使用済核燃料輸送容器の検査遅延問題に関する

内部告発を受けての声明


2000年12月3日   美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会


 今年(2000年)6月7日に当会は、ある電力会社の内部から告発のメールを受け取った。さらに6月12日には、当会からの要望に応じて、A430余枚にのぼる資料が送られてきた。そこには、政府通達に違反して使用済核燃料輸送容器の検査が遅延した問題をめぐる、電力会社と運輸省・科技庁との駆け引き、癒着の姿が生々しく描かれている。
 その後、福島瑞穂参議院議員秘書の竹村英明氏の協力を得て、運輸省と科技庁に対し3度にわたり質問書を提出してきた。告発資料の信ぴょう性を確かめるとともに、問題の結末がどうなったかを確認してきた。その結果、メールに書かれた趣旨は実に的確であり、告発資料の信ぴょう性は十分にあると判断した。当会を信頼して、貴重な情報を寄せていただいた勇気ある人に深く感謝したい。

 いま、福島第U原発から六ヶ所への使用済核燃料の輸送がさし迫り、柏崎刈羽原発3号炉へのMOX燃料輸送も迫っている。そのため、この告発資料を広く各方面に公開することにしたのである。

 この問題そのものは、使用済核燃料輸送容器に関して、1年に1回は定期検査を受けるようとの科技庁・運輸省通達への違反である。前回検査から1年を過ぎても検査されていない場合が、BNFL社とコジェマ社で昨年起こったことである。検査遅延の容器は、少なくとも26基で、それ以上にないかどうかの確認はなされていない。そして、その26基を含むほぼすべての輸送容器について、使用廃止届けが「自主的に」電力会社からいっせいに出され、それによって一件落着とされている。遅延の原因も管理責任も何も問われず、いっさいが蓋をされたままになっている。しかし、このような異常な落着でことを済ませてよいのだろうか。
@第1に、このような通達違反の事実が、電力側からの要求によってまったく公表されず、今回の告発がなければ完全に闇に葬られるところであった。告発のメールも、密室のやり方にこそ強い憤りを感じ、「正義の鉄槌を」とまで表明している。原子力をめぐる密室的やり方が何度もやり玉に挙げられながら、またまた繰り返す。しかし今や、そのようなやり方に対しては、内部からの反撃さえもが起こることを、今回の告発は如実に示しているのである。この状況こそが、運輸省が言うところの、「最近原子力には様々な問題が起きている」ことの反映と捉えるべきである。ところが実際には逆に、彼らはますます密室に閉じこもってしまったのである。
A運輸省と科技庁は、「容器の使用廃止届け」という厳しい措置が事実上とられたのだから、それで十分だというかも知れない。事実そのような態度を質問への回答で表明しており、それで、問題を公表する必要もないとまで表明している。それでは、すべての使用済核燃料輸送容器は、今後いっさい使用させないとでもいうのだろうか。実際には、福島第U原発から六ヶ所へ、使用済核燃料がまさに輸送されようとしているし、柏崎刈羽3号用MOX燃料の輸送も行われようとしているではないか。
B1990年12月に出された運輸省と科技庁の通達は、輸送容器の安全性を確保するために、定期検査を義務づけたものである。その通達違反が起こったのは、電力会社の管理の仕方に欠陥があるからだとの認識に、運輸省自身がいったんは立っているではないか。それなら、電力会社が今後も輸送容器を管理し使用する以上、当然ながら現に起こった管理上の欠陥についての調査報告を求め、その上に立って改善策を示すよう要求するのが規制当局として当然なすべきことではないのか。ところが実際は、調査報告なし、注意処分なし、公表もなしと電力会社の言いなりになったのである。自らの通達を自ら踏みにじったのである。これでどうして、輸送容器の安全管理が保証されることになるのだろうか。 
C使用廃止届けが出されたのは検査遅延が確認されている26基にとどまっていないが、これは当然の措置である。なぜなら、実際何基に遅延が起こったのかが、把握されていないからである。
D電力会社・電事連は、MOX燃料をめぐるデータ不正事件で、BNFL社の不正隠しに手を貸した姿勢を批判されながら、この件でまた不始末を隠し通してきた。問題を公表しないよう規制当局に要求し、形の上で使用廃止届けを出した容器を再使用できる保証を取り付けようとしている。
 とりわけ関西電力は、検査遅延26基中の20基に関与し、そのうち17基がBNFL社で起こった遅延でありながら、BNFL社の責任を問うこともなかった。この事実を隠したまま、今年7月には、BNFL社との契約凍結の解除にまで踏み切っている。

 結局、使用廃止届けによって厳しい措置をとったなどというものの、その実、使用廃止の措置は、通達違反の事実を隠してしまうための隠れ蓑そのものである。公表するなという電力の圧力に規制当局が屈した結果である。しかもその陰では、電力側資料にある方針が示すとおり、いずれは廃止容器を復活させる暗黙の了解がなされているに違いない。
 今回検査の遅延があった容器が26基にとどまるのかどうかさえ、運輸省は掌握していない。少なくとも今回(2000.3.23)廃止届けの出された輸送容器について、再使用することはいっさい許されるべきではない。さらに、電力会社が輸送容器を新調するなどもってのほかである。不正逃れのために廃止した措置の高価な代償を消費者の電気料金に加算するなど到底許されることではない。
 運輸省・科技庁と電力会社は、まずこの件の事実関係をすべて自ら公表すべきである。この事実を隠した責任の所在を明らかにすべきである。この件が如実に語る癒着の体質が存在する以上、すべての輸送容器の安全性についてはおよそ信頼できるものではない。運輸省・科技庁と電力会社はまずそれぞれの総括を明確にし、自らの体質を改める具体的方策を打ち出すべきである。それができるまでは、すべての輸送容器の使用を凍結すべきである。
 福島第U原発から六ヶ所への輸送を中止すべきである。柏崎刈羽3号炉へのMOX燃料輸送も中止すべきである。  



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