島根県知事 澄田 信義様
2006年6月12日 プルサーマルにより安全余裕が削られることは中国電力も認めています。燃焼が進んだMOX燃料が、反応度事故(核暴走事故)や冷却水喪失事故の際に、コナゴナになって破裂する恐れがあるのに、その実証的研究は不十分です。事故が起きた場合はウラン燃料と比べて被害範囲は4倍に広がるという試算もあり、被爆地広島も含めて被害が広範囲に及ぶことが憂慮されます。プルサーマルの安全性の根拠として海外の実績が強調されますが、島根原発と同じBWRで現在動いているのはドイツの2基しかありません。そのドイツも脱原発政策を進めており、再処理は禁止され、プルサーマルも終焉の過程にあります。 また、プルサーマルの後に残る使用済みMOX燃料は、持って行くところはどこにもなく、高レベル廃棄物として原発サイトに居座り続けることになります。 1999年に市民が関西電力高浜4号機用MOX燃料のデータ不正を暴いて以来、東京電力福島第一3号機プルサーマルに対する訴訟、新潟県刈羽村の住民投票による東京電力柏崎刈羽3号機プルサーマルの拒否を経て、危険なプルサーマルに反対する全国的な大きな流れが形成されています。福島県、新潟県はプルサーマル了解を白紙に戻し、福井県知事も当面の実施を拒否しています。東電、関電のプルサーマルは全く目処が立っていません。そのため、本来なら東電や関電の後に実施するはずだった玄海、伊方、浜岡そして島根の各原発が矢面に立たされていますが、いずれも地元の住民から反対の声が挙がり続けています。 使用済み核燃料を処理するために青森県に建設された六ヶ所再処理工場は、3月31日に強引に最終のアクティブ試験に入りました。その後、放射能を含む溶液の漏えい事故やプルトニウム被曝事故が立て続けに発生しています。再処理工場では、事故がなくとも、大量の放射能が大気と海に日常的に放出されます。そのため、海洋汚染を憂慮する声が三陸沿岸で広がっています。食品の汚染を憂慮する声は首都圏、関西など、全国に広がっています。 六ヶ所再処理工場を稼働させるには、余剰プルトニウムを持たないという国際公約もあることから、プルトニウムを使ってみせる必要があります。島根2号機のプルサーマルは、工場の稼働を正当化するための口実となるものです。その意味で、青森県や三陸沿岸の放射能汚染に手を貸すものといえます。 他方で、島根2号機のプルサーマルは、余剰プルトニウム問題の何の解決にもなりません。日本は、英仏に約37トンものプルトニウムを既に保有しており、島根2号機も当面はこれを使う予定ですが、大半は東電分と関電分です。東電や関電のプルサーマルが止まっている限りは、大量のプルトニウムを使い切ることはとてもできません。それどころか、プルサーマルを口実にして六ヶ所再処理工場を稼働させることにより、かえって余剰プルトニウムが増えてしまいます。国際公約はいつまでも果たされず、世界の核拡散を助長し、核武装の懸念を世界中から受けるだけです。島根県がプルサーマルを急ぎ、わざわざ危険に近づく理由は何もないのです。 再処理しなければ原発の使用済み核燃料がいずれあふれて困る、というのが再処理の実際上の動機であることを国も認めています。結局のところ、原発の排泄物に対する無策のツケを、青森県民、そして島根県民に押しつけようとしているだけなのです。 今、全国の市民が島根原発について心配しているのは、プルサーマル以前の耐震安全性の問題です。 昨年8月16日に発生した宮城県沖の地震の東北電力女川原発での観測結果から、現行の耐震設計審査指針に従う設計用基準地震動の作成方法には大幅な過小評価があることが明らかになりました。この事実を認定した金沢地裁は今年3月24日、北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを認める判決を下しています。北陸電力は志賀原発のプルサーマルの申し入れができないでいます。国は指針を改定し、今後、既設の原発についても再確認を行うとしています。 まさにその折、今年5月5日に、島根原発のすぐ近くで、中国電力が活断層は延長していないと言い切る場所から新たに活断層が発見されました。島根2号機の場合、評価すべき活断層が大幅に伸びることから、新旧どちらの指針に従っても、活断層の活動によって発生する地震動は、設計時の想定を大きく超えると評価されるでしょう。プルサーマルどころか、ウラン燃料を用いた通常の運転すら安全性が保証されないことが示されたわけです。 貴職が設置した「プルトニウム混合燃料に関する懇談会」は、新たな活断層が発見され、島根2号機の耐震安全性の再検討が必要であることを承知しながら、5月8日にプルサーマルを「可」とする報告をあわただしくまとめました。耐震安全性に大きな疑問が生まれた原発について、プルサーマルの検討がなぜできるのでしょうか、誰もが疑問に思うでしょう。懇談会は反対の側からの意見もあったものの、ほとんど賛成の側からの説明を一方的に聞くだけの場で、委員の間で実質的な議論がなかったと聞きます。委員の構成も12名中10名と賛成派が圧倒的でバランスを欠いています。また、他県では当たり前の一般住民を対象にした県主催の公開討論会が開かれておらず、県民は、ほとんど意見を表明する場もありません。 県民の命を守る使命を与えられた貴職に、プルサーマルに同意されない事、ならびに耐震安全性について、県独自に専門家の意見を聴取するなどして徹底的に検証する事を要望します。 以上 島根2号機プルサーマルを案じる全国の市民(130団体337個人) 【呼びかけ団体】25団体島根原発増設反対運動/島根人類愛善会/21世紀宗教者の会/平和・人権・環境フォーラムしまね/島根くらしといのちのネットワーク/「たべもの」の会/子どもの人権オンブズパーソン/米子市政研究会/鳥取県西部原発反対の会/原発はごめんだ広島市民の会/脱原発ネットワーク・九州/原発さよなら四国ネットワーク/原発さよならネットワーク高知/みどりと反プルサーマル新潟県連絡会/脱原発福島ネットワーク/浜岡原発を考える静岡ネットワーク/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/プルサーマル公開討論会を実現する会/原水爆禁止日本国民会議/グリーンピース・ジャパン/東京電力と共に脱原発をめざす会/原子力資料情報室/ストップ・ザ・もんじゅ東京/福島老朽原発を考える会 【賛同団体】105団体 島根原発1,2号機差止訴訟弁護団/ボイス・オブ・ヒロシマ/プルトニウム・アクション広島/核廃棄物はいらない美作地区住民の会/広島瀬戸内新聞/原発いらん!下関の会/原発いらん!山口ネットワーク/からつ環境ネットワーク/唐津の海を守ろう市民の会/まつらネットワーク/R−DANネットワーク佐賀んもん/もっと知ろうプルサーマル県民の会SAGA/玄米食おひさま/たんぽぽとりで/北薩地区平和運動センター/九電消費者株主の会/原発なしで暮したい・長崎の会/反原発・かごしまネット/川内つゆくさ会/川内原発建設反対連絡協議会/宮崎の自然と未来を守る会/伊方原発反対八西連絡協議会有志/八幡浜・原発から子供を守る女の会/伊方原発反対八幡浜市民の会/愛媛環境ネットワーク/原発さよならえひめネットワーク/原発なしで暮らしたい松山の会/愛媛の活断層と防災を学ぶ会/放射能を憂慮する市民の会/阿部悦子と市民の広場/東温市・農薬の空中散布に反対する会/憲法読もう市民の会/新社会党愛媛県本部/新社会党松山総支部/新社会党新居浜支部/新社会党今治支部/新社会党西条支部/みどり・えひめ/ピースライブインこうち/成川塾/塩の邑/平和資料館草の家/原子力発電に反対する福井県民会議/福井県平和・環境・人権センター/高速増殖炉など建設に反対する敦賀市民の会/原発施設反対小浜市民の会/反原発つるがますほの会/日本消費者連盟関西グループ/ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン/ストップ・ザ・もんじゅ/核のごみキャンペーン関西/脱原発へ!関電株主行動の会/大阪大学附属病院看護師労働組合/阪南中央病院・原発見張り番/脱原発にがよもぎの会/くらしを見つめるひととき/安全農産供給センター/みみずの会/平和の井戸端会議/平和省プロジェクト・大阪/共謀罪の成立に反対・抗議する京都署名/使い捨て時代を考える会/関西市民の会/放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜/不戦へのネットワーク/徳山ダム建設中止を求める会/平和・人権・環境を考える岐阜県市民の声/東海民衆センター/静岡県労働組合共闘会議/核のごみキャンペーン・中部/プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク/柏崎刈羽反原発地元三団体/脱原発とうかい塾/反原子力茨城共同行動/日本消費者連盟/ふぇみん婦人民主クラブ/原発を考える品川の女たち/原発・核燃とめようかい/たんぽぽ舎/脱原発・東電株主運動/グローバルピースキャンペーン/食政策センター・ビジョン21/まちだ反原発ネットワーキング/原発なしで暮らしたい・さいたま/種子ネット/みさと屋・野菜食堂/「終焉に向かう原子力」実行委員会/プルトニウムフリーコミュニケーション神奈川/非核市民宣言運動・ヨコスカ/ヨコスカ平和船団/放射能から私たちの未来を守る会/核燃やめておいしいごはん/グループ・かえる/日本山妙法寺/ひきこもり九条の会/原子力発電を考える石巻市民の会/「三陸・宮城の海を放射能から守る仙台の会/三陸の海を放射能から守る岩手の会/PEACE LAND/核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団/岩内原発問題研究会/原発に反対する小樽市民の輪/反核・反原発全道住民会議/ワーカーズコレクティブえこふりぃ/斜里九条の会 【賛同個人】337名 |