの酸化物燃料を再処理するとしているが、今回発生した漏えいと、セラフィールドのガラス固化施設が仕様通りに稼動できなくなっているために工場全体の年間処理量が継続的に制限され続けているという2つの理由のために、この事業計画は明らかに達成不可能である。


訳者からの参考資料
再処理工場の仕組み(日本原燃)

(5/14一部改訂)