交渉に先立ち、「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」の寺田さんより、東海地震がいつ起こるかもしれないという中で、耐震設計の不十分な浜岡原発を地元に抱える不安と脱原発への想いが訴えられた。
続いて「東電用MOX燃料問題市民検討委員会」から「BNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会」宛ての要望書が通産省に提出された。市民検討委員会は、この間東電のMOX燃料の品質管理問題を追い続け、国や県、東電との交渉を粘り強く続けてきた首都圏、福島、新潟、関西の15市民団体の15名が委員に名を連ねたもので、この要望書提出が初仕事である。提出先は通産省が電気事業審議会に設けた諮問機関で、BNFL社MOX燃料データ問題に際しての、通産省の輸入MOX燃料体検査についての問題点を洗い出し、不正の未然防止を図る具体策を検討することになっている。であれば、当然のことながら、現在、輸入燃料体検査が継続中の東電福島第一原発3号炉用MOX燃料、ならびに柏崎原発3号炉用についても、品質管理状況ならびに通産省の対応について議論されるべきである。それにこの委員会において通産省が挙げている反省点に照らして、東電の再調査ならびに通産省の検査状況をみた場合、多くの矛盾した対応が見てとれるのでなおさらである。しかし委員には2月の東電報告すら配られていない。「東電MOXも検討せよ」要請の趣旨はここにある。
この件に関しての交渉でのやりとりを以下に挙げる。
通産省「具体的な制度の見直しの中身は今後の委員会の議論を待つ。通産省としてその議論の結果を受けて必要な制度整備を行う。福島の燃料については輸入燃料体検査申請がすでになされており、遡って適用されることはない。柏崎の燃料については製造がされているが、輸入燃料体検査申請といった手続きはなされていない。仮に制度が変わるということになれば、可能な限り新たな制度に従って申請をすることになるだろう。まだどういう制度になるか、2回目で方針は出されたが、具体的には次の委員会において議論される。それを経たあとで、具体的な手続きについて検討したい。」
…BNFL検討委員会の予定は?
通産省「当初は3回程度と考えていた。委員会の先生方の議論で決まるので実際にはわからない。次の予定もまだ。」
…BNFL検討委員会での検討と東電の輸入燃料体検査の関係は?
通産省「リンクしているわけではない。委員会での議論を含みながら検討しているのは事実。福島の燃料についてはこれまでの制度に基づいて申請がなされて、現地のチェックもなされている。途中でBNFLの件があって再確認がなされ報告書も出ている。仕組み上はそれ単体でも判断できると考えている。ただ実際には個人的な感覚だが、電事審での議論(BNFL検討委員会)もあるので、全く完全に独立にできるのかなあとは思っている。」
福島向けについては、形式上は無関係と言いながらも、委員会での検討内容は無視できず、東電報告についても評価を出せないでいる。というのが実際であろう。通産省は2月に出た東電報告の検討を3月の段階では「2・3ヶ月もかかるようなことはない」と言っていたが、その3ヶ月はとうに過ぎている。BNFL委員会も当初は4月までに3回で終わるはずであったが、3回目は5月を過ぎても予定が立っていない。私たちはなおもこの委員会に対するはたらきかけを続け、矛盾に満ちた通産省の対応をあからさまにしながら、情報の開示を迫っていきたい。
さて比較的穏やかに進んだ通産省交渉の雰囲気が一変したのは「東電のペレットが『植木鉢型』でない証拠はあるのか?」という問いからだった。この問いに対し通産省の担当者は「そもそも関西電力のものが植木鉢型であるという証拠はあるのか?」と逆質問。何い〜?それを調べるのが規制当局の仕事ではないのか!? 通産省の対応は昨年12月までの、あの大恥をかいた高浜4号炉データ不正問題のときと全く変わっていない。全数計測の測定点を変更したことを関電は昨年9月には知っており、福井県には報告したが、通産省には報告していなかった。通産省は新聞報道でこの件を知ってからも、関電の報告だけを鵜呑みにするだけで、BNFLにもNIIにも確認していない。通産省はBNFL検討委員会において、事業者の言うことを鵜呑みにしたことを反省点に挙げ、NIIとの情報交換が有効であったと報告しているが、言っている事とやっている事がまるで違う。反省の色は全くない。
問題は通産省の対応にとどまらない。『植木鉢型ペレット』という形状が異常なペレットが現に作られ、それが現に燃料になっていた。これは製造能力の問題であり、MOX燃料の安全上の問題である。事は関電にとどまらない。再度問いたい。「東電のペレットが『植木鉢型』でない証拠はあるのか?」
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