2002.06.13 |
1999年10月1日以来、およそ2年と8ヶ月にわたって高浜4号の使用済み燃料プールに保管されていた不正MOX燃料が、いよいよイギリスBNFL社に送り返されようとしています。そのための返送用輸送容器を積んだ船が6月14日に高浜港に到着し、7月はじめにも出航すると予想されています。 このMOX燃料がなぜ使用されないままでBNFL社に送り返されるのか、それはまったく明らかです。BNFL社がMOX燃料ペレットの寸法を偽り、虚偽のデータを作成し、それを隠したまま高浜原発に装荷させようとしたからです。それによって関西電力を欺いただけでなく、周辺住民や遠く離れた地域の人々までも危険にさらそうとしたからです。BNFL社がその責任をとって不正MOX燃料を引き取るのはきわめて当然のことだと言えるでしょう。 高浜町民をはじめ福井県の人たちは、虚偽の装いをまとったこの気色の悪い物がようやく自分の足元から消えてくれるということで、安堵の気持ちをもたれることでしょう。一刻も早く出ていってくれという気持ちでおられることでしょう。私たちは、その気持ちを十分理解すべきだと考えています。 そして同時に、私たちは1999年秋当時、この不正データ問題を告発し燃料差し止め仮処分裁判を起こした立場にいるものとして、この返送によって、不正事件に決定的な区切りがつけられるという性格にも目を向けざるを得ません。不正MOX燃料の装荷によって、高浜町民をはじめ、福井県民やさらに広範な人々を危険にさらそうとしたというその根本的な問題は、はたして解決しているでしょうか。誰かそのことで人々に謝り、責任をとったことがあるでしょうか。 当時、関西電力や政府は、この不正を積極的に明らかにしようとしなかったばかりではありません。すでに当初から高浜3号用MOX燃料の不正が明らかになっていたにもかかわらず、高浜4号用には不正などあり得ないと頭から決め付け、イギリスからきた不正を示すデータまでも人々の目から覆い隠してきました。そのようにして強引に装荷を目論み、もって彼らもまた、積極的に人々を危険にさらそうとしたのです。 しかし関西電力も政府もこの事実をいまだ認めず、責任も明らかにしていません。結局、今回の返送によって過去の罪をすべて洗い流してしまい、何もなかったことにしようというわけです。彼らの立場では、返送はまさに「禊」(ミソギ)となるのです。 そうすると、返送の次に待ち構えていることは何かもまた明らかです。BNFL社は新たな大規模なMOX燃料製造工場をつくり終え、顧客との契約も深刻に不足している中、非常な多額の債務を抱えて四苦八苦しています。そのため、高浜原発用の次のMOX燃料を製造したいと手ぐすねを引いて待ち構えているのです。BNFL社が多額の賠償金を関電に支払ってまで不正MOX燃料を引き取る理由は明らかです。次のMOX契約を関電と結ぶために他なりません。 住民を危険にさらそうとしたことへの反省などまったくなく、BNFL社の言いなりになってきた関電は、「禊」をすませることによって、また強引にプルサーマルへの道を歩み始めるに違いありません。そのことによってまた再び高浜町民や福井県民やさらに広範囲の人々を危険にさらそうとするに違いありません。このような偽善的な「禊」としての不正MOX燃料の返送に、私たちは反対するのです。 さらに、他にもこの返送には危険な問題がつきまとっています。はたして返送に使われる輸送容器は安全なのかという問題です。これには次の2つの問題が生じています。 (1) 関電は容器承認を受けないままの容器で不正MOX燃料を輸送しようとしています。これまで輸送容器については、第1に容器の設計が大丈夫かという設計承認、第2に容器が設計どおりに作られているかという容器承認、第3に実際の物を入れた状態での安全確認という3段階を経て安全性が確認されていました。ところが今回関電は全国でも初めて、第2の容器承認を省いてしまったのです。なぜなら、容器承認のための検査を受けようにもすでに容器は高浜港に向かう船の上だったからというわけです。ここにも、BNFL社の言いなりになってことを急いだ関電の姿勢が現れています。 (2) 今回の返送用輸送容器にはサビが生じて危険な状態にある可能性が新たに生じています。関電のいまフランスにあるMOX燃料輸送用の容器で最近サビが生じていることが発見されました。当然基本的にこれと同じ構造、材質をもつ今回の返送用容器にもサビがないかどうか徹底検査すべきです。ところが関電は「構造が違う」の一言で片付けようとしています。ここに関電の安全問題に関する姿勢がよく現れているのではないでしょうか。また福井県安全対策課も関電の言うことをまったく鵜呑みにした態度をとっています。これら輸送容器の安全問題が出ている中で、それを無視して輸送を強行することに反対します。 最後に私たちは、この不正MOX燃料を積んだ船が通る地域に住む人々のことにも思いをはせざるを得ません。危険な物が通るにもかかわらず、これら地域の人たちはその問題について何も一言も説明を受けていないのです。それどころか、どこを通るのかさえも核物質防護の名のもとに明らかにされていません。アイルランドでは政府自らが裁判を起こしてまで、MOX燃料の通過に反対しています。強行されるこのような危険な日本の海上核輸送に対して、今まで50カ国以上が反対を表明しています。これら人々の心配の声に真摯に耳を傾け、自らの欠陥のゆえに多くの人々を危険にさらそうとすることについての説明と謝罪を、関電もBNFL社も何もしていません。この姿勢は高浜町民や福井県民に対する姿勢と同じものです。このような態度で強引な輸送をすることに対して私たちは強く反対します。 高浜町民や福井県民のみなさん、さらに広範な地域、都市部に住むみなさんが、この際、これら返送のもつ根本的な問題に目を向けられ大きな議論の輪を起こし広げていかれるよう心から望みます。その力で関電の強引な返送に反対し、次のBNFL社とのMOX契約にストップをかけ、危険なプルサーマル計画を止めていきましょう。 2002年6月13日 |
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之 大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル1階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581 |