1月30日、東電MOX使用差止仮処分裁判の第5回審尋が行われました。原告阪上さんのメモによれば、当日のやりとりは以下のようでした。 1.1ミクロンきざみの生データを公開せよ 東電側弁護士と東電の回答は全く食い違っています。再び、裁判所から求釈明が出され、1ミクロンきざみのデータの存在について回答を迫られました。 裁判所:品質管理記録に生データは載っているのか? 東電側弁護士:載っている。 東電:いや載っていない。 裁判長:東芝は手に入れているのか? 東電側弁護士:手に入れていない。 東電:確認しないとわからない。 原告側弁護士:いったいどうなっているのか。言っていることがバラバラだ。 裁判長:関西電力の品質管理認定書には生データが載っている。 東電側弁護士:平均値や標準偏差なら… 裁判長:いや、ここに載っている(関電最終報告を示す)。 2.東電側弁護士はグラフの異常性を認める 証人小山は、東電MOXペレットもデータねつ造の疑いが濃いとして、それを裏付ける異常な形のグラフを提出していました。なんと、東電側弁護士は、グラフの形が異常であることを認めました。そしてその原因は、データねつ造ではなく、砥石の調整のためだと主張。裁判所から、砥石のせいであることを証明する資料の提出を求められました。 3.ギャップ(被覆管と燃料ペレットのすき間)はなくても関係ない、ペレットが壊れるだけだから! ペレット外径寸法が厳格に管理されているのは、ペレットと被覆管の間にすき間(ギャップ)が必要なためです。それは、燃焼が進むとペレットが膨張し、ギャップが埋まる事を見越して定められた「基準」です。PCMI破損は、ペレットと被覆管の機械的な作用によるものです。データ不正により不良ペレットが混ざり、ギャップがはじめから無いペレットを含む燃料が装荷されると、ペレットの膨張の影響によりそのPCMI破損がよりたやすく起こることが懸念されます。実験事実が無い以上、不良ペレットを含む可能性のある燃料は安全上決して装荷してならない、というのが原告の主張です。 これに対し東電は「基準」そのものを否定する暴論を展開しました。 東電:燃焼が進むと2サイクルぐらいでギャップが埋まる。高燃焼度の領域では、既にギャップは埋まっている。だから、初期状態のギャップは影響しない。 これでは、なんのためのギャップなのか、なぜペレット外径寸法やギャップの基準を定めているのか、さっぱりわかりません。ギャップが埋まった後、圧力がかかるのでは?との裁判所の質問に対し 東電:ペレットと被覆管がくっつくと圧力によりペレットが壊れる。ペレットが壊れて変形するとかえって応力が緩和される。 安全審査の基準も自らが出した申請書もかなぐり捨てています。これが東電技術者の、燃料についての責任者の発言でしょうか。 昨年10月にNRCより出された速報によると、原研において行なわれた、東電の福島第二原発で燃焼させた高燃焼度BWR燃料を用いた実験では、破損は起こらないとも言われていたBWR燃料でもPCMI破損が起きています。破損の形態は、被覆管が3つに割れ、燃料が粉々になって飛び散るという激しいものでした。この原因を専門家たちは今必死になって探っている最中です。実験の速報にギャップの条件が記入されているのは、ギャップの影響も考慮していることを示しているのです。 「ギャップがなくても安全だ」と言い切る東電に、MOX燃料の装荷を認めるのはあまりに危険です。もし、装荷を許すことになれば、東電は、燃焼の進んだMOX燃料の挙動がどうなるのか、PCMI破損がどの程度で発生するのか、しかもはじめから燃料ペレットと被覆管のギャップがなくなっているような不良ペレットを多く含んでいる場合にはどうなるのか、という「実験」をいきなり実機で、福島を「実験場」に行うことになります。こんなことは許されません。通常の実験であれば、実験装置内でわざと「事故」を起こすのですが、東電が目論む福島での「実験」では、「事故」が発生してしまったらもう手遅れなのです。 |