裁判傍聴報告
東海村臨界被ばく事故裁判 第14回9月7日法廷
いよいよ次回(11月16日)から証人尋問が決定


 9月7日、水戸地裁で東海村臨界被ばく事故裁判の第14回法廷が開かれた。いよいよ次回から証人尋問が開始されることが決まった。
 この日の法廷では突然裁判長が交代しており、証人採用の方針に若干の変化があった。前の裁判長は前回法廷で、原告側が申請している8人全員の採否を一括して決めるとしていたが、新しい裁判長は原告の健康被害を先に調べるという考え方のようであり、結果として全員の一括採用は決まらなかった。まず、原告2人の症状を直接診た医師の証言から聞くことになった。トップに立つのは事故当時皮膚科の主治医であった小笠原医師と事故後の症状を分析していただいた佐藤医師で、原告大泉昭一さんの皮膚症状に関して証言していただける。それぞれ主尋問の後、同日にJCOが反対尋問を行うことになった。2人の証言は午前と午後に分けて同日に行われる。
 その次の法廷は原告大泉恵子さんのPTSDの関係で、2名の医師が証人に立つことになるが、新たにJCO側がカルテの送付嘱託を要求したことや詳細な尋問事項書の提出を原告が出す関係もあり、正式な日程は決まらなかった。また原告2人の症状が、臨界事故による被ばくに起因することを証言する予定である残り4人の証人について、裁判所は上記4人の医師の証人尋問後に判断すると表明した。
 裁判に先立ち、JCOは8月30日付で準備書面(9)を提出した。2月提出のJCOの意見書では、「カルテがベストエビデンス」「カルテで十分であり、敢えて取り調べる必要はない」と主治医の証人採用にさえ反対していた。しかし、今回の準備書面では、裁判所が採用することに「敢えて反対はしない」とトーンダウンした。証人がかなり採用されそうな状況になってきたと見たためだろうか。しかし事故との関係を証言する放射線被ばくに関係する証人については不要であるという論は、しつこく展開した。と言っても、国の健康管理検討委員会報告書や原子力学会「JCO事故調査委員会」の報告書を持ち出し、健康被害について「影響が発生する線量レベルでない」という結論を一般的に述べているだけであって新味のある内容はない。これに対して、原告側の伊東弁護士は「JCOが自分で出した書証で十分だから反証させないというのは理屈に合わない」と法廷で批判した。また原告証人の4人の医師の証言後、JCOとして被告側の証人を立てるかどうか決めることを始めて表明した。
 その後の日程調整で、次回法廷は11月16日に開かれることになった。いよいよ、証人を立てての論争が始まる。裁判の傍聴、宣伝を通して原告を支援していこう。(Y)