科技庁交渉報告

「ガン死の危険はゼロではない」と言いながら
リスク評価を行わない科技庁


 午後3時10分から4時過ぎまで、科技庁原子力安全課の水本氏と吉田氏を相手に交渉。冒頭に、大阪の久保美恵子さんが、署名に託された多くの人々の思いを代弁して、「国は、もう原発はいらないというみんなの声を理解する必要があります」と熱く訴えました。科技庁の印象は、これまでの横柄な態度とは少し違って、何か自信なげな様子でした。

★「『絶対にガンにはならない』(田ノ岡発言)は科技庁の見解ではない」
 4月9日JCO主催の住民説明会で、国立ガンセンターの田ノ岡宏氏は、「絶対にガンにはならない」等の暴言を繰り返し、健康不安を抱える住民を愚弄しました。一体、これは科技庁の見解なのかと追及すると、水本氏は「それは国の見解ではありません。国はリスクゼロとは言っていません」と返答。そうです「絶対」などと言えるはずがありません。そして「JCOの説明会で誰がどのような発言を行っているかまでは確認していない」と続けました。これ自身、監督官庁として無責任です。科技庁がJCOに問い合わせ、そのような発言がなされたのであれば厳重注意を行うことを確認しました。

★「田ノ岡発言は記憶にございません」JCO吉田氏
 しかし、驚くべきことがその後判明しました。6月1日に、「臨界事故被害者の会」がJCOと交渉をした際に、JCOの吉田氏は「国から問い合わせがありました。しかし2ヶ月も前のことなので、田ノ岡氏がそのような発言をしたかどうか記憶にございません。メモや証言では証拠になりませんよ」としらばっくれました。まったくの居直りです。この吉田氏は、4月9日の住民説明会の司会をしていた人物です。こんな卑劣な態度を許すことはできません。国はJCOに対し、厳重注意を行い、住民に謝罪させるべきです。

★「ガン死の危険はゼロではない」が「リスク評価は検討中」
 科技庁は、「田ノ岡発言は国の見解ではない」、「リスクゼロとは言っていない」と繰り返します。それならば、一体どれだけのガン死の危険があるのかを具体的に明らかにすべきです。しかし、このことを追及すると、「まだ一時滞在者や警察関係者の線量評価が済んでいない」とか「どういう形でリスク評価を行うか検討中」などと述べるだけです。線量評価がまだ済んでいないと言いながら、とっくに「最終報告」を出しているのです。単なる口実にすぎません。
 彼らが口にするのは、健康管理検討委員会の「最終報告」に出てくる「10mSvを1000人があびてもガン死者が1人増える程度」という一般論だけです。今回の事故に即した、リスク評価をなんとしてもやりたくないのです。

★「436人の集団線量は1.6Sv」
 科技庁は、被曝した436人の個人線量の総和が、1.6Svであることを今回初めて明らかにしました。高線量の被曝をうけた3人の作業員をのぞいたJCOの従業員、350メートルの避難区域の住民等の集団線量です。もちろん、この1.6Svという値は、非常に切り縮められた値です。当初国が発表した被曝線量の約1/2、中性子線の毒性を1/2、「350メートル以遠の人々の被曝量はゼロではない」と言いながらそれを含めていない等々。
 それでも、この1.6Svにあとは係数をかければ被曝集団のガン死のリスクが出ます。しかし科技庁はその数字を公表しようとしません。ICRPの基準でいけば、1.6Svのリスクは約0.2人です。彼らが一般論でいう1人のガン死者の増加より低い値です。それでも国がこのリスク評価を公表しないのは、いくら低い値でも、ガン死の危険があることを認めることになり、その責任が具体的に問題になるからです。
 科技庁には1.6Svでのリスク評価を行うよう要求しましたが、未だ「検討中」とのことです。
★★科技庁はリスク評価を行い、ガン死の危険を認め、被曝した住民に対し責任をとるべきです!




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