2004年10月12日付ニュー・サイエンティスト誌のロブ・エドワーズの記事によると、イングランド北西部とスコットランド南西部から獲れる数千トンの甲殻類は、新たに示された食物中の放射性物質の国際安全制限値を上回るだろうと指摘されている。英国食品安全管理局(FSA)はこのような食物は禁止されるだろうと警告している。 ロブスター、トリ貝やホタテ貝はセラフィールドからのプルトニウムの海への放出によってひじょうに汚染されているので、2005年に国連によって導入される予定の制限値に抵触するだろう。世界保健機構(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で設置している国連の「コーデックス委員会(コーデックス・アリメンタリウス)」はプルトニウムについて食物1キログラムあたり1ベクレルという安全制限値を提案している。この目的は、これらの食物の摂取からガンを引き起こす長期リスクを100万分の1以下に減らすことである。 この制限値案は少量のプルトニウムが体内に取り込まれることによる健康リスクについて、科学的知見が定まっていないことが明らかになっている状況を考慮に入れており、米国や英国の他の国際的な規制当局によって勧告されている放射線安全制限値と一致している。 今月下旬に、英国政府の、内部放射体による放射線影響調査委員会(CERRIE)が最終報告書を発表する。コピーがCOREにリークされたこの最終報告書では、同委員会の委員たちが、体内でのプルトニウムやアメリシウム(プルトニウムの崩壊生成物)のケースについてICRP(国際放射線防護委員会)モデルは10倍以上のファクター(係数)で間違っている可能性があるという意見で一致している。 新しい国連の制限値は放射線専門家たちに歓迎されているが、他方で、この制限値は食品安全管理局によれば「現実の危険性に見合わない」と考えられており、そして、おもにスペイン、フランス、オランダに輸出し、数百万ポンドの利益を得ているこの地域の甲殻類産業を怒らせている。 チェシャー出身の放射線コンサルタント、イアン・ジャクソンは提案されている新しい基準値を「合理性のあるものだ」と考えているそうだ。また新しい安全制限値はカンブリアに経済的に大きな影響をあたえるにもかかわらず、規制機関である北西イングランド漁業委員会のジム・アンドリュースは「もし公衆の健康への危険性があるなら、なにより優先されなければならない」と述べた。 COREを代表して、活動家ジャニン・アリス・スミスは「我々はこの新しい法令を歓迎しており、公衆の健康が最優先であるという見解を真剣に支持する。とりわけウェストレイクス調査研究所による諸研究で、カンブリアに住む「最も被曝を受けやすい海産物を消費するグループ」のアメリシウム被ばく線量が年々増加しているので、我々は食物中のプルトニウムと長期にわたる健康への潜在的な影響について心配してきた。」と述べた。 最新の政府報告書(食物と環境中の放射性物質2003−RIFE8)は、カンブリア地方の海岸のバイ貝やトリ貝のプルトニウム汚染レベルは提案されている制限値をはるかに超えていることを示している。西カンブリア地方のタマキビ貝は平均でこの基準値の約100倍のレベルが示しており、セント・ビーズとネザータウンのタマキビ貝の汚染レベルはそれぞれ260Bq/kgと210Bq/kgであり、提案されている制限値1Bq/kgの200倍以上という、はるかに高いレベルを示している。モアカム湾とソルウェー湾地域で観測されたトリ貝やタマキビ貝についての数値は、西カンブリアの貝より汚染は少ないにせよ、それらもまた国連に禁止されるだろうことを示している。 ジャニン・アリス・スミスは「海産物汚染に対する責任は明らかにセラフィールドの再処理からの放射能放出にある。この経済性のない、不必要で、汚染を撒き散らす操業を即刻終わらせるのは、いまや原子力廃止措置機関(NDA)の義務である。」と言い添えた。 |