科学技術庁事故調査対策本部 御中 東京都千代田区霞ヶ関2-1-1 Fax.: 03-3500-3702 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表 小山 英之 大阪市北区西天満4-3-3星光ビル1階 Fax. 06-6367-6581 昨年11月29日付けで送らせて頂いた質問書につきましては、2月18日に竹村参議院議員事務所を通じて文書回答を確かに頂きました。4つの項目からなる質問でしたが最後の質問について回答が質問とかみ合っていないので再度質問書を送らせていただきます。可及的速やかに文書回答頂けますようお願いしたします。 その質問は; (4) ICRPは1985年に中性子の線質係数Qについての声明を出しました。そこでは「委員会は、中性子の場合Qを2倍にすること」が勧告されました。科学技術庁はこの声明を尊重しますか。「実効線量当量」の計算において、Qを2倍にしていないのはどうしてですか。この声明を国内の法令に取り入れないのはどうしてですか。 というものでしたが、回答は; (4)国際放射線防護委員会1990年勧告の国内関係法令の取り入れについては、現在、関係省庁の放射線障害の防止に関する技術基準の改正案が放射線審議会において調査審議されているところであり、放射線審議会の答申も踏まえて、関係省庁が各法令への取入れを行う予定です。科学技術庁所管のものも含め、これらの改正案では、「実効線量当量」にかえて「実効線量」を採用することとしています。 となっています。1985年のパリ声明のうち中性子の線質係数Qを2倍にするという部分を国内法令に取り入れないのはどうしてか、という質問が、1990年勧告の導入の話と混同されております。この点に留意して再度次の質問にお答え頂けますようよろしくお願い致します。 (a)ICRPは1985年パリ会議の声明において、「中性子の場合Q値を2倍にすることを勧告」しました。それにも関わらず、中性子線による被ばくが重大であったJCO臨界事故の調査における住民や労働者の「実効線量当量」の評価に際し、「Q値を2倍にする」という勧告が実施されていないのはどうしてですか。 (b)ICRPの1985年パリ会議の声明は「四つの問題」について出されたものですが、そのうちの公衆の被ばく限度を年間1mSvにするという部分は現行の法令に取り入れられているにも関わらず、「Q値を2倍にする」部分を無視するのはどうしてですか。 (c)現行法令が、中性子の線質係数Qを2倍にするという勧告を取り入れていない事実を被ばくされた東海村の住民の方々にお知らせしないのはどうしてですか。 以上。 |
(参考資料) 「ICRP(国際放射線防護委員会)の1985年パリ会議の声明」より 中性子の場合の線質係数の値(注1) インビトロ(注2)での細胞に対するいろいろな影響とマウスの寿命短縮とに関わる中性子の生物効果比(RBE)について現在得られる情報を、委員会は検討しつつある。この情報の意味合いは、委員会が今後4年ほどの間に行うことになっているもっと広範な勧告(注3)の検討の一部として考察されるであろう。その間、委員会は中性子の場合のQ値を2倍とすることを勧告する。したがって、速中性子のQに用いてよい近似値は10から20も変わる。 この変更は中性子に対してだけで、そのほかのQの変更は今回は勧告しない。 (注1)線質係数、Q値:放射線から同じエネルギーを付与されても、その放射線の種類やエネルギーによってがん等の確率的影響も異なることを補正するための係数。ガンマー線に対してはQ=1であり、アルファ線に対してはQ=20である。この係数を吸収線量(Gy、グレイ)にかけると線量当量(Sv、シーベルト)になる。 (注2)インビトロ、in vitro:生体物質や生体内でおこる反応の特定の部分を試験管内で実験することは生物化学では頻繁にあるが、その生体外に取りだしたということを強調する際に用いる用語。(注3)もっと広範な勧告:ICRPの1990年勧告を指す。 |