2000年12月1日 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 |
1.経過 ◆今年(2000年)6月7日に、当会は下記のメールを受け取った。メールの送り主は明らかにある電力会社に在籍し、この問題の資料にアクセス可能な人物であると判断している。
@海外のBNFL社とコジェマ社にある使用済核燃料輸送容器は他の用途に転用されている。 Aその定期検査を1年に1回行うよう通達されているが、期限内に実施されなかった。 BMOX燃料に関する逆風のため、通達違反を公表せず、電力会社と政府間の密談で処理した。 C一時容器の許認可を取り下げる(廃止願いを出す)というやり方で落着とした。 ◆6月12日には、当会からの要望に応じて、A430余枚にのぼる資料がFAXで送られてきた。そこには次の資料が含まれている。 ・BNFL社とコジェマ社での輸送容器の検査状況について電事連から各電力会社へ通知。 ・サイクル技術センター・輸送技術Gのこの問題に関する分析と方針提起 ・科技庁(2000.1/13)及び運輸省(1/13,1/21)と電力会社との協議メモ ・運輸省海上技術安全局長の電力会社への注意案を含む、運輸省から電力会社への通知 ・容器をMOX容器に転用及び新調する場合の経費に関する丸紅KKの試算 しかし、この問題の結末を示す資料は含まれていない。 ◆その後、福島瑞穂参議院議員秘書の竹村英明氏の協力を得て、運輸省と科技庁に対し3度にわたって質問書を提出してきた。 第1回:提出7月7日 回答7月19日−−運輸省と科技庁管轄輸送容器の内訳表 第2回:提出10月10日 回答10月27日−−検査遅延26基の確認 第3回:提出11月8日 回答11月10日−−再使用申請の有無、26基だけと限らず。 これらによって、告発資料の当否と問題の結末を確かめてきた。その結果、告発資料には十分な信ぴょう性があること、メールの趣旨が的確に当てはまっていることを確認した。 いま、福島第U原発から六ヶ所への使用済核燃料の輸送が迫り、柏崎刈羽3号へのMOX燃料輸送も迫っているため、告発資料を広く各方面に公開することにした。 2.問題の内容・趣旨 この問題の内容・趣旨は、2000年1月13日付けのサイクル技術センター・輸送技術Gの分析資料が最も端的に物語っている(資料参照)。 @BNFL社とコジェマ社にある日本の電力会社の使用済核燃料輸送容器は、1990年12月の運輸省・科技庁通達によって、最低1年に1回は定期自主検査を受けなければならない。 Aところが、前回検査から1年を過ぎても未検査の容器が、昨年12月21日段階で少なくとも26基存在することが判明した(注:質問書への回答で確認したところでは、検査遅延容器が26基に限られるかどうかを運輸省は把握していない)。26基の内訳は、下表のとおり関西電力が20基と圧倒的に多い。 遅れた理由は、BNFL社では、「MOX燃料輸送準備や輸送容器の表面汚染問題等のため」、コジェマ社では、検査を実施する「AMEC施設での人身事故(1名死亡)のため」であるとされている(この内容は質問書への回答によって確認)。
Cそのためか、電事連・各電力会社も、運輸省・科技庁もこの検査の遅れという通達違反問題を完全に隠してしまう方策を選択した。 D通達違反の公表に代えて、使用中輸送容器の使用廃止届けが、検査遅延の26基にとどまらず、今年3月23日付けでいっせいに提出された(運輸省に55基分、科技庁に14基分)、(これまでは、検査が遅れても有効期限日を検査日としたことが資料で示唆されているが、今回はそれもしなかった)。これによってPWRとBWRでは、これまで使用されていた輸送容器で使用可能なものは、科技庁管轄のHZ75T型6基を除いて他にない(今年6月末現在)というきわめて異常な事態となっている(今年6月末現在でまだ使用中なのは、日本原子力研究所の”むつ用”35基、日本原電の”ガス炉用”12基、科技庁管轄のHZ-75T型が6基、MOX燃料輸送用が今年7月時点で8基、9月時点で10基、以上である)。 Eこれら使用済核燃料輸送容器を新調するには、告発資料にある丸紅の試算によれば、1基につき1〜2.5億円もする。例えば関電は2種類で33基の廃止届けを出しているが、これを新調するとなると60.4億円かかる。電力全体では新調に121億円もかかる(表参照)。
いずれほとぼりがさめるのを待って再使用するか、またはMOX用に転用する方針が立てられたのも当然と言えようか(しかしいまのところ、運輸省に再使用願いは提出されていない)。 F運輸省は、この廃止届けによって問題はすべて解消したという態度であり、検査遅延の事実を報道関係に知らせる必要もないと判断している。 Gしかし、告発資料によれば、このような結末を迎えるまでの過程で、この問題にどう対処すべきか、報道関係にも知らせるべきか否かなどが運輸省と電力会社とで協議されている(科技庁・運輸省メモ参照)。今年の1月13日や21日時点では、まだ電力会社への注意処分やマスコミへの「投げ込み」公表が考慮されていた。電力会社に対する運輸省注意文書案も、「こんな程度でどうですか?」と言わんばかりに各電力会社に送付されている(1月19日)。
Hこれに対し電力側は、サイクル技術センターが次の基本方針を提起している(1月13日)。
○容器承認の廃止手続き−−定期検査の期限を超過した容器について ○再申請できるための折衝−−必要な時期に再申請 ○フレキシビリティのある管理運用の折衝−−期限を1年から1年数ヶ月に延ばす ○公開に対する折衝−−容器承認を廃止することから、本件を積極的公開しない方向で折衝。 ◎1月21日付運輸省メモの最後にも「文書は注意内容を弱めるよう交渉」とある。 I結局恐らくある種の妥協点として、26基だけでなくほとんどすべての輸送容器について廃止届けを出すことで決着となっているが、これでは数は増えたものの、基本内容は電力要求のままである。廃止届けだけで調査報告なし、注意なし、公開なしと電力の要求通りとなった。 Jところで、今度福島第U原発から六ヶ所に使用済核燃料を運ぶ予定の4基の容器はどう調達したのだろうか。これは神戸から運ばれて今年10月31日に福島に到着している。この輸送容器は一部一般道路を通るため、科技庁の管轄になっているはずであるが、残念ながらどのような容器かの調査はまだできていない。 |