使用済核燃料輸送容器の検査遅延問題に関する
科学技術庁への申入書



科学技術庁長官 町村 信孝 様

 2000年12月6日    美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
                              代表 小山 英之

 昨年12月16日に、高浜4号炉用MOX燃料に関するデータ不正スキャンダルが確定し、電力業界に対して社会の厳しい目が向けられている折りもおり、使用済核燃料輸送容器の定期検査に関する政府通達への違反が内々で問題にされていました。しかし結局、この通達違反の事実は世間から完全に隠されたまま、輸送容器の「使用廃止」手続きによって封じ込められていたのです。
 ところが、このような密室取引に対する義憤が内部告発となって、この新たなスキャンダルを明るみに出しました。それほどまでに、原子力に対する逆風は、従来のような談合政治を容易に許さないと捉えるべきでしょう。
 電力業界の「科学技術庁メモ」によれば、今年1月13日時点で貴庁は、この問題を遅くとも1月末までには報道関係に知らせるとのスタンスを示しています。ところが、1月21日付け「運輸省メモ」の中では、「STA(科学技術庁)の室長はまだ(今回の件を)上にあげていない」と書かれています。これが事実なら、言葉とは裏腹に、公開するとの意志は初めからなかったばかりか、自らの通達への違反事件をまったく軽視していたとしか思われません。
結局は、電力業界の「この件を積極的公開しない方向で折衝する」という意向を事実上受け入れたことになっています。
 ところが、この事実が明るみ出そうになると、貴庁は12月1日になって突然の記者説明。1月中に記者発表すべきものを、ほぼ1年後に公表して何の意味があるのでしょう。
 さらに、1月13日「科学技術庁メモ」によれば、貴庁は「BNFLの管理の仕方が問題である。QA上も問題有り」との見解を示しています。そのBNFLに対する管理責任は日本の電力会社にあり、さらに貴庁は1990年12月の局長通達を通じて、その電力会社を監督する立場にあったはずです。ところが、電力事業者に対する管理責任はいっさい何も問われないままであり、この件に関する調査報告書の提出も求めていません。 
 結局、通達違反の事実を隠蔽するために、使用廃止届けを出すという形式が案出されたことになります。このような措置が許されるなら、わざと廃止届けを出して定期検査の義務から逃れ、頃合いを見て再使用願いを出して承認を受けるというやり方がまかりとおることになります。今回明らかに管理上の欠陥が浮上したにもかかわらず、貴庁はそれからわざと目を反らせたのです。こんななれ合いで、輸送容器の安全性が保証されるでしょうか。
 今回の談合事実は、国内用輸送容器を含むすべての輸送容器の安全性について厳格な審査・検査が行われていないことを疑わせるのに十分だというべきです。
 そこで以下の点を貴庁に申し入れします。
1.福島第二原発及び東海第二原発から六ヶ所再処理工場受入・貯蔵施設に運ぶ予定の使用 済核燃料の輸送を中止すること。   
2.この事件に関する詳細な報告書を作成して広く公表し、局長通達違反及びその隠蔽に対 する責任を明らかにすること。
3.今回廃止届けが出された容器はけっして再使用を認めないと公表すること。
 この件について、早急に文書での回答と、直接説明をお願いします。

連絡先:美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
      (530-0047)大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル1階
      TEL:06-6367-6580; FAX:06-6367-6581 



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